舞台上の観客 | ナノ
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「#年下攻め」のBL小説を読む
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カカシ、ナルト、サクラ、サスケの四人が須佐能乎の中で無限月読の幻術をやり過ごしている時、サスケがハッと何かに反応した。
サスケに次いでナルトも何かに気付き、見えない外へと顔を向ける。
そうして何かあったのかと様子を見守る他二人の耳にも届いた。
第七班の仲間ーー名前の声が。


「マダラさん」
「名前、戻ってきたか」
「…………」
「だがもう遅い。無限月読は既に完成した。……お前は自分の時間を停止し、免れているようだがな」
「ーーそっか。だから名前は平気なのね」


サクラが呟く。

月の光は弱まってはきたがまだ須佐能乎から出れる程度ではない。
サスケはそのことに舌打ちをしながら、外の会話に耳を傾けた。


「それで名前ーー今から無限月読を止めるつもりか?」


マダラの言葉に四人は目を見開く。
けれど名前の返答は、はい、とハッキリとした肯定でそこに迷いはない。


「名前はいったい、何をするつもりだ」
「分かんねえ……オビトの無限月読を止めたのに、その後俺から尾獣を抜いたってことは、名前ってばてっきり、オビトじゃなくてマダラの味方だからかと思ってた」
「だけどナルト、あんたに九尾の半身を入れたことには、名前も関わってるのよ」
「え!そうなの!?」
「オビトが改心したように、名前も昔の心を取り戻してくれたのかしら。でも……」
「それはない」


サスケが断定する。
否定を受けたサクラも、けれどサスケの言葉に頷いた。


ーー名前は変わってなどいない。
それが四人の見解だった。
けれどだとすれば、何故名前は暁に入ったのか。
その疑問が生まれてきて、結局話や思考は途切れることになる。


「お前は少し遅かったのだ。オビトのこと等、戦に思ったよりも邪魔が入って長引いたからな」
「遅くなんて、ありません」
「俺がお前に時を戻させると思うのか?」


濃くなるマダラの空気に名前が息をのむ。


「今から戻せばお前へとかかる負担は計り知れない。そんな真似を、俺がお前にさせるわけがないだろう」
「……心配を、ありがとうございます……だけど私の体は平気です。たとえマダラさんが止めても、私は」
「今や六道仙人と同じ力を得た俺と、息も絶え絶えのお前が戦えばどうなるか、分からない程馬鹿ではない筈だがな」
「それはーーゲホッ、ゴホッ」


名前のくぐもった咳に、思わずサクラが身を乗り出す。


「時空眼が独りでに解けたか……それで平気とは、本当にお前ら一族は自分のことに鈍いにも程がある。幸か不幸か、月の光はおさまったがな」


マダラの言葉、そしてその通り月の光がおさまったことを確認したサスケは須佐能乎を解く。
マダラ、オビトに憑いた黒ゼツ、そうして少し離れたところで地面に膝をつく名前の姿が見えた。


マダラはチラリとナルトらに目をやったが、再び名前に向き直る。


「現実は地獄だ。名前よ」
「…………」
「だからお前はそんなにも苦しんでいる。だが無限月読の中では苦しみは無い。悲しみも、怒りもだ。お前達一族は他の誰よりも、幸せを望んでいるんじゃないのか?」
「……確かにそうです。だけど、マダラさん」


名前は立ち上がる。
真っ直ぐな琥珀色の瞳ーー確かにそれは昔と何一つ、変わっていない。


「苦しみがあるから、楽しみがある。悲しみがあるから、喜びはある。不幸があるから幸せがあると、そう思うんです」
「…………」
「それに、誰かに与えられた幸せよりも、自分で得てしまった苦しさの方がずっと、価値がある」
「ーー死を望む奴に、それがお前の幸せならばと止めないお前ららしい考え方だな」


