「あ、ありがとう、ございました…ゼツさん」
「僕らも驚いたよ、やっぱり気になったから戻ってきてみれば、名前が木の葉の連中に囲まれてるんだもん」
「平気ダト言ッタノハオ前ダロ、名前」
「ほ、本当にすいません!」
再び目を開けた時には、そこにはもう、分かってはいたけれどナルト達は居なくて。
――それより、ゼツさんの言うとおりに時空眼で自分の時間を止めたけれど…もしかして私は、ゼツさんと一緒に土の中を通ってここまで…?
というか、ゼツさんはいつもどこを通って…い、移動手段がよく分からない。
けれど時空眼で自分の動きをとめられたからこそ、ゼツさんの不思議な移動手段に参加できたんだろうな、多分。
「ソレヨリ…オイ」
「は、はい、ゼツさん」
「イツマデ座ッテルンダ」
「あ、あの…すいません」
「もしかして名前、立てないの?大丈夫?時空眼で身体削っちゃったのかな」
「世話ノ焼ケル奴ダ」
するとゼツさんに腕を引っ張られて、また胸に飛び込んだかと思えばそのまま抱き上げられて。
慌てて恐縮すると、黙ッテロ、と言われた。
「す、すいません、本当…なんだか――」
「それに、ここに居る誰一人として、お前をもう、暁へ行かせたくはないんだよ」
「何度だって言うさ、名字名前。ここに居るこいつらは、お前を信じているんだ!結界など使わせずに、お前が自分から木の葉へ戻ってくるのを信じて、そして必死になってるんだよ!」
「けど、理由が分かってたって分かってなくたって、俺は、サスケも名前も、木の葉に連れて帰りてえ!」
「大事なやつがそんな中に居たら、引きずり出したいって、連れ帰りたいって思うことは、当たり前のことじゃねえのかよ!」
「行って、どうするっていうのよ!――また、ひとりで泣くの…?」
「なんだか、震えて…」
私はギュウッと、手を握りしめた。
「そういえばさっきは慌ててたからあまり気にしてなかったんだけど、木の葉の奴らで誰かが…トゲトゲ…?だか何だかって言ってなかった?」
「ゲホッ、ゲホッ」
「――アイツ、名前は、時空眼を持つ一族を誰もが知らないことを、望んだ末の結果だと言った」
「それがどうかしたの?シカマル」
――木の葉隠れ、火影室。
机に肘をつき、組んだ指の上に顎を乗せながら部屋を見渡すのは、五代目火影の綱手。
不思議そうないのに、シカマルは
「考えてもみろよ、アイツの一族が、文献や、記憶から消えることを第一に望んでいたなら、望んだことだ、ってそのまま言えばいい」
「そっか、なのに名前は、望んだ末の結果、って…確かに少し、変かもしれないわね」
顎に手をあてて頷いたいののいくつか横で、ナルトがカカシを見上げる。
「つうか、カカシ先生!なんでさっき、名前が連れてかれる時、俺に黙れって言ったんだってばよ!」
「あのねえ…どうせお前、名前がアスマを仮死状態にしたこととかを、言おうとしたんじゃないの」
「おう!で、それが?」
首を傾げたナルトにハァ、とため息をつくカカシ。
そんなカカシに疑問符までもを浮かべるナルトに、サクラが驚いて
「馬鹿、ナルトあんた…そんなこと言おうとしてたの?」
「サクラちゃん」
「私はてっきり、あの暁の変な奴に、名前は絶対連れ帰る!とか言うのかと」
「いや、それも言いたかったけど…って、ん?今のは良くて、さっきのは駄目なのかってばよ?」
首を傾げたナルトに、サクラもハァ、とため息をつく。
するとネジがナルトを見て、
「他の暁が居る前で、アイツが木の葉の誰かを助けた話をすることがダメなんだ、ナルト」
「他の暁が、居る前で?」
「――暁の掟では、裏切り者には死が与えられる」
「!」
「木の葉に加担しただけで裏切り者扱いされることは無いとは思いますが…わざわざ話すことも、危険ですからね」
リーの言葉に、ナルトが唾をのんだ。
「――しかし、名字名前が時空眼の持ち主だと確定すれば、私らの仮説も正しさを増すかと思ったけど…」
「それは、アスマが死んだと前提した上でのこいつらと、暁との戦いが、木の葉にとって最もいい未来だと、お前がその眼で視たからだろう」
「――あの子は飛段の、いわば墓の上で、泣いていた…暁のメンバーの死を、心から悲しんでいた」
「…名前は、そういう奴だ」
部屋の視線が、ナルトにそそがれる。
「名前は、長所とか…良いところを見つけんのが、すげえ、上手いんだってばよ」
隣でサクラが頷く。
「悪いところも、良いところに変換出来るっていうか…まあ流石に、犯罪者っていうことまでを良いふうに変換してることは…」
「誰かを殺したからといって…それが優しさや、思いやりに繋がらないとはかぎらないんです…!」
名前の言葉を思い出したナルトは、眉を寄せ目を伏せて、手を握りしめた。
「どういう意味だってばよ…名前」
111217