舞台上の観客 | ナノ
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あれから早々にサスケに礼を言って、私とサスケはタズナさんの家に戻った。
サスケのショック療法のおかげで、早々に。
改めて、サスケはすごいな、と思いました。
あれ、作文?


「あの〜」


すると食事が終わってお茶を飲んでいた時、サクラが遠慮がちに声を出したので、少し首を傾げてサクラを見る。


「なんで破れた写真なんか飾ってるんですか?イナリ君、食事中ずっとこれ見てたけど…なんか、写ってた誰かを意図的に破ったって感じよね」


そこで私は振り返る。
サクラの前に座っていたから気づかなかったけれど、こんなものがあったんだ。


「……夫よ」
「…かつて、町の英雄と呼ばれた男じゃ…」



――ガタ、ン



「父さん!イナリの前ではあの人の話はしないでって…、いつも…!」


何も言わないでいきなり出ていってしまったイナリ君。
タズナさんの孫で、ツナミさんの息子。


あの子…何だか年不相応に大人びている、というかマセているというか、スレているというか…。


バタン、!とツナミさんが閉めていったドアを見ながらふと思う。

するとタズナさんが、写真の破られている箇所に居た男の人――イナリ君の義父の話をし始めた。


話によると、イナリ君のお父さんは町の英雄と呼ばれていて、イナリ君が胸を張って誇れる父親だったらしい。
けれどガトーがその英雄を公開処刑して、イナリ君も、そして町の人も、みんなみんな勇気というものを奪い取られてしまった。


「…でも、写真まで破ってしまう必要は…」


破られた写真。
笑顔のツナミさんと笑顔のイナリ君と。
きっと、破られた箇所に居たイナリ君のお父さんも、笑顔だったんだと思う。

すると私の呟きが聞こえていたようで。


「うむ…じゃがなあ…イナリが見れんじゃろう…」
「でも、もったいないじゃあないですか」


にこっ、と。
雰囲気に不相応に微笑むと、タズナさんも、そして他のみんなも虚を突かれたような顔をした。


「だって、大切な思い出なんですよね?」


にこにこと、笑っていればタズナさんはふっと力を抜いて笑った。


「そうじゃなあ…いつか、いつかイナリが、また笑顔を取り戻したら…――」



ガタッ



すると何か物音がして、そっちを見ると、床に転んでしまっているナルトの姿。
きっとチャクラの使いすぎで辛いだろうに、腕を震わせながらドアへと向かっている。


「証明してやる…」


震える膝を、伸ばして。
震える背中を、伸ばして。
歯を食い縛った。



「この俺が、この世に英雄がいるってことを、証明してやる!」



そうして此方を向いて、


「行くってばよ、名前!」
「…え、あ…うん…?」
「ちょちょちょ、自分一人ならまだしも、名前まで連れてくってどーいうことよ」
「だってよ、だってよ、名前も、もったいねえって言ったじゃん!一緒に証明してやろうぜ!」
「ったく…このウスラトンカチ」
「あのねえ!馬鹿なアンタと違って名前は疲れて」
「あはは、いいよ、サクラ。――ナルト、行こうか」
「おうっ!」







110420.