「名前…お前……本当に暁に、染まったのかよ…!」
――時間は少し遡って、数日前の、アスマを隊長とした小班と暁が交戦した日のこと。
「アスマを刺して…!」
「やめろシカマル!もう分かってんだろ、お前にも…!」
「名字名前は里を抜け、暁に入った犯罪者だ…!」
「――そこの、二人」
シカマル以外の、木の葉の額宛てをつけた二人の忍。
「そうです、あなた達です。――こっちに来てください」
にっこりと笑うと何か言おうとする彼らに、私は掴んだままのクナイを握りしめて、更にアスマ先生の心臓へと深く刺そうとする。
「申し訳ないですが、あなた達に拒否権はありません」
――苦々しげに歯を食いしばったり、唇を噛む二人が、歩いてくる。
そうして近くまで来た頃に、私は印を結んだ。
「――響遁 重音の壁」
シカマルに向けた手のひらを、横に少し払うと、シカマルの身体が周りの空気に圧されて、勝手に回転する。
そうしてシカマルの背中がこちら側に向くようにさせてから、また、印を結んだ。
「――響遁 私音の消失」
私はまた、手のひらをシカマルに向けて――そうして、口を開いた。
「とりあえず、何も言わずに私の手に触れてください」
シカマルに向けた手のひらを空に向けるようにして、前の二人にそう告げる。
少し動揺したような二人は、私がまた、アスマ先生の胸に突き刺したままのクナイに力を入れると、慌てて私の手を掴んだ。
「これで、いいのか…?」
「はい、――今、私に触れているあなた達二人の声は、シカマルには一切聞こえていません」
「声、が……?」
私はまた頷いて、
「ただし私から手を離すと、術の効果は無くなります。――これから先、絶対に私から手を離さないで下さい」
不安そうな、悔しそうな二人が頷いた。
私は変わらずに二人を真っ直ぐに見て、
「アスマ先生を、仮死状態にしました」
「仮死、状態……?!」
「この話が終わったら直ぐに木の葉へと戻って、綱手さまだけに診せてください。…そうですね……四十分後に、仮死状態を解きます」
「ちょ、ちょっと待て!」
「そして仮死状態が解けても、あなた達二人、綱手さま、そして…――紅さん以外には、アスマ先生が生きていることを…一週間程は、伝えないでください」
「待てって!初めから終わりまで何一つ分からねえ!お前は何がしたいんだ?!」
「私のことは関係ありませんよ。ただ、言った通りにしてください」
アスマ先生の身体を仮死状態に出来るということは、つまりアスマ先生の命を私が握っていると言っても、間違いじゃあないんです。
そう引き合いに出すと、二人は言葉を詰まらせた。
「それから……この件に私が関わっていることは、あなた達と五代目、それに紅さんは仕方ありませんが……誰にも伝えないでください。一週間なんてものじゃなくて、永遠に、です」
111106