橋の上での戦いの次の日。
チャクラの使いすぎで大事を取って寝ているナルトの元へご飯を届けにやって来た。
この役目はサクラかサスケの方が良かったんだけれど…。
良かったというか、嬉しいというか。
まあ主に私が。
だってサスケかサクラがナルトにご飯を食べさせてあげるなんて、そんなの…!
見 て み た い 。
サバイバル演習の時に二人がナルトにご飯を食べさせてあげているのを見たけれど、あの時は遠かったからなあ…。
「ええーっ?ナルトに?私パス、嫌です」
「俺も同じだ」
「やだーっ、サスケくんと同じ意見なんて、運命?」
「違うだろ」
ナルトにご飯を持っていってくれ、そして動けないだろうから食わせてやれ。
そんなカカシ先生の言葉に対する二人の反応を見た時は、はっきり言ってツンデレか、と思った。
けれど夫婦っぽいのGJ!
ていうかあわよくば二人で行ってしまえよ、なんて思いながら、そしてその光景を想像しながらげほごほと咳をしていたら、なんとその矛先は私に向いたのだ。
「え…私、ですか?」
「うん、お願い、名前」
「あ…わ、分かりました」
今でもリアルに思い出すよ。
私が頷いた時のサスケのじろっていう視線。
ごめんなさい。
私なんかがナルトにご飯食べさせてあげるなんておこがましいですよね。
ホント、すいません。
生まれてきてすいません。
まあ生まれてきてっていうのは嘘だけれど、それくらい力強い視線だったんだ。
「――ナルト、」
「…名前…?」
「ご飯持ってきたよ」
扉を横に引くと、ナルトはお礼を言い笑いながら上半身を起こした。
どうやらもうそろそろ、動けるみたい。
「ありがとうってばよ!それにちょうど名前に言いたいことがあったんだ!」
「…?私に?」
お盆を隣に置いて、ナルトの傍に腰を下ろす。
「俺さ、俺さ、朝からずっと考えてたんだ。白の言ってたこと。それでな、それでな?名前は、アイツに似てる」
「私が……誰に…?」
「白だってばよ!」
びっくりして目を丸くする。
「私が…あの人に…?」
「うん!だってよ、だってよ、アイツも名前も、誰かのことをす〜っごく考えて、想ってるだろ?」
ナルトが言っていく白さんの言葉には、確かに、同意するような、共感するような言葉がたくさんあった。
――彼にとっての大切な人は、桃地再不斬。
再不斬の為に生きて、再不斬を守って死んでいった。
「アイツが再不斬を庇って死んだのを見た時、俺ってば何でか名前のことが頭に浮かんだんだ!名前なら、アイツと同じく躊躇わないで俺達を守りそうだなって、…これってう、うぬ、」
「自惚れてる?」
「そう!それだってばよ!とにかく、そんな気がすんだ」
名前は、ああいう状況になったら、アイツと同じこと…すんのか…?
唇をぎゅうっと噛んでいるナルトに伺うように見られて、私はにこっと笑った。
「うん、きっとそうかな」
するとナルトはずこっと肩を落とす。
「だあーっ!何でそんなに笑顔なんだってばよ?!お・れ・は!名前にそんなことして欲しくないんだってばよ!」
「え?あれ、そうなの?」
「当たり前だろーっ!」
うがーっ!と腕をぶんぶん振り回すナルトに首を傾げながら、けれど私は思う。
そうだね、ナルト。
私と彼は、似ているかもしれない。
だって私も、絶対に、同じことをするよ。
「何で名前は、自分のことを考えないんだってばよ」
あらら、三人目。
「考えているよ?」
「考えてないっ!名前ってば俺らのことばっかりじゃん!」
「ん〜…でもなあ…みんなが幸せなのが私の幸せだから、つまりそれって私の為になっているんだよ?」
するとナルトは目を見張る。
そして恐る恐るというように私を上目で見た。
「何で名前は、そんなに俺らのこと、考えてくれるんだ…?」
友達も、居なかった、って
にこっ、笑う。
「みんなが素敵な人だから」
みんなはとっても素敵な人だから、私は応援したくなる。
お話の結末を知りたくなる。
だから私は動くんだ、お話が進むように。
役者が消えるのは困る。
けれど観客が一人くらい消えても、特に大事を為さない。
そういうこと。
「ほら、ご飯食べよう?ツナミさんのご飯冷めちゃうよ」
「お、お、おう!」
「って、ナ、ナルト?!何で泣いて、」
「き、気にしないでくれってばよ!」
はっ!
も、もしかして私にご飯を食べさせてもらうのが泣くほど嫌なのか…?!
「ご、ごめんナルト、やっぱりサクラかサスケ呼んでくるよ!」
「えっ?!あ、名前!」
ホント、すいません。
110427.