舞台上の観客 | ナノ
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「#幼馴染」のBL小説を読む
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――サスケとダンゾウの決着が着いた橋の下、川の上に立ち対峙するナルト、サクラ、カカシと、サスケ、マダラ、ゼツ。
サスケに自分の想いを伝え、ニッと歯を見せて笑ったナルトは、すると少しだけ辺りを見回してから、眉を寄せてマダラを見る。


「名前は、ここにはいねぇのか」


そのナルトの問いに、マダラは少しだけ反応した。
五影会談の場で回収した、時空眼についての巻物に、意識が移る。


「まぁ、な。――どうしたナルト、まさか」

「…ナルト、お前も、色々とよく考えるんだな…名前という繋がりを、本当に手繰り寄せるのかどうか…とかな」
「ンだと…!」
「お前に、歴史の重さが支えられるのか?ナルト」


「さっきの今で、もう答えが出たのか?」


そう簡単に出していいものではない、出せるものではない答え。

けれどナルトが真っ直ぐな瞳をしたまま「ああ、そうだ!」と言い切るので、マダラは思わず、そして子供の戯言を聞くように笑った。


「ソイツは結構なことだな。…で?どうすることにした」
「決まってるってばよ。名前だって、変わらねえ。サスケも、名前も、木の葉の里に連れ戻す!」


マダラは変わらず笑う。


「ナルト、お前ならそう言うだろうと、分かってはいたさ。――けれどもし、名前という繋がりを手繰り寄せられたとしても、アイツには膨大な量の歴史と、そして未来がのし掛かっている」
「……」
「俺はさっきお前に、それを支えられるかと聞いたが……――悪いな、あの質問に意味は無い」


変わらないナルトの目をマダラはその赤い目で睨むようにして見た。



「何故ならお前にそれは、支えられないからだ」



――話の流れを眉を寄せながら見ていたサスケが、マダラに視線を移す。
マダラは少し肩の力を抜くようにすると「というか、誰にもな」と続けた。


「分かってるってばよ」


するとナルトが、言った。


「俺にはそんなデケェものは、支えきれねえ」


その言葉にカカシとサクラは驚いてナルトを見、マダラは見定めるように眉を寄せた。


「俺は、怒ったことがねぇような人間じゃねぇ、っつーか色んな奴に、感情に任せて突っ走り過ぎだ、とか言われるような人間だ」
「……」
「俺より懐が深い奴なんか、他にたくさんいるってばよ」


そう、とナルトは続ける。


「たくさんいるんだ、名前の傍には」
「――!」


マダラが微かに目を見張る。


「色んな奴が、名前を連れ戻そうとしてる。色んな奴が、名前との繋がりを手繰り寄せようとしてる」


ナルトはニッと笑った。


「ソイツら全員で分け合って支えれば、歴史なんか、目じゃねぇってばよ!」


――次の瞬間、カカシは咄嗟に、ナルトを護ろうと前に出ようとしていた。
今まで、どんな時でも余裕を身に纏っていたマダラの雰囲気が、殺気に似たようなものに変わったからだ。


「それに昔、名前が、言ってたんだってばよ」


けれど再びナルトが口を開くと、まるでそんな瞬間なんて無かったかのようにそれは消えた。
現に周りには何も、変化は無い。


悲しさがあるから、幸せはある。幸せがあるから、悲しさはあると、思うんだ――って」


けれど伝う冷や汗が、確かにカカシの頬にはあった。


「昔は、一人の孤独とか、つれぇだけで本当、イヤなことでしかないって思ってた……それに、エロ仙人が死んだ時はもっと、辛かった」


ナルト…とサクラが声を漏らす。


「今だって、師匠が死んだことは絶対ェ、幸せにはならねぇ!……けど、今なら、昔名前が言ってたことの意味が、分かるってばよ」

「幸せな記憶は、これからを生きていく糧になる」

「もし世界に、喜びとか、楽しさしかなかったら――俺には諦めねぇド根性なんて絶対ェ、ついてなかった!」


それに、とナルトは自身の胸元に拳をあてる。


「兄弟子からも、教えてもらった。――痛みだって、大事なんだ」


――マダラの脳裏に、数年程前の出来事が映った。





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