舞台上の観客 | ナノ
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「#お仕置き」のBL小説を読む
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「それじゃあ念のため、俺は敵の服を着るけど、名前はどうしようか」


そうですね、と呟いて、私は床に倒れた数人の敵を見回す。

ーーここはドトウの本拠地である城の中、あの後浚われてしまった雪絵さんと、彼女にくっついていってしまったナルトを助けるために、夜襲をかけたのだ。
カカシ先生と私、そしてサスケとサクラといった組み合わせで分かれて回っていたところ、数人の敵に出くわした。
そのうちの一人からカカシ先生が剥ぎ取った服を見て、私は唸る。


「やっぱり私が着たんじゃサイズが合わなくてすぐ気づかれますね。この後もし敵と遭遇した時は、カカシ先生に確保された人質として振る舞います」
「それじゃあ、そうしようか。サスケたちにはなるべく敵を避けるよう言ったけど、こっちには俺もいるから、できるだけ邪魔は排除していったほうがいいからね」


頷くと、服に袖を通し掛けていた先生は、あ、と言って私にあるものを手渡す。


「ごめん名前、一応これ持ってて」


掌に乗せられたものを見て私は目を丸くした。


「これって、雪絵さんのネックレス」
「彼女には悪いんだけど、本物とすり替えさせてもらったんだ。敵の狙いが、この六角水晶なのは分かってたからね」
「それじゃあ、先の話し合いの前に、カカシ先生が雪絵さんの部屋に行っていたのは……」
「ああそうそう、あの時だよ」


言った先生に、そうだったのかという気持ちで私はまじまじとネックレスを見る。
ーーカカシ先生はあの時、この六角水晶をすり替えていたのか。


「それじゃあ行こうか」


思っているところに言われて、私は我に返ると慌ててネックレスを返しながら、はい、と返事した。
けれどーーと思う。
心臓が急いたように動いているのは、何も敵陣を駆け抜けていく緊迫感からではない気がした。


カカシ先生の言い方からして、雪絵さんは、六角水晶を入れ替えられたことに気づいていない。
ということはあの時、やはり雪絵さんはまだ眠っていたんだ。
……問題は、その時ネックレスがどこにあったのか、ということだ。
机の上に置いてあったのなら、大した問題はないのだけれど、寝ている時もアクセサリーを身につけたまま、という人は結構いる。
もし雪絵さんもそうならば、カカシ先生は彼女の首に手を伸ばして……!?
や、やっぱりこれは、フラグの予感……!
だとしたら、新たに素敵な物語が一つ増えたということだ。


ーーカカシ先生、と私は言った。
走りながら先生は振り返る。


「どうした、名前」
「私、自分の精一杯を尽くして、先生の力になれるよう頑張ります」


え、と僅かに目を見開いたカカシ先生に、笑ってみせる。
するとその時、前方の曲がり角の向こうから気配を感じて、私たちは足を止めた。
駆けてきた敵の数人が私に目を留めると声を上げる。


「おい、その小娘は誰だ!お前が捕まえたのか?」


カカシ先生はちらりと私に目を向けると、やがて、ああ、と言う。


「小雪姫にくっついてきた子供が一人、いただろう。そいつの仲間のようだな」
「なるほどな、よくやった」
「それじゃあ隊長、我々がこいつを、牢屋へ連れていきます。あのガキ同様、眠らせて繋がせておきましょう」


言った敵が、私に近寄ってくると腹に拳を叩き込もうとしてきた。
そのことを動作から読んだ私は、判断を仰ごうとカカシ先生に目を向ける。
するとその時、先生の姿が残像を残して消えて、私は目を見張った。
ーー敵が全員床に倒れて、私は先生を見上げる。


「カカシ先生、何も先生がやらなくても私がーー」


言い掛けると、先生は、駄目だよ、と呟いて私の頭に手を載せた。


「精一杯を尽くしてくれるっていうその心意気はありがたいんだけどね、何もお前が痛めつけられてまで情報を探ろうとしなくていいんだよ。思った通りナルトは、牢屋に閉じこめられてるみたいだけど、ただ眠ってる玉じゃないでしょ、あいつは」


そう言ったカカシ先生の言葉通り、私たちは道の先で、雪絵さんの手を引き走るナルトを見つけたのだった。











「無駄なことを」


ドトウが言う。
ここは城の中心部にある謁見の間。
部屋の奥には、階段を上ったところに玉座が据えられてある。
再び捕らえられてしまった雪絵さんを助けようと突っ込んでいったナルトに、ドトウは続けて言った。


「貴様のチャクラは完全に封じられているのだ」


その言葉に、私たちはナルトの腹に目を向ける。
再会した時から気になってはいたけれど、時間が惜しくて聞けずにいたが、ナルトの腹には何か見慣れぬ装置が付けられていたのだ。

歯を食いしばったナルトを笑って、ドトウは雪絵さんを脇に抱える。


「さあいこうか小雪、虹の向こうへ」


言った直後、部屋の天井で爆発が起こった。
瓦礫が落ちてくる中ドトウと、その側近の三人が飛んで出て行く。
この城へ来た時と同じようにナルトもまた雪絵さんに縄を投げて追いかけていってしまった。


「ナルト!」


瓦礫を避けながら見上げれば、天井は崩れ落ち隙間から曇り空が見えている。


と、飛んで行くなんてドトウの奴、もう人間というよりは完全に魔物じゃないか!
対して姫を助けに向かうナルトは完全なる勇者だし。
ならばきっと、正義は勝つ、だ!
それに向こうは手下が三人で、メジャーなのは四天王だからな。
一人足りない敵の手下たちのことは、仲間である私たちが絶対に倒す!










「サクラ吹雪の術!なーんてね!」


サクラの可愛さに一瞬呆けてしまったが、ドトウの手下は二人倒した。
側近である三人のうち、女の忍と、例のスケートボードを使う男だ。
もう一人のことは、何やら因縁があるらしくカカシ先生が相手をしている。
だからそちらもきっと勝つだろう。


響遁の術で耳を研ぎ澄ませ、ナルトの居場所を探っていた私は、駆け寄ってきたサスケに頷くと立ち上がる。


「ナルトの音を捉えたよ。そしてドトウも、雪絵さんのことも。……おそらく三人は、虹の氷壁があるところにいる」
「話に出ていたところか。……遠いな」


眉根を寄せたサスケに、私は笑ってみせた。
背中からあるものを取り出す。
サスケは目を丸くさせた。


「お前それ……敵のやつか」
「そう、スケートボードだよ!」


言って私は、手に持ったそれに目を向ける。


「敵の鎧は壊れたーーというより無事壊せたけれど、幸いなことにこのスケートボードはまだ使えるみたいなんだ。これに乗っていけば、もしかすると走るよりも早く場所に着けるかもしれない」


ということで、と私はボードを雪の上に置いた。


「私は今の戦いの間、感知をしていただけだから、チャクラもまだ十分残ってる。だから私が行ってくるよ」


ボードに足を乗せ、加速するスイッチを見下ろし探していたところ、別の足がそれを踏んだ。
え、と見上げるよりも先にスケートボードが加速して体勢を崩す。
青い服に鼻からぶつかって、私は瞬く。


「サ、サスケ!」
「俺も行く。振り落とされるなよ」


ただただ驚く私は、半ばサスケに抱き留められるようにしながら雪の上を滑っていった。






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