「俺は、俺が殺されることでサスケが、幸せな未来を歩んでくれることを、信じているから」
「私も、イタチさんの幸せを、…本当に、心から…!…願っています…!」



名前は目を落とす。


「だが俺は違う」
「違う……?」
「今まではお前ら一族の幸せを尊重してきたつもりだ。けれど結果はどうだ?お前らは忘れ去られ、死に絶え、そして世界には戦が残っている。これが本当に、お前らの幸せだと言うのか?」
「…………」
「だから俺は、もうお前らの戯れ言は聞かん。ーー俺はお前らが幸せを望み、死ぬことよりも、たとえお前らが不幸でも、生きている道を選ぶ」
「ーー!マダラさん……」


名前の心が震える。


今マダラの言うことと同じように、名前がイタチの幸せを望む時そこには二つの選択肢があった。
イタチは死を望んでいた。
だから名前はイタチの考えを尊重し、結果それがイタチの幸せだと思い死を止めなかった。
けれど、生きていてほしい。
生きていれば辛いこともある。
けれど絶対に幸せもあるから。
だから死を止める。
その選択肢もあった。
そしてそれはどちらも、相手の幸せを考えた上で起こされる行動だった。


名前は手を握りしめるとマダラを見上げた。


「実はーー無限月読以外にも、マダラさんを止めたい理由があるんです」


名前の胸を取り巻く不安は消えていなかった。
ーー例の白眼の女が出てきた未来では、マダラの姿はどこにもなかった。
いったいどうしてなのか、それを考えると名前の心臓は焦ったように早くなる。


「ゲホッ……!」


名前は再び咳をする。
ーーするとその時名前の目の前に黒ゼツが現れた。
驚く名前に向かってゼツは黒の攻撃を振り出す。
ーーゼツが狙ったのは左眼だった。
けれど名前は動揺しながらもそれを寸でのところで避ける。


「巻キ戻シヲ防グ為左眼ヲ潰シテオキタカッタガ、マアイイ。悪イナ、名前」


ーーしかしゼツは名前に奇襲を避けられる、その可能性も考えていた。
だから名前が右に体を捻り始めた瞬間に既に、攻撃の狙いを右眼へと変えていた。

血飛沫が上がる。
ゼツの攻撃は名前の眼から額にかけてを抉った。
瞼をこえて傷が付いたのか名前は一度ビクリと体を震わせると右眼を覆ったまま地面に膝をつく。


「名前!!」


一番にサクラが駆け寄る。


「黒ゼツ!お前いったい何を……!」


そして目の色を変えたマダラのことも、黒ゼツは狙った。
マダラの胸を黒の攻撃が貫通している。


「ゼツ、さん……!?」


黒ゼツを除くこの場の全員が、信じられない光景を前に驚愕する。
名前も目を見開きマダラの元へ向かおうとしたが、時空眼の負担に加えて受けた傷が体をふらつかせる。
そんな名前をサクラと、そしてカカシが支えた。


「俺ノ意志ハーーカグヤダ」


左眼で巻き戻そうと時空眼を開眼しようとする。
しかし右眼に走る激痛にそれが出来ない。
琥珀色の名前の瞳に、黒ゼツにのみ込まれていくマダラの姿がうつっていた。












ーー目を覚ます。
視界にうつるのは氷の世界とカカシ先生。
ーー確か最後に見たのは溶岩だったはず。
自分が気絶していたことにその時初めて気付いた。


「名前、目を覚ましたか」


今の状況が分からない混乱が焦りとなって、私はカカシ先生にしがみつく。


「先生ーーオビトさんは……!」
「……オビトなら平気だ。さっき意識を取り戻して、今はサクラと、サスケを探しに行っている」
「サスケを……?」


私はようやく周囲の状況を確認する。
確かに近くにはカカシ先生しかいない。
それに少し離れた場所にはナルトと、大筒木カグヤがいるだけだった。

ーー先生から事の次第を聞いた私は身を震わせる。


「あんな体で空間を移動し続けたら、オビトさん……」


オビトさんと世界、両方が生きている未来が見つからない。


オビトさんが、死んでしまう。
けれどそれは、世界が生きるということ。
未来はそう言っていたはずだ。


私は無意識の内に考えを逸らしたくて呟く。


「せめて時空眼でサポート出来たら……」
「気絶していたことを悔やむよりも、自分の体のことを心配してほしいんだけどな、名前。それに眼が傷無く治ったのはナルトのおかげだ。チャンスを狙って確実に使わなければ無駄になる。仲間の努力を無駄にするなんて、名前はしないだろう」


