舞台上の観客 | ナノ
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「#オメガバース」のBL小説を読む
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「そうしてお前も、歴史から消えることになるのか?」


――イタチさんと鬼鮫さん(動物コンビ、ゼツさん命名)の尾獣借りのサポートに来ている私…だけれど鬼鮫さんは、一人で狩りますよ、と言って、行ってしまった。

雨が降るなか未来の話をし終えた私は、イタチさんの問いに、にっこりと笑う。


「はい、そうです」


するとイタチさんはハァ、と小さくため息をついた。

そんなイタチさんに私は少し首を傾げて、けれど笑って


「不思議ですよね…時空眼を持つ者誰もがこの術を使わなきゃいけない決まりなんて無いのに…みんな、同じように使ってきた」


イタチさんを見上げる。


「この左目が視る過去は、私の一族からの視点も含まれる…って前に、話したことがありますよね」
「ああ」
「私の一族の人はみんな、そうして術を使った後に里を、どこか遠くから眺めているんです」


笑った私は、雨の粒で揺れる木々を見やる。


「知り合いや、或いはかつての同じ班の人を通りすぎたりもして…みんな、里を眺める…その里は、色々で…同じように見える里でも、どこかが違っていたりして…だから、時が少し、違うんだろうな、とか…」


そこで思わず言葉を途切れさせた私をイタチさんが見て、


「どうした?」
「あ、いや、あの…それで…みんな、目眩を起こしてるみたいなんですよね」


思わず苦笑いのように笑う私にイタチさんは少し毒気を抜かれたようにすると、目眩?と小さな疑問符を浮かべる。


「はい…里が、歪むんです」
「里が、歪む…?」
「この術は身体への負担が…多分、時空眼を以てして出来る術の中で一番大きい…だから多分、目眩を…」


自分の手のひらを見ていた私は、グッと握りこぶしを作ると一人で頷いて


「だから、もっと修行して体力やら何やらを鍛えようと思います」


マダラさんからの話だと、それまでに積み重なった身体への負担と、そしてこの術で、そこで死んでしまった人もいるらしいけれど…どちらにしても、まずはそこまで、生きるんだ。


「名前」
「はい、イタチさん」
「お前は、それでいいのか」


私はにっこりと笑った。


「とても幸せな未来です」


――この術を使って、たくさんの幸せが生まれるのなら…私は絶対に、術を使う。
それで歴史から消えることになったとしても、それは舞台上には関係が無い。
副作用、や、オマケ、なんかよりも小さい、些細なこと。
――それよりも、私は…


「イタチさんの望む、幸せな未来は…変わりは、ないんですね」


それよりも私は、イタチさんの望む、イタチさんにとっての幸せな未来が…。
イタチさんの口から理由や、根拠のようなものを直接聞いても、やっぱり…。


するとイタチさんの手が、私の頭に優しく乗った。
見上げると、イタチさんは少し微笑みながら私を見ていて


「前に、話をしたな…俺がまだ幼い頃から、戦争に出ていた話を」


頷くと、イタチさんは目を細める。


「戦争では毎日、多くの命が消えていく…仲間も、敵も、一族も…そして巻き込まれた、子供やらも」
「……」
「サスケは、そんな中で生まれてきてくれた命だった」


イタチさんは優しく私の頭を撫でると、微笑んで。


「だから、大丈夫だ。俺の未来は、幸せだ、名前」
「イタチ、さん」
「俺は、俺が殺されることでサスケが、幸せな未来を歩んでくれることを、信じているから」


泣きそうになって、唇を噛みしめる。

するとイタチさんはこぼすように笑って、私の頬に手をあてた。


「ほら、泣くな」
「ま、まだ泣いて、ません」
「ふふ、まだ、か」





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