舞台上の観客 | ナノ
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「名前、起きて。名前」
「…ゼツ、さん」


目を開けると、ゼツさんが私を少し心配そうに見下ろしていて…そしてゼツさんの後ろには、薄い青の、空が見えていた。


「俺達ガ来テモ起キナカッタガ、マサカ、気絶シテイタノカ」


上体を起こした私は左手を眉間の辺りにあてる。


「いえ、多分…」


「名前、俺の目を見ろ」
「今はただ、眠れ」


「時空眼を長時間使い過ぎていて、身体に負担がかかっていたのは確かです。それでイタチさんが私を、…幻術なのか、眠らせてくれて」


そうして私は気づく。
――目を覚ましたときゼツさんと目が合ったけれど、この眼が勝手に、ゼツさんの未来を視ることはしなかった。

ゼツさんの瞳を見ると、映るのは白緑色の私の目。


――イタチさん、私が目を覚ましたとき、自然と時空眼になっているように、してくれたんだろうな…。
長時間時空眼の状態でいるよりも遥かに、過去や、未来を視ることは身体に負担をかけるから。
けれど本当に、写輪眼は時空眼に、作用が…


「名前、召集ダ」
「分かりました、ありがとうございます」
「東のアジトだよ。…それからね、名前。イタチが、」
「サスケと戦い、そして…負けた」


私は眉を下げて笑った。


「そうですよね?」
「…右眼デ視タノカ」


うつむいて、首を横に振る。


「こんな眼なんて無くても」


「名前、俺は心から、お前の幸せな未来を願っている」
「さよならだ」


「分かってたんです…」










イタチさんが、死んだ。
サスケと戦い、そうしてサスケは、生き残って。


――暁の東のアジトへと向かい歩きながら、うつむいて、けれどもう悲しみはしない。

今現在ではもう、過去になってしまったイタチさんの最期は、イタチさんがずっと、望んでいたものだから。

けれどその時、私の脳裏にはもう何度も見た光景が映る。


「螺旋丸!!」「千鳥!!」


私がこの眼を、時空眼を開眼してから何度も見てきた、変わらない未来…。
ナルトとサスケが、戦うということ。


けれど、復讐を終えたサスケはこれから、どうするんだろう…。
――サスケが里を出たのは、イタチさんを殺す力が欲しかったから。
その力を与え、サスケを欲しがっていた大蛇丸はもう居なく、イタチさんも…。


普通なら、木の葉に戻ると、そう思うし、願いたい。

抜け忍と言えどサスケが木の葉に戻ることを、そりゃあ反対する人達もいるだろうけれど、ナルト達は…。
それにイタチさんが望んだ通り、サスケは、一族を皆殺しにしたイタチさんを殺した英雄となって…木の葉の人達も、サスケを…。


「螺旋丸!!」「千鳥!!」


私は手を握りしめた。


とりあえずアジトに着き召集の内容を受けたらまた、未来を視よう。
もしかしたらこの、変わらない未来も…。


「――マダラさん」
「来たか、名前。身体の方は…まだ変わらず、時空眼はお前に勝手に、未来を視せてるみたいだな」


東のアジトに着き、思考の沼から意識を上げ、そうして気配に顔を上げるとそこには、アジトの入り口の前に立つ、マダラさんの姿。

マダラさんの言葉に少し笑いながら小走りで駆け寄り、並んでアジトへと入り歩き出した。


「召集したのは名前、お前に暁の新しいメンバーを紹介しておこうと思ってな」
「新しい、メンバー…確かに、ここ最近で暁の戦力は、激減してしまいましたからね」
「ああ。とは言っても完全な仲間とは言いきれん。お互い利害が一致しているから、手を組んだ」


マダラさんと私の足音が、固い石の上を響く。
続いていく灰色の石で出来た道の先は少し開けた空間で…きっとそこに、新しい暁のメンバーはいるんだろう。


「鷹という小隊でな…その右眼で、視なかったか」
「はい、特には」
「まあ、別にその眼で視なくともこれから会う。それにお前にとっては、よく知った相手が居る」


マダラさんの言葉に、疑問符を飛ばす。
けれど開けた空間に着いたので私は前を見直した。


「小隊の元の名は、蛇」


ハッ、と息をのむ。

影に揺らめく部屋の中、赤い髪の女、大柄の男、白髪の、大きな刀を背中にかけた男が振り返り、私を見る。


「大蛇丸のアジト監獄の管理者、香燐。天秤の重吾。霧隠れ、鬼灯兄弟の片割れ水月。そしてあと一人…コイツの説明をする必要はないな」


黒い髪の男が私を振り返り、そうして目を見開いた。


「名前…」
「サス、ケ…」





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