ーーどうしてこんなことに、と私は小さく息を吐いた。
木ノ葉隠れの里、アカデミーの大広間には多くの生徒たちが集まっており、舞台上を今か今かと楽しそうに見ながら、劇の開演時間を待っている。
それだけならば、微笑ましい、とそう思うのだけれど、今は素直に喜べない。
何故なら子供たちが待ちわびている劇の主役は、私なのだから。
また一つため息が零れる。
ーーまさか私が役者で、さらには主役だなんて。
今日のアカデミーでのこの劇は、前々から予定されてたものではあったが、演じるのは、各国を渡り歩く劇団の方々のはずだった。
それが揃って流行り病にかかってしまったらしく、劇団員の人たちは皆、木ノ葉病院に入院することに。
今は綱手様が、プロ意識がどうのと呆れながらも、治療にあたってくれている。
ただいくら医療忍術で治したところで、今日開演の劇には間に合わない。
けれど楽しみにしていた子供たちを悲しませることもしたくない。
というわけで、私たち木ノ葉の忍が演じることになったのだ。
今回やる劇は「桃太郎」であり、私は昔、色々な国を回っていた時に聞いたことがあったのだけれど、他の皆はどうやら初耳だったらしい。
だからお話の内容を一番よく知る私が、何かあった時でもアドリブで回せるようにと、主役の桃太郎を演じることになった。
……とは言っても、一応カンペは出すし、ナレーターも付けるから、皆なら即興でそれに載り演じられると思うんだけど……まあ、今さら言ってもしょうがない。
それに、子供たちに楽しんでもらいたいという気持ちは、当然私も持っている。
桃太郎は私だが、真の主役は、あくまで子供たちだ。
皆を楽しませるために、できるかぎりのことをしよう。
舞台袖で、私は一人頷いた。
幕が上がり、子供たちの歓声が上がる。
小さく笑みをこぼした私は、語り部が座る席をちらりと覗いた。
ここに至るまでにあまり時間がなく慌ただしくしていたから、結局誰がどの役を担当するのか、実は私も分かってないのだ。
「昔々あるところに、おじいさんとおばあさんがいた。とある日のこと、おじいさんは山へ芝刈りにーー」
なるほど、語り部はシノか。
確かにシノなら、声が低くて話す速さも落ち着いているから、聞き取りやすくて適任だ。ナレーターにはうってつけかもしれない。
お話の内容を知る私以外の役所は、いったいどうやって決めたのかは知らないけれど、素晴らしい人選ーー、
「おばあさんは川へ洗濯をしに行った。何故なら、その川には大きな桃が流れてくるからだ」
いきなりのネタバレ……!
ナレーターに合っていると見せかけて、まさか一番の人選ミス、だと……?
けれど今から配役を変えるわけにもいかないしーーと、はらはらと見守っていれば、語り部に合わせてサクラが舞台に現れた。
「今日はいい天気だし、絶好の洗濯日和ね」
「おばあさんが川で洗濯をしていると、どんぶらこ、どんぶらこと、川から大きな桃が流れてきた。おかしなことだが無理もない。何故ならこの桃が、物語の重要な物となるからだ」
サクラの可愛いおばあさん役に咳をし、シノのはらはらする語り部役に気を取られていた私は、視界の隅にうつったカンペにはっとした。
カンペを出す役はーー舞台に出ることを恥ずかしがったのだろうかーーヒナタだった。
けれどヒナタが持つカンペの内容が、間違っているのだ。
桃を割る、という指示が出されているけれど、それは家に帰ってから、おじいさんが行うことだ。
でもまあ、お話の内容を知らなければ、間違えてしまうのも無理はない。
あのカンペだって、劇団員の人たちには必要のない物なんだから、きっと急いで作ってくれたんだろう。
……ヒナタの役者ぶりも、見てみたかった気はするけれど。
ヒナタの健気さと少しの抜けたところが見えて、私は薄く微笑んだ。
すると舞台上のサクラが、カンペを見て頷く。
「なるほど、ここで桃を割るのね。ーーしゃーんなろー!!」
サクラの拳が直撃し、上手に作られていた桃は、無惨にも跡形なく、ただの材料と化した。
私は慄然とする。
こ……殺される……!