ゼツさんに傷付けられた右眼に手をあてる。
血も止まらないし、激痛から時空眼にもなれなかった。
けれど私が気絶している間にナルトが治してくれたらしい。


カカシ先生の言葉に頷く。
すると頭を撫でられて、懐かしいそれに目を細めて笑った。


「しかし、大筒木カグヤ……あんな奴がいたなんてね」
「カカシ先生も知りませんか」
「六道仙人でさえ、ほとんど伝説上の人物だしね。名前は、その眼で視たことがあるのか?」
「……一度だけ。けれどどんな人までかは分かりませんでした」


ーー大筒木カグヤ。
初めてその身にチャクラを宿した人物。
時空眼でさえ視せない程遠い過去に存在していた、六道仙人の母親。
けれど現代に復活してしまった。
マダラさんを媒体として。


その時のマダラさんの叫び声が耳から離れなくて、眉を寄せる。


「名前、少し聞きたいことがあるんだけど、いいか」


するとカカシ先生が言った。
疑問符を浮かべながらも私は頷いて続きを促す。


「カグヤのことを一度だけその眼で視たと言ったが、それは過去と未来、どっちだ?」


心臓が動いて体に緊張が走る。


ーー時空眼は起こりうる可能性を視ることが出来る瞳力。
こうした不測の事態にこそ真価を発揮する。
けれど情報を、視たあの未来を……カカシ先生に伝えていいのか。


「……未来、です」
「……その未来で、オビトの身に何かがあったんだな」


カカシ先生の言葉に瞠目する。
未来を視ていない先生に、どうして。


「気になることが、いくつかあったんだよね」
「気になること……?」
「カグヤが現れてからの、お前のオビトへの対応に少し、違和感があってね。さっき、溶岩の空間へと連れられた時に名前がオビトを助けたな」


先生の言葉に不安を感じながら頷く。

確かにカグヤが現れた直後私たちは溶岩が真下に流れる空間へと連れられた。
サスケは鷹を口寄せしナルトを助け、カカシ先生は巻物をロープ代わりにぶら下がりサクラを助けた。
そして私は響遁の術で空に膜を張り、その上にオビトさんも乗せた。


「その時、印を結ぶ前にほんの一瞬だけ、お前は躊躇したように見えた」
「ーー!」
「その直前にゼツに眼を斬られたから、時空眼の負担もあって、無意識に体がチャクラを練ることについて歯止めをかけたのかとも、思ったけどね」


寒さのせいではなく体が震える。
歯が噛み合わない。
何か言おうにも、何を言えばいいのか、何を言いたいのか分からない。


「だけど目が覚めてお前は直ぐに、オビトのことを聞いたね」
「は、はい」
「起きて直ぐに心配するのが、自分以外の誰かのことだったのはお前らしいよ。だけど、何故オビトだけだったのか……それが気になった」
「……それは……」
「お前が意識を失ったのはこの、氷の空間に来てからだ。溶岩の空間で気絶していたのなら、オビトを真っ先に心配する理由は分かる。自分が意識を失ったことで術が解け、オビトを危険な目に合わせてないかとね」


カカシ先生は続ける。


「それにマダラとの会話の中で、お前の時空眼は勝手に解けていた。使えば体に負担がかかるものだと聞いているが、それでも勝手に解けるということは、体が限界を訴えている証。かなり酷使したんだろう」
「…………」
「だがこの戦争中、マダラやオビトの報告は上がってきていたが、名前の報告はほぼ無かった。だが戦場に出ていないのに時空眼を使っていた理由、それは、過去や未来を、視るためだろう」


