舞台上の観客 | ナノ
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「#学園」のBL小説を読む
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荒く息をしている我愛羅は、少しの必死さを滲ませながら、真っ直ぐに私を見てくる。

私はそんな我愛羅を、信じられないものを見る気持ちで見返している。


「どう、し」
「風影!説明しろ!」


すると私の言葉を遮る形で、後ろで雷影が吠えた。

私はハッと意識を鮮明に戻して地面を蹴り、雷影から距離を取った位置に着地する。

雷影と対峙する、我愛羅。
そして我愛羅の側に並ぶテマリさん、カンクロウさん。
少し離れたところに――恐らく雷影の護衛、が二人。


「一度ならず二度までも…!今度はいったい何なんだ!」
「雷影、名前は」


そして影は二人とも、重音の術を解いた。


(――時空眼!)
「名前は敵じゃない…!」


時空眼を両眼とも使って、雷影、風影の動きを…現在の時空を支配して止めさせた。
これは重音の術とはわけが違う。
…影であっても絶対に、…いや、誰であっても、この作用を受けて、動くことは出来ない。

動きを止められた我愛羅が、ハッと私を見る。

そして私も、今我愛羅が言った言葉に目を見開いて、彼を見た。


「クソ…!風影!この状況でもコイツが、敵じゃないとでも言うのか!」


身体を動かそうとしながら、雷影が苛立った様子で、我愛羅にそう言う。
我愛羅は、雷影に視線を移すと「ああ」と肯定した。


「名前は確かに暁だ。げんに俺が暁によって尾獣を抜かれた時も、里にまで俺を捕獲しに来た一人だった」


我愛羅の次の言葉を雷影と、そして私が、待つ。


「だがこうして、尾獣を抜かれても俺が生きているわけも、また名前だ」
「――!」


私は、目を見開いた。

雷影が浮かべた疑わしさを孕んだ疑問符に対して、カンクロウさんが頷く。


「我愛羅の一件で、少し気になることが出来た俺達砂は、木の葉に、とある目的で小隊を送ってたじゃん」
「とある目的、だと」
「ああ、今その小隊が持って帰ってきた――名前に関する巻物のサンプルがあるんだが…どうにも、動けそうにない、じゃん」


――!私に関する、巻物。
どうして、砂隠れの里の忍がここに…。
それに、どうしてこの巻物の傍に…?

それじゃああの時、砂の忍が木の葉に、そして私の一族に関する巻物の近くにいたわけは、任務だったんだ。


雷影が舌を打つ。


「情けない。シー、ダルイ、お前らもだ!お前らにかかっている術は、さっきと変わっていないだろう。それくらいさっさと解かんか!」
「ボス、そうは言ったって結構この術の圧力、半端じゃないんスけど…」
「それに風影!お前は自分が助けられたからといって、暁であるコイツを助けると言うのか!」
「…雷影、俺は今日この会談で、他の影に聞きたいことがあった。それは、暁に捕獲された他の人柱力が、尾獣を抜かれたにも関わらず、生きて帰ってきてはいないかどうか、ということだ」


我愛羅の言葉に、私は無意識に唾をのんだ。

雷影並びに護衛の二人が、微かに反応を示す。
それを見て、テマリさんとカンクロウさんは少し嬉しそうな雰囲気になり、我愛羅は目を細めた。


「いや」


けれどそんな砂隠れの里の空気を、雷影の声が割る。
そして「帰ってきてはいない」と言葉を続けた雷影を、護衛の二人が見上げた。


「嘘ついたって、バレバレじゃん」
「うちはサスケら暁が会談の場に侵入してきた今、里同士で色々な探り合いや隠し合いをすることは、得策とは言えないんじゃないのか?」
「嘘ではない。確かにユギトは生きてはいたが…ビーが、帰ってきていない」


カンクロウさんとテマリさんが少しハッとする。


「だからこうして、五影を招集したんだ。うちはサスケを、始末する為に!」


雷影の言葉に眉をギュッと寄せると、私は、口を開いた。


「雷影、様」


雷影が私を睨むように横目で見る。

私はその眼光に臆することはせずに、言葉を続ける。


「八尾の人柱力は、死んではいません」
「!なんだと!」
「生死の問題以前に、うちはサスケら鷹が暁として行なった八尾捕獲は、失敗した。だから八尾は私達暁の元に、連れられて来てすらいない」
「それなら、どうしてビーの奴は消えて…!」


すると雷影はハッとした。
そしてみるみる内に、その褐色の頬が内側から赤くなる。


「ビーの奴め、これを良い機にどこぞで遊びほうけているなァア!」


時空眼の作用によって身体を動かせない雷影は、少しの恥ずかしさを混じらせた怒りを発散するように、吠えるように文句を言う。
シー、と呼ばれている金髪の護衛役は呆れたように力無く笑い、ダルイ、と呼ばれている銀髪の護衛役は肩をすくめた。


「クソ!…だが、暁の女。それをわしに伝えたところで、わしは狙いを変えはしない」
「――!」
「たとえビーが無事だとしても、暁がビーを狙いに来たのは変わりようのない事実。我々雲隠れは、一度向けられた矢の主を逃がすようなことは絶対にあり得ん」


私は眉を寄せると、歯を食いしばった。


「うちはサスケは必ず、このわしが始末する!!」






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