舞台上の観客 | ナノ
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※原作カップルが既に出来上がっていますが、まだそれぞれの各里で暮らしている、という設定です。











「我愛羅、五影会談、お疲れ様だってばよ」
「ああ。こうした席に呼んでくれてありがとう。感謝する」


ーー木の葉隠れの里、とある居酒屋の個室に六人の忍が集まっていた。
ナルト、サイ、シカマル、チョウジ、そして木の葉で開かれた五影会談のため来ていた我愛羅、加えて久しぶりに里へ帰ってきたサスケだ。


乾杯、とはいってもまだ皆未成年なのでグラスに入っているのはソフトドリンク。
シカマルの案で、焼き肉屋ならば主にチョウジが話そっちのけで食べ物に夢中になる可能性があるし、久しぶりのこともあり話が弾むだろうから、少々うるさくても許される居酒屋で集まろう、ということになったのだ。


我愛羅の言葉に、ナルトはいやらしい笑みを浮かべると口元に手をあてニシシと笑った。


「いやあ、俺ってば、我愛羅を誘おうか迷ったんだぜ?だってお前、名前に会うの久しぶりだろ?それを邪魔していいのかどうか悩んだんだけど、俺も我愛羅と久しぶりに話したくてよ」
「フ……構わない。久しぶりにお前達と話したい気持ちは、俺も同じだ。それに名前には、この後会える」
「この後?」


首を傾け反応したのはシカマルだ。


「何時から約束してるんだ?こっちのことは気にしなくていいから、名前の方を優先していいぜ」
「いや、大丈夫だ。名前も遅くなると、テマリから話を聞いている。それに会うのは名前の家だからな。時間は特に約束していないから、そう気を使わないでくれ」
「いっ、家!?」


声を上げたのはナルトだ。
けれどシカマルはポカンと口を開き、チョウジも瞬いている。
サイだけがにこりと笑い、サスケは我関せずというようにグラスを傾けた。


ナルトが眉を寄せながら唸る。


「うーん。我愛羅と名前って、この中で一番純粋そうな二人に見えて、実は意外と進んでるのかってばよ」
「ーーそれよりお前こそ、ここにいていいのか」


ナルトの呟きから一転して自分に話を振られたシカマルは驚き気まずそうな濁った声を上げる。
考え込んでいたナルトが再びにやりと笑った。


「そうだってばよ!お前こそ、テマリはいいのか?」
「ったく、めんどくせえな……生憎、他と違って可愛げがねえお付き合いなもんで。いいんだよこれで」


つうか、とシカマルはサスケを見やる。
話の矛先を変えた。


「サスケ、お前が一番、不孝者だろ」


確かに、とサイが続く。


「僕とナルトは相手が同じ木の葉にいるし、他の皆も、遠かったりはあるけど、その里に行けば会うことが出来る。ただサクラは会いたいと思って、たとえ会いに行こうとしても、相手がどこにいるのか、分からないもんね」
「言われてみれば確かに……サスケ、お前の事情も分かるけど、もう少しサクラちゃんに会いに帰ってきてやってもーー」
「お前には関係ない」


サスケはにべもなく言い切った。


「これは俺とサクラの話だ。それに、アイツなら問題ない」
「お前ってば、その余裕がいつかーー」


いつか惨事をーーというナルトの言葉は続かなかった。
他四人も引き継いで発言はしない。


皆の脳裏にうつるのは、サスケが里を抜けいくら闇に堕ちようとも、たとえ自分を殺そうとしてきても、一途に想っていたサクラの姿。
そんなサクラが今更、サスケが旅に出ていて里にあまり戻らない、という理由だけで離れてしまうことは無いだろうと予想がついた。


ナルトはサスケを見て笑う。


「ねえ、ていうか、そろそろご飯頼まない?僕もうお腹空いちゃって」
「……チョウジ、お前は変わんねえってばよ。てか!お前の相手も他里じゃん!」















食事が運ばれ、進む話。
主にサスケ、シカマル、我愛羅の三人で盛り上がっている会話の内容に、ナルトがとうとう音を上げた。


「だーっ!もう、嫌だー!」
「いきなりどうしたんだよナルト。まさか居酒屋の空気だけで、酔っ払いでもしたのか?」
「酔っ払いたくもなるってばよ。いや、俺ってばちゃんと、未成年の飲酒禁止は守るけど」


ナルトは空になったグラスをテーブルに叩くように置く。


「男が大勢集まって話すのが、国の情勢とか、ンなお堅〜い内容でどうすんだってばよ!」


そして不満をぶちまけた。


確かに先ほどから交わされている話の内容は、各国・各里の情勢を、サスケが旅で得た情報等からシカマルが予測し我愛羅が結論付けるーーというそれはお堅いものだった。
五影の一人が参加している会ということで、当たり前といえばそうかもしれないが。


シカマルが呆れてナルトを見る。


「お前、そんなんで火影になってからどうすんだよ」
「影として、世の流れを読むことは大事だ。ナルト」


続けて我愛羅にも言われ、ナルトは唸る。


「まあそりゃ、分かってんだけどよ?だけどよ、そんなお堅い話なんて、いつでも出来るじゃん!もっとこう、楽しい話をさ」
「ナルトって、強くなったくせに本当そういうところは変わらないよね。ーーそれで?ナルトはどんな話がしたいのさ」
「チョウジ!よく聞いてくれたってばよ!」


水を得た魚のようにナルトは顔を輝かせる。


「若い男が集まってする話なんて、アレしかねえってばよ!」
「陰口?」
「なんでだってばよサイ!女子か!」


首を傾け言ったサイに声を荒げたナルトは、けれど直ぐに笑って皆を見回した。


「ここは恋バナしか、ねえってばよ!」
「女子かよ」


すると自身が言った言葉を、今度はシカマルに言われた。
けれどナルトは変わらず楽しそうに口を開く。


「だってよ、だってよ、せっかくこの面子だぜ?前にキバとかシノがいる時に話したら、えらい目に合ったしよ」
「ああ、あの時の……キバがリア充爆発しろとか喚いて、シノがブツブツ恨み言みてぇの言ってた……確かにありゃめんどくさかったな」
「でもキバ、最近いい雰囲気の女の子がいるって、名前が言ってたけど」


チョウジの話から出てきた名前に我愛羅がピクリと反応を示す。
そしてナルトは話の内容に驚きの声を上げた。


「え!そうなの!?じゃあもしかして今日断られたのも、まさかデート……」
「フン、くだらない」


鼻を鳴らしてフイと顔を逸らしたサスケ。
ナルトが噛みつこうとしたが、それよりも先にサイが口を開く。


「僕はいいと思うよ。プライベートな話をすれば仲が深まるって、本にも書いてあったし」
「ナイスだってばよ、サイ!そして珍しくマトモな本読んでたんだな!」
「僕も別に構わないけどな。照れる話でも何でもないしさ」
「チョウジってば男らしい!」


ナルトはにやりと笑うとサスケを見た。


「それに比べてサスケは……」


含み笑いにサスケはムッと眉を寄せる。


「何だ」
「いや別に?ただサスケってば、恋バナで照れるほど、初なお子様だったんだなと思っただけだってばよ」
「ーー上等だ」


まんまと乗せられたサスケに、ナルトは笑みを深め、シカマルはため息を吐くと肩を落とす。


「いい度胸だなナルト。いいだろう、俺も参加してやる」


恋バナの始まりを声高らかに宣言するナルト。
その騒がしさの中、我愛羅がこぼすようにちらりと笑った。




141206