意地、迷いが、打ち砕かれた。
肩を落とす。
地面についた手を握りしめた。


「出てきてくれない未来が、あったんです」
「名前、お前がそうまでして、未来を探した理由はなんだ。カグヤが出てきた未来でオビトに、何があった」


「カカシ、お前は当分こっちにいろ……すぐに来んじゃねーぞ」


「オビトさんは……」


声が震える。


「死にました」
「ーー!」
「けれどオビトさんのおかげで、世界は救われた」
「……そうだったのか」
「カグヤが現れた未来だけじゃ、ないんです。何度視ても、どんな未来でも、そこには一つの共通点がありました」
「共通点……?」


オビトさんと世界、両方が生きている未来が見つからない。


私はうなだれた。
カカシ先生が息をのむ。



「なるほどな……」



するとその時後方で、オビトさんの声がした。
ハットして振り返る先には現れている時空の歪み。
そこから出てくるオビトさん、サクラ、サスケの三人。


「オ、オビト、さん」


心臓が強く動いて指先が震える。
鼓動を全身で感じる。
けれどオビトさんは顔色を変えず私を見据えた。


「何を迷う必要がある」
「だってそれは、オビトさん……!」
「俺はどうせ死にいく身だ。時間がない。それに俺の命で世界が救われることへと繋がるなら釣りがくる」
「そんなこと……!それに、まだオビトさんの体は生きられる。死にいく身なんかじゃありません!」
「……そうかもな。俺はナルトやサクラ、そしてお前に助けられ、だから今もこうして生きている」


だが、とオビトさんが真っ直ぐに私を見る。
その瞳は真剣で、決意は明らか。
けれど少しだけ上げられた口元。
笑顔はとても穏やかで、優しかった。


「せめて前を歩いてーー死なせてくれ」


私は歯を食いしばった。
サクラが目を背けて、カカシ先生が目を細める。

それでも何か反論しようと口を開いた私に向けて、オビトさんは続ける。



「名前ーー死ぬことが俺の、そして世界の、幸せだ」



私は思い出す。
死ぬ前にイタチさんが言っていた言葉を。
そして私がどういう選択肢を選んだのかを。

押し黙った私にオビトさんはうつむきながら笑う。
するとカグヤの攻撃を避けたナルトがやってきた。


「ありがとな!サクラちゃんも、オビトも!」


無事を喜ぶ暇もなく、再び世界が変わる。
今度の空間は超重力があって、体は地面に押しつけられた。
地面にある無数の小さなピラミッドが刺さって痛い。


重力、なら響遁の術で空気の圧を変えれば……!


けれど印を結ぼうにも、指先一本すらまともに動かせない。
息をするのも苦しい位だった。


「ーー!ナルト!サスケ!」


そんな中、同じく超重力を身に受けているカグヤがそれでも手の先から灰骨を出し二人に向ける。
寸でのところでかわした二人を追い越しその灰骨は地面に刺さる。
するとその箇所から地面は朽ち果て、二つのピラミッドが無くなった。


私は息をのむ。
脳裏にうつるのは眼で視た未来。
ボロボロと朽ち果てて、灰だけが残ったオビトさんの最期。


私は視線を前に戻す。
カグヤが再び手の先をナルトとサスケに向けている。

すると視界を誰かが横切った。


「カカシ先生!ーーオビトさん!」


超重力がかかる中二人は走る。
盾になろうと駆け出す背中。
私はこれとまったく同じものを視た。


カグヤの手から放たれる灰骨。
ナルトとサスケの前に立つカカシ先生とオビトさん。

オビトさんが後目に私を見る。
優しげに細められた瞳と目が合って、それは次いでカカシ先生へと注がれた。



ーーこれでいいのか。



灰骨が二人へと襲いかかっていく。



ーーこのままではオビトさんが死んでしまう。
それでいいのか……?