「おばあさんは大きな桃を、家へと持って帰っていった。何故ならーー」
「え?この桃を持って帰るの?別にいいけど……わざわざ粉々にしてからだなんて、変わったお話なのね」
言ったサクラが、反対の舞台袖へと捌けていくのを見送りながら、私は震えていた。
一時暗転する舞台上。
袖も共に暗くなる中、私は思った。
ーーそうだ、逃げよう。
そもそも最初から無理だったんだーーと思ったところで、黒子役の後輩に背中を押されて、何か大きな箱のようなものの中に入れられて、私は瞬く。
「語り部の話に合わせて、飛び出すらしいですよ!名前さん」
何か言う暇もなく、私は舞台上へと取り残された。
小さく空いた覗き穴から辺りを窺えば、物語が進められるのか再び照明が点いて、私は眩しさに目を細める。
二つの人影が見えて、おじいさん、とサクラの声がした。
「川から大きな桃が流れてきたの。持って帰ってきたわ」
「ほう、これは大きいな」
私は僅かに目を見開いた。
この声ーーおじいさん役はネジさんか。
「それでね、さっきの桃を割るっていうカンペなんだけど、ヒナタが間違って少し先に出しちゃったみたいなの。本当は、桃を割るのはおじいさんの役みたいだから、ネジさん、お願いします」
「そうか、それでか。粉々に破壊された桃が何故元通りになっているのか、疑問に思っていたんだが……」
言ってネジさんは、了解した、と言う。
八卦ーーと聞こえて私は、え、と目を見開いた。
「桃は光り輝いた。何故なら、桃の中からはーー」
私は慌てて箱の中から飛び出した。
この際、初めから桃太郎が大きいことなど関係ない。
シノのネタバレを阻止するため、そして何より自分の命のために、私には飛び出す必要があったのだ。
「こ、こんにちは!はじめまして!私は桃太郎と申します!」
「ーーこの物語の主人公である、桃太郎が出てくるからだ」
何とかシノの説明よりも先に出れて、そして子供たちから歓声が上がって、私は気づかれないように息を吐く。
おじいさんとおばあさんを見た。
「あの、私強くなりたいんです。強くならなきゃいけないんです」
色々とすっ飛ばしている気もするが、何しろ桃太郎はもう成長してしまっているし、大まかな流れで言えばこんなところだ。
桃太郎は鬼退治のため、鬼ヶ島へと向かう。
強くなるためーーというか戦力増強とは仲間を増やすことでもあるため、物語上で必要不可欠となるきび団子を貰いたい。
けれど口を開いたのはサクラではなく、ネジさんだった。
「お前が強くなりたいというのなら、俺はいくらでも力を貸そう」
「ネーーおじいさん」
あ、危ない、思わず劇だということを忘れて、感動してしまうところだった。
「だが決して、無理はするな」
「……おじいさん、お言葉はありがたいのですが」
「たとえお前の力が及ばないことが、仮にあったとしても、お前に危険は降りかからせない」
目を見開く私に、ネジさんは優しく、そして強い目を向け言った。
「俺が必ず、お前を守る」
「師匠……!!」
感動に打ち震えれば、ネジさんは少し複雑そうな顔をした。
「その師匠というものからも、そろそろ卒業したいと思っている」
上げて落とされて私は、え、と呆然とした。
ネジさんは目を逸らす。
「だから、その、だな……」
珍しく歯切れ悪く言ったネジさんは、咳払いをすると、何か決意したように真っすぐに私を見た。
「俺のために毎日、味噌汁を作ってくれないか」
何か思うよりも前に、サクラが私たちに顔を寄せると小声で言う。
「ていうかネジさんも名前も、今劇の真っ最中だってこと、覚えてる?ネジさんはおじいさん役であって、師匠じゃないのよ」
サクラの言葉にはっとした私は、ネジさんを見る。
「ごめんなさい、無理です」
言うとネジさんは見るからにショックを受けた顔をしたので、私も眉を下げて理由を告げた。
「鬼退治に行かなくちゃならないんです。だから毎日お味噌汁は作れません」
まあ桃太郎は、他の童話やらと同じように勧善懲悪のお話だから、当然鬼退治は成功する。
だから帰って来てからなら、おそらく毎日でも作れるとは思うのだけれど。
「鬼退治だと?」
「はい。私は鬼ヶ島へと向かい、悪さのかぎりを尽くしていると噂の鬼たちを退治してきます」
「だから俺の傍にはいられないのか」
「おじいさんというか、おばあさんの傍にもですけれど、そうですね」
言えばネジさんは、そうか、と呟き、やがて踵を返す。
「ちょっとおじいさん、どこ行くのよ」
カンペとネジさんとを見比べたサクラがそう訊けば、ネジさんは振り返り言った。
「鬼退治に行ってくる」
おじいさんが鬼退治、だと……?
