イナリ君と話して、カカシ先生とも話をした次の日。
疲れて寝ているナルトをタズナさんの家に残し、その他の第七班とタズナさんで、完成間近の橋に来た。
そんな時、事件は起こった。
桃地再不斬はやはり生きていて、あの時止血をしてくれた彼もやはり、再不斬の仲間だった。
「何だ、あれ……!」
「白」と桃地再不斬に呼ばれていた彼と戦っていたのはサスケとナルト。
私はサクラと一緒にタズナさんの警護をしていて、そして、三人が戦っていた場所から立ち上った赤いチャクラの渦に目を見開いた。
「名前、あ、あれ…?!」
「……サクラ、少しここを頼んでも良いかな。様子を見てくるよ」
「う、うん、分かったわ!」
「ありがとう」
濃霧の中を走っていくと、直ぐに赤いチャクラの台風の目が何なのかが分かった。
それは、ナルトだった。
トレードマークのような頬の三本線を浮き出させ、獣のように息を荒くさせている。
その殺気に染まった、というか理性や知性を無くしたような、凄まじい瞳が睨み付ける先にはあの、彼。
――…サスケは…。
目を凝らしても、どうにもサスケの姿が見えない。
「ウァああアア!!!!」
するとナルトが咆哮して濃霧がぶわっと吹き飛ばされた。
こっちにも殺気を孕んだ風が吹き荒れてきたので、両手を顔の前で組んで目を細める。
「……!サスケ!!」
するとナルトの後ろ、冷たい灰色のコンクリートの上に、ぼろぼろになったサスケが倒れているのが見えた。
倒れている…だけだよな…?
、死んで、ないよな…?!
そこで気が付いた。
だからナルトは、こんなにも怒っているのか…!
サスケがやられたから…。
そこで私はサスケの所へと走った。
ナルトが我を忘れて暴走してしまっている原因がサスケがやられたことなら、サスケを助けないとどうにもならないから。
「サスケ!…っ」
首を起点に鳥肌が立った。
ご、ろん。
横向きに倒れているサスケの肩を掴むと、少し重くて柔らかい物のように倒れた。
「…サ、サス、ケ…っ」
ぞわぞわと鳥肌が止まらなくて体が震える。
――人間じゃないみたいだ。
だからといって、猫や犬や、他の生物という訳じゃない。
ただ、生きている感じがしない。
関節が無いのかと思うよう、ぐにゃり。
だからといって、軟体動物のような訳じゃない。
ただ、ただ――、
「響遁 重音の術」
私は自分でも気付かない内に印を結んでいて、重音の術で、サスケの体に刺さっている千本に圧力をかけた。
ただでさえ細い千本が、ぐにゃっと縮んで、消える。
微かに震える指をサスケの首元に当てて脈を確認。
――とく、…ん
「っ、…!」
よ、かっ…た…。
良かった、良かった…!
サスケは、死んでいない。
――生きている…!
ほうっと体の力が抜ける。
けれどこの状態のままじゃ危ないから、やり方は分からないけれど、私のチャクラを出来るだけ送り始めた。
「――名前!」
「…あ、サクラ、今ね、」
「サ、サスケ、くん…?」
って、あ、あれ…?
もしかしてサクラ、サスケが死んでいると勘違いしている…かな…?
ぼろり、サクラの若竹色の瞳から涙が流れるのを見てぎょっとした。
「サ、ササ、サクラ!」
「忍は、どのような状況においても感情を…表に出すべからず…。任務を第一とし…何事にも涙を見せぬ心を持つべし…っ」
「え、あ、サ、サクラ…?」
「私…っ、私…っ何にも分かってなかった!忍のことなんて、何にも本当には理解してなかった…!」
サスケくん…!とかろうじて分かるような、ぐじゃぐじゃな言葉を絞り出すサクラに、こっちの涙腺まで緩んできた。
うっ…な、何て素晴らしい愛なんだ…!
サスケ、サスケにはこんなにも君のことを愛してくれている人が居たよ…?
だから、安心して逝って――って違うわ!
「サクラ!サスケは生きているよ?」
「…………ぇ……?」
「大丈夫!今は気絶しているだけで、私もチャクラを送っているし、きっと直ぐに」
「――……う……」
「!ほら、サクラ!」
「うっ…うぁああん!サスケぐぅううん!」
って、おーーーっと!
春野サクラさん、うちはサスケくんに抱きついちゃいましたー!
でも良かった、サスケ、やっぱり生きていたね。
110427.