舞台上の観客 | ナノ
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「#幼馴染」のBL小説を読む
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「そういえば」


外道魔像がある場所から戻ってきて、火の国内の、木々に囲まれた場所で、角都さんが飛段さんに何かを投げた。


「その治りかけの傷、みっともない。これで隠しておけ」


 それは、飛段さんの額宛てだった。


「角都、お前結構いいとこあんじゃねえか!」
「黙れ、さっさと行くぞ」
「ゲホッ…」
「おい、ちょっと待てって!角都、お前本当は結構俺のこと好きだろ、え?」
「ゲホッ、ゲホッ…!」
「それ以上何か言ったら殺す、ぞ…と、いうか大丈夫か、名前」
「ゲホッ…!あ、あの、お気になさらず…」


か、角都さんが、デレた…!
「……恐ろしいか?」
角都さんは心臓を数個も持たなければいけないような繊細な人で、傷つくということを私にすら聞いて、気遣うような、優しい人。
…なん、だけれど…やっぱり飛段さんの前ではいつも、ツンツンしている。


「ゲホッ…!」
「おいおい…大丈夫かよ!?お前の…時空眼?の負担は、もうおさまってたかと思ってたのによ」
「だ、大丈夫です…」


時空眼はもう平気なんだ…。
ただ、ただ…――角都さんが、デレた…!
嗚呼どうしてこうもツンデレのデレの部分の破壊力は抜群なんだろう。
これからまた木の葉との交戦があるというのに、HPが大幅に削られた気がする。


 「え」


すると角都さんが私の腰に手を回したかと思えば、そのまま荷物のように、私を自分の肩に担いだ。


「え、か、角都さん…?」
「無理はするな、休め」