け、けれどネジさんなら確かに倒せそうだな……。
ーー結局あの後、サクラが、
「おじいさんのことは私が何とかしておくから、名前は物語を進めて。はい、これきび団子ーーと言ってもそんなものなかったから、前に作ってあった兵糧丸なんだけど」
と言い桃太郎を送り出してくれたので、舞台は再び暗転し、劇は何とか先へ進んだ。
舞台のセットが森の中の風景へと変わり、照明が徐々に点いていく中、私は舞台袖から歩き始める。
初めに出会うお供であるイヌ役のキバが反対側から現れたところで、照明は完全に明るくなった。
私は台詞を口にする。
「こんにちは、イヌさん。私は桃太郎と申します。このきび団子を差し上げますので、どうか私と共に、鬼を退治に鬼ヶ島へと行っていただけませんか」
「えーっと何々、ここできび団子を貰って、食うんだな」
差し出したきび団子ーーというか兵糧丸ーーを手に取りひょいと口に投げ入れたキバが、喉を抑える。
「ぺっぺっ!何だこのきび団子!?まずっ!」
私は首を傾ける。
サクラは、前に作ってあった兵糧丸だと言っていたけれど……きび団子の味を想像して食べたから、何かおかしく感じるのだろうか。
暫く苦い顔で舌を出していたキバは、やがて笑う。
「きび団子は不味いけど、こんなものなくったって、俺はお前のために戦うぜ!」
「まあ、何と勇敢なイヌさんなのでしょう」
私の棒読み具合も気にせず、キバは言う。
「鬼を退治するんだろ?そんな奴、俺がちゃっちゃと片付けてやるから、俺の戦いぶりをしっかり見とけよ」
「けれどイヌさん、私も鬼をーー」
「いいから。かっこつけさせろよな」
目を丸くする私にキバは、はにかんだ。
「かっこよく鬼を倒して、惚れさせてやるからよ」
「ーーちょっと待ったぁ!」
すると聞き慣れた声がして、私たちは天井を振り仰いだ。
私とキバの間に、サル役のナルトが降り立つ。
「桃太郎は、誰にも譲らねえってばよ」
「桃太郎じゃなくて、鬼は誰にも譲らないだよ、ナルト。だけど鬼退治へと張り切ってくれてありがとう」
私は小さく言ってから、ナルトに対してもきび団子を差し出す。
「こんにちは、サルさん。私は桃太郎と申します。このきび団子を差し上げますので、どうか私と共に、鬼を退治に鬼ヶ島へと行っていただけませんか」
「あー、これ貰うんだっけ?まあ俺も、団子なんかなくても、名前のためなら戦うけど、せっかくならまあ一応ーーって、ぺーっ!何だってばよ、このきび団子!まずっ!」
キバと同じような反応を見せたナルトに、私は再び首を傾げる。
なんか懐かしい味だってばよ、と呟いていたナルトは、やがて真剣な眼差しを私に向けた。
「鬼退治に、行くんだよな」
「はい。よければサルさんにも、お付き合い願いたいのです」
「もちろんだってばよ。名前ーーじゃなくて、桃太郎の強さは、俺も分かってる」
だけど、とナルトは目を落とした。
「いつまた失っちまうかって、気が気じゃねえんだってばよ」
「サルさんーー」
「でももう、他の何にも、誰にも、名前は渡さねえってばよ」
微かに目を見開くと、ナルトは笑って、私の手を取った。
「もう絶対、離さねえからな」
言ったナルトに、キバが体当たりする。
「ナルト、お前にゃ負けるわけにはいかねーんだよ!」
「お前こそ、無理しなくてもいいんだぜ?桃太郎のことは、俺が守るってばよ。お供は俺一人で十分だ!」
「それはこっちの台詞だっつーの!」
にらみ合い始めたキバとナルト、もといイヌさんとサルさん。
これぞまさに犬猿の仲か……うまい!