カカシ先生は覚悟を決めたように真っ直ぐ前を見る。
けれどその腹に近付く灰骨の先に現れる時空の歪み。


一度しか視ていないんだ。
カグヤが出てきた未来は。
そしてその未来ではカグヤに勝てた。
世界は救われた。
こんな強い相手だ。
勝てるチャンスを逃してどうする。
時空眼を生かさないでどうする。
ーー選ばなければいけない時なんて、今まで何度も経験してきたじゃないか。
そして私は世界の幸せを願ってきた。


「名前ーー死ぬことが俺の、そして世界の、幸せだ」


その人達の幸せを願ってきた。
世界も幸せで、オビトさんも幸せ。
いったい何をーーそう、迷う必要があるんだ。


「だったら今さら……火影の自分なんか想像すんな!!」






ーー名前は息をのんだ。
カカシを狙っていた灰骨が時空間を伝ってオビトの前に現れる。
誰もが目を見開いた、その時ーー。



(ーー時空眼!!)



灰骨は動きを止めた。
腹の僅か手前で完全にしたそれに、今度はカグヤも目を見開く。

超重力の中誰もが名前を振り返る。
その眼の瞳は白緑色になっていた。
さっきの話を聞いていたこともありオビトらは驚く。

名前は攻撃を止めた。
オビトの命を奪うはずだった攻撃を。
つまり、必ず勝てるであろう未来への道筋を、選ばなかったのだ。


けれど驚いているのは名前も同じだった。
荒く呼吸しながらどこか呆然としている。


「名前!ナイスだってばよ!」


そんな中一人だけ、先ほどの話を聞いていなかったナルトが名前にそう声をかける。
一拍置いて反応した名前は頷き、そうして実感がわいてきたのか噛みしめるようにまた頷くとーー笑った。


「名前、お前、自分が何をしたのか分かってるのか……!」
「分かってますよ、オビトさん。ーーこれでいいんです」
「オビトってば、何怒ってんだよ!?」
「ナルトは黙っていろ!ーー世界と、俺と……!たとえお前が今俺を生かしても、結局は世界が滅び、俺も死ぬ!それはさっきお前が言っていたことだ!」
「確かに時空眼は、オビトさんと世界、両方が生きている未来を視せてはくれませんでした。どちらかが生きていれば、どちらかが死んでいた」


ナルトが目を見開き反応する。


「今にとらわれず先のことを考える。それはとても大事なことです。そして私の時空眼ではそれが出来る」
「なら……!」
「だけど時空眼を持つ一族の残りは私一人。多くの人は未来なんて分かりません。だから自分が、世界が、重要な岐路に立っていることなんてほとんどの時は分からない。そんな時いったい、どうするか」


「名前、さっきお父さんが言ったように、正しい選択肢なんてものは無いわ。あるのは無数の道…大事なのは、その道に入ってから、自分の望む未来へと進んでいくことよ」
「時空眼を持ってるお前だからこそ、分かるだろ、名前。――道はいくつもあって、運命なんてモノはねえ。――もがくことを、諦めるなよ」



名前は笑った。


「もがくんです、オビトさん」
「ーー!」
「幸せな未来を諦めずに望み、そのために今を精いっぱい生きる。そのことの方がずっと、大事なことです……!」


名前は右目を瞑る。
オビトの前の灰骨が巻き戻され、消えた。


「それにーー」


「――サソリさんが、死にました」

「ダァ?!待て待て!さっきからずっとやられっぱなしで、イライラしてんだぜ俺ァ」
「…角都さん、は、」
「今ばかりは、飛段に賛成だな。名前、お前は封印に必要だからな、先に飛んでいろ。直ぐに行く」
「――分かり、ました」



最初は、死を止めなかった。


「デイダラ、さん…!」


けれど止めたいという思いは強くなっていった。
それでも間に合わなかった。


「俺は、俺が殺されることでサスケが、幸せな未来を歩んでくれることを、信じているから」
「私も、イタチさんの幸せを、…本当に、心から…!…願っています…!」



死を止めたかった。
けれどそれは不幸になることだと思って、止めなかった。


「よかった」


死を止めたかった。
そしてそれはようやくーー。


「やっと、間に合った」




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