舞台上の観客 | ナノ
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思考の渦に入れられたナルト、カカシ、ヤマト。
けれどマダラにとっては、そんな三人の反応は予想の範疇だったのか、構わずに「それに」と続けて口を開く。


「なにも一族のことを忘れてしまったのは、周りの奴らだけじゃない。名前だってかつては、時空眼のこと、そして自分の一族のことを、忘れていた」


そんなマダラの言葉に、カカシが目を見開いた。
そしてマダラと、それに対するカカシの反応に、ナルトは疑問符を浮かべる。


「カカシ先生、何か、知ってるのかってばよ。名前も自分の一族のことを忘れてた、って…名前に、家族は…」
「…ナルト、名前について知らないことがあったことを、悔やむなよ。あの子は自分のことをあまり話さないし、俺も偶然、知れたようなものだからね」


カカシの脳裏には、数年前の光景が浮かぶ。


「お姉ちゃんは、家族、居るの…?」
「分からないんだ」
「…分から、ない…?」
「うん。私もまだ子供だけれど、イナリ君は私よりも小さいよね。そんなイナリ君でも、あんまり覚えてないくらいの小さい時の記憶って、ないかな」
「……ある、よ…」

「その記憶も私は一人だったから、分からないんだ」


たった数年前のことなのに、今と状況が変わりすぎているから、まるで遥か昔のことのように感じられる。


「――名前は、自分には家族がいるのかどうかすら分からない…そう言っていた」
「――!」


ナルトが息をのむ。


「だから名前は昔、自分の家族を探して、色々な国を回っていたらしくてね…恐らく、その時のいつかに、現風影と出逢ったんだろう」


「探してみたけど、見つからなかったんです。色んな国を回ってみたけど、駄目だったんです。だから探すことを止めました。これ以上は意味が無いって」
「…意味が無い…?」
「はい。五年ほど探していたけれど見つからないってことは、家族は、まあもし居たのならですけど、私に見つかりたくないってことなのかなって」
「そんな…」
「それか、もう死んでるのかなって」


「だけど結局は、見つからなかった…そこで、旅の道中で会ったことがあった三代目の火影様が、名前を木の葉に引き取ったんだ」
「…確かに名前ってば、俺と同じで、一人暮らしだったけど…いつも笑ってたから、なんつうか、そんな考え、出てこなかったってばよ」
「…名前は、こうも言っていたよ。自分には記憶が無いから、悲しさも生まれない…ってね」


「うん。夜ご飯の時にも言ったけど、記憶になったっていうことはつまり、出来事があったってことだよね?私には家族との記憶が無いから、感情も特に生まれないの」


「そんな、そんなわけねえってばよ!俺もずっと、家族のこととか、何も、分からなかったけど…それでも、一人は…あの孤独は、辛すぎるってばよ…」


昔のことが思い出されたナルトが、無意識に、震えるように歯を鳴らす。
だからナルトは歯を食いしばると、手を握りしめて、うつむいた。

ヤマトがそんなナルトを見て目を細める中、カカシは先程よりも眉を寄せて、睨むようにしてマダラを見る。


「マダラ、お前に聞きたいことがある」


少し低く、押し殺したようなカカシの声音。


「今、名前以外に時空眼を持つ者はいるのか」
「…いいや、皆、死んでいるさ。名前は一族の、たった一人の生き残りだ」
「…お前はいつから、そのことを知っていた」
「最初からだ。名前が家族を探し、旅をし始めた頃にはとうにな」
「なら…!」


声を荒げたカカシに、ナルトとヤマトがハッとして彼を見る。


「それならどうして、名前にそのことを伝えてやらなかった!十にも満たない子供が国々を渡り歩くのがどれほど危険なことか、分からないとは言わないだろう…!」
「…別に、名前に己の一族のことを伝えなかったのは、俺の考えじゃない」


眉を寄せるカカシを、マダラは目だけで振り返った。


「名前の記憶からさえも、一族のことを忘れさせること…それは、アイツの両親の願いだったんだよ」





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