ーーなんて言っている場合じゃなかった。
物語を進めないと、と口を開きかけたその時、墨で描かれた小さな鳥が、キバとナルトの間に入るようにして飛んできた。
子供たちから歓声が上がる中、私たちは振り返る。
舞台袖から歩いてきたサイはにこりと笑った。
「男は甲斐性だって、本に書いてあったんだ。喧嘩するばかりで鬼退治に行かないイヌとサルとは違って、僕はちゃんと働くよ」
「キジさんーー」
「空も飛べるから、鬼ヶ島の偵察にも行けるし。それに経済的な話としては、僕は小さい頃から一応働いていたから、お金もそれなりにあるよ」
ただ、とサイは続ける。
「分からないことが多いんだ」
「分からないこと……?」
「うん。でも名前となら、一緒に悩んで、考えながら、幸せに暮らしていけると思う」
サイは片膝をつくと私の手を取った。
「だから、鬼を退治したら、結婚してください」
私は息を呑む。
ーーそれは、死亡フラグだ。
サイ、いったいどうしたというんだろう、こんなにも分かりやすい死亡フラグを立てるなんて。
……何か嫌なことでもあったのかな。
だとしたらこれは兵糧丸なんだから、食べれば活力が湧いてくるはず。
私はサイに、きび団子を差し出した。
「どうかこれを食べてください、キジさん」
サイは目を丸くすると立ち上がって、きび団子を口にする。
噛んだ途端に僅かに眉根を寄せると言った。
「ひどい味だね」
ただの兵糧丸なのにどうして、と頭を捻る私とは反対に、キバやナルトは大きく頷く。
言った割には二人と比べるといたって平静に食べたサイは、にこりと笑う。
「こんなにひどいものを作るだなんて、きっとこれを作った人は、身も心もひどく不細工ーー」
言いかけたサイの顔面に、背後の舞台袖から飛んできた兵糧丸が直撃した。
あまりの勢いに、噛めば音が鳴るくらい固い兵糧丸が弾ける。
三人が言った味の不味さからか、それとも衝撃からか、サイは顔を汚したまま床に伏せた。
ーーこうして桃太郎は、イヌ、サル、キジ(瀕死)をお供にし鬼ヶ島へと旅立った。
先程の兵糧丸が飛んできた方向が鬼ヶ島なんじゃないかとも思ったけれど、あちらはおじいさんとおばあさんの家の方向であるから、その考えは間違いである。
決して家に鬼なんていない。
そうして鬼ヶ島へと着いた私は、明らかなる人選ミスに言葉を失っていた。
「来ましたね、桃太郎とそのお供たち!君たちが旅をし頑張っている間、僕も腕立て伏せをし、同じく努力し待っていました!」
こんなに熱血で善人な鬼がかつていただろうか。
普通なら、主人公たちが旅をしている間、悪役は酒や女を楽しむか、さらなる悪さをするか、と相場は決まってるんじゃないだろうか。
果たして倒していいものかと悩んでいれば、鬼の手下役であるいのが、倒れたままのサイを見て声を上げる。
「ちょっといったいどうしたのよ!?」
「い、いの……!今は敵役なんだからーーでも、そうだよね、心配だよね」
私が咳をすると、ナルトが言った。
「サクラちゃーーじゃなくて、おばあさんがきび団子をくれたんだってばよ」
「くれたっつうか、投げたっつうか」
キバが続けたところで、いのが眉を上げる。
「サクラの作ったものを食べるなんて正気!?それに投げるだなんて!あんなデコデコーっ!」
「待ってよいの、どんなに不味くても、食べ物は食べ物でしょ?なら僕食べられるから、一緒に行くよ」
舞台袖へと走っていったいのに続いて、チョウジまでもが行ってしまう。
思わぬ不戦勝に瞬いていれば、鬼のリーさんが両腕の包帯を解いていて瞠目する。
リーさんの隣に立つテンテンさんが、慌てたようにそれを見た。
「ちょっとリー!ここがどこだか分かってるの!?それに私たちはやられなきゃいけないんだからーーっていうかただの劇に、そこまで本気を出さなくても……!」
「ただの劇なんかじゃありません。何にだって、僕は全力で挑みます!それに、ナルト君と勝負ができるなんて、滅多にない機会なんです!」
ナルトが笑って拳を合わす。
「いいぜ、来いよ!ゲジ眉!」
「行きますよ……!」
「つうか、俺を忘れんなっつーの!」
「ちょっと、待ってってば!リー!」
ナルトとリーさんの攻防が始まって、舞台上には煙が巻き起こった。
呆気に取られていると、誰かに腕を掴まれる。
「ーーシカマル」
私は苦笑した。
「鬼の補佐役も大変だね」
「まあ、予想通りだけどな」
「そうなの?」
目を丸くする私に、シカマルは、ああ、と言う。
「いのが、イケメンだっつって騒いでるサイのことで劇から外れんのも、チョウジがきび団子欲しさに劇から外れんのも、分かってたことだからな」
「確かに……それにリーさんはナルトとの勝負に燃えるだろうし、テンテンさんはそんなリーさんのストッパーだし……考えてみれば、この結果は当然のことかもしれないね」
「まあ、観客は大喜びみてぇだし、いいんじゃねえの」
うん、と私も客席を見る。
舞台上で交わされている激しい攻防に、アカデミーの生徒たちは大盛り上がりだ。
私は笑った。
「やっぱり、皆が主役が合ってるよ」
そしてこの物語を観られることが、とても嬉しい。
笑みを深める私に、シカマルが呟く。
「本当に、いい女だよな、お前って。周りを立てるっつうかよ」
「立てるというか、当たり前のことだからね」
「お前のその考えは、相変わらずどうかと思うけど……それでもやっぱり、俺はお前が笑ってんのが、好きなんだよな」
「私もシカマルや、皆が笑ってるのがとても好きだよ」
だろうな、と笑って頭を掻いたシカマルが、私に目を向ける。
「ずっと、これから先も、笑っててくれ」
首を傾げて、私は頷く。
「がらじゃねえのは分かってるけどーーお前を幸せにするためなら、何でもする」
「シカマル……?」
「つーかお前が笑ってると、俺まで笑っちまうから、自分のためかもしんねえけどよ」
笑ったシカマルが言った時、舞台上に二つの人影が降り立った。
客席から現れたーー六代目火影とその補佐の登場に、私たちは呆気に取られ、生徒たちからはさらなる歓声が上がる。
「お前たちはいったい、何をやっているんだ」
低い声で言ったオビトさんに、劇を台無しにしてしまったことを慌てて謝ろうとした時、カカシ先生が私の腕を取った。
「名前は、俺のでしょ」
「ふざけるなカカシ、名前に触るな」
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