舞台上の観客 | ナノ
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「ねえ、名前」
「はい、ゼツさん」


木の葉隠れの里の外、粉っぽい風で靡く髪をおさえながら、ゼツさんの声に応える。


「本当に木の葉の里を、元に戻すの?」


けれど次の問いには、答えることが出来なかった。

――木の葉の里は、もうそこには無かった。
リーダーの神羅天征によって、木の葉の中枢には大きなクレーターが出来ている。


「まさか私も、リーダーがここまで、…神羅天征を使うなんて、思ってませんでした」
「ココマデノ被害ガ起キタ木ノ葉ヲ元通リニスルノハ、オ前ノ身体二負担ガカカリスギル」
「はい、…もしかしたらその負担は、死にまでたどり着くかもしれません」
「わざわざ死んでまで、木の葉を元通りにする必要なんてないよ。名前は暁だ。今さらもう、里へのあったかい想いなんて無いよね?」


ゼツさんの言葉に、はい、と答える。


「とりあえず、私はもう一度里に入ります。実は他に少しだけ、用事があって」
「用事?」
「はい、どうしてだか木の葉には、時空眼についてが記された巻物があるみたいなんです」
「ソレヲ取リニ行クトイウワケカ」


靡く髪をおさえながら頷く。
そうして木の葉隠れの里を見据えた。


「俺達モ、モウ一度木ノ葉二入ル。…ペイント九尾ノ戦イガ始マッタヨウダ」
「木の葉を直さないにしても、名前は今回の尾獣狩り、参加しない方が良いよ」


少し首を傾げてゼツさんを見ると、ゼツさんは真っ直ぐにどこか里の場所を見ていた。


「かなり派手にやってるみたい。巻き添えくらっちゃうよ、きっと。…まあ今回はペインだからね。サポート無しでも十分やれるさ」
















――とりあえず今、火影邸の方へ向かってはいるけれど…例の巻物は、この神羅天征を受けた状況の中で、ちゃんと、残っているのかな。
…多分、大丈夫な気はする。


あの巻物がいつ、そして誰によって作られたのかは知らないけれど、歴史から消えてきた時空眼に関する何かの中で、唯一残っているもの。


何か、術がかけられているのかな…。


建物の瓦礫やらならまだ現存する辺りに着いた私は、一旦思考と足を止め、印を結ぶ。

――確かあの巻物には、時空眼を持つ者のチャクラも、呪印として記されていた。
だから私がチャクラを発して、それに呼応するチャクラがあれば、それはあの巻物の他にはない。

感知タイプじゃないけれど、これくらいなら出来る、筈。


「…見つけた」


感じたチャクラは、ここから、近い場所で。
人々は避難したのか、それともさっきの、神羅天征で…。

どちらにしても、人が居る音がまったく聞こえない中を、場所に向かって走っていく。

――するとあったのは、崩れた瓦礫だった。

そしてその中からチャクラを感じるから、私は瓦礫の山に近づいて、クナイを構える。


「響遁 重音の術」


クナイに音の振動を纏わせて、それを瓦礫に刺す。

瓦礫は振動によって、粉々に砕け散る。
すると現れたのは、地面に転がる巻物と、伏している、砂隠れの里の額宛てをした、忍だった。


どうして、砂隠れの里の忍がここに…。
それに、どうしてこの巻物の傍に…?


地面に転がる巻物を取り上げて、眉を寄せながら、伏している忍を見下ろす。
けれどゼツさんの現れる音を聞いて、私は振り返った。


「ソレガ例ノ巻物カ」
「はい。それよりゼツさん、まさかもう、戦いの決着がついたんですか?」
「ううん、それがね、名前。なんだかおかしいことになっちゃったんだよ」





120210