舞台上の観客 | ナノ
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――あの後、彼は桃地再不斬の首に千本を直撃させて、そうして死んだ桃地再不斬を担いで去っていった。
桃地再不斬という抜け忍を追っていた、追い忍、らしい。


「ツナミさん、」
「あら、名前ちゃん。どうしたの?」
「洗濯をする場所を教えて欲しいんです」
「洗濯なら私がするわよ?」
「いえ、自分でやらせて下さい」
「そう?じゃあ家を出て少し行った所に川があるから、そこで洗えるわ」
「ありがとうございます」


ぺこりと頭を下げると、「名前ちゃんは本当にしっかりしてるわねえ」と頭を撫でられる。

少し笑って、そうしてツナミさんが教えてくれた場所へと歩き出した。
手には、彼が止血に使ってくれた布。


――波の国に着いた私達。
タズナさんの家に着くと、娘のツナミさんが出迎えてくれた。
写輪眼を使って動けなくなってしまったカカシ先生が、その家で寝ている。


場所に着いて、さらさらと流れる川の水を桶にすくう。
じんわりと柔らかい日の光が降り注ぐ下で胡座をかいて、血に濡れてしまった布を洗い始めた。




「――…おい」
「…?ああ、サスケ」


血も取れて、石鹸のいい香りもして。
近くにあった物干し竿に布をかけると、いつの間にかサスケが来ていた。


「どうしたの?」
「…………」
「…?サスケ?」
「……悪かった、な」


首を傾げると、サスケは視線を逸らす。


「…俺を庇ったから、斬られただろ」
「あ、ああ、もしかして、この左肩のこと?それだったらサスケが気にすることないんだよ。私が勝手にしたことなんだから」


にっこり、微笑むと、サスケが私を見た。
から、もう一度微笑んで頷いた。


サスケに責任とか、自分を責めて欲しい訳じゃあない。
本当にただ、私がみんなを守りたいからやっただけ。
…何だか暖かいから、日向ぼっこでもしようかな…。


ふわふわと漂う春の陽気に少し頬を緩める。
そして川の方を向いて胡座をかいた。


ああ…気持ちいい……って、ちょっと待った!
こんなにほわわんと呑気に日向ぼっこしている場合か?

考えてもみろ、さっきカカシ先生の傍にはナルトとサクラとサスケが居た。
でも今、サスケは此処に来た…。

サスケは自分からナルトとサクラを二人に、いやまあカカシ先生が居るけど、させたのか…?!
そ、その真意はいかに…!


バッとサスケを見ると、サスケは少し驚いたみたいで。


…ていうかサスケは、いつまで此処に居るんだ…?
も、もしかして戻りづらい何かがあるのだろうか…。
自分からナルトとサクラを二人きり、いやカカシ先生以下略、な訳だし…。


するとサスケが、私の隣に腰を下ろした。
目を丸くすると、サスケはじっと私を見る。


も、もしかして相談…?!


「…俺、お前は体が弱いからあんまり動けねえんだと思ってた」


違った!
…というか、…私?


「でも、違った。再不斬の殺気にもあてられてねえし…」
「ああ、それはね、サスケは天性の才能があるからだよ」
「…、…?」
「元々気配や殺気に敏感な人は、たとえ子供でも同じなんだって。サスケは才能があるから、私よりも殺気を感じ取っちゃったんだよ」
「…………」
「サスケは、すごいね」


にっこり、微笑む。

サスケは私から川に視線を移した。


「けど、全く感じなかった訳ねえだろ…あのドベでさえ怖がってたんだ」


サスケの言葉に、その時のことを思い出す。


「確かに怖かったよ。けど、怖いっていう気持ちよりも、みんなを守りたいっていう気持ちの方が大きかったんだ」
「――――……。…お前は、自分のこと、考えねえよな」


…それ、カカシ先生にも同じこと言われたよ…。



「ギャーーーッ!!」



するとナルトとサクラの叫び声が柔らかい空気を裂いて。
私とサスケは一瞬目を合わせると、直ぐに立ち上がり家へと走り出した。






110419.