なんと、桃地再不斬は生きている、らしい。
それもどうやら、あの彼、追い忍だと言っていた彼が結果的には生かしたことになる、と。
なので私達は桃地再不斬が再び襲ってくることに備えて、木登りという名の修行を始めることとなった。
チャクラコントロールか…。
結構難しかったな…明日からも頑張らないと。
――もっと、もっと、強くなりたい。
その日の修行を終えてタズナさんの家へと戻って来た私は、一旦みんなと別れて、布を洗った場所に来た。
「止血した方がいいですよ」
――…彼、悪い人には見えなかったけれどな…。
忍だから、自分を偽るのは簡単ということなのかな…。
彼に貰った布を物干し竿から手に取って眺めた。
そ、れ、よ、り!
いやはや全く…本当にあの三人は見ていて飽きない。
もう本当に最高だ。
特にあの、サクラがナルトよりも、そしてサスケよりもチャクラコントロールが上手いところが。
にやにやと口が緩む。
良いよなあ…特にこの場合はサクラとサスケかな…。
こう、いつも何でも出来るのはサスケの方なのに、今回ばかりはサクラの方が上だっていうのが…。
サスケは絶対に、サクラに教えを乞わないんだろうな…。
けれどサクラはサスケの為に何でもしたい。
だから何とかしようと思うけれど、サスケはそんなこと情けないから逆に突き放す…。
………………ん…?
待てよ、それじゃあすれ違いじゃないか!
そ、それは……私はハッピーエンド派だからなあ…。
まあ確かに、悲しさの上で幸せは輝くけれど。
「おい、名前」
――サっ、サスケの声だ。
な、ななな何で此処に…。
というか、今サスケの顔を見るのは良くない。
「…?飯だ、早く戻れ」
唇を引き結ぶ。
布をぎゅうっと握る。
長く話すことは出来そうにないので、震える息を抑えて短く「分かった、ありがとう」とだけ言った。
すると何故だか、去っていく筈のサスケの足音が、私に向かって近づいてくる。
な、何で来るんだ…?!
大体サスケはいつも私に良くない時に来る気がする。
あの、鬼兄弟の時も……って、し、しまった…!
思い出してしまった…!
――たっ、サスケの足音が直ぐに後ろで止まる。
「その布…あの追い忍がお前の止血に使ったやつか」
――こ、くん。
話せないので頷いた。
「……名前」
「……っ……」
「…おい、」
「…………」
「…こっち見ろ」
……?!
サ、サスケは何を言っているんだ…?!
今私がサスケを見たらどうなると思う?!
確実に――死ぬ。
いや、言い過ぎた。
「っ、ご、ごめ…家に、戻っててくれない、かな」
ほらもう何とか伝えたけれど声震えまくりじゃあないか。
とりあえずサスケが戻ってくれたら落ち着く。
落ち着いてから見たならば、それは大丈夫なんだ。
すると足音が後ろじゃあなく横からして、焦りながらも顔を背ける。
「っの…ウスラトンカチ!」
「……――――?!」
ぐいっと引っ張られたかと思えば、何故か私はサスケの腕の中へとダイブしていて。
何よりもまず、フリーズだ。
「お前は他人のことを考え過ぎなんだよ…!敵のことまで気にかけんな…!」
フリーズ。
「……顔見られたくねえんなら、…見てねえから」
フリーズ。
「他人のことをお前が考えてんなら、…誰かがお前のこと考える必要あるだろ」
フリーズ、が解けた!
……サ、サスケは、ショック療法をしてくれているのだろうか…。
その気持ちはありがたいんだけれど、ナルトやサクラに見られたらなあ…。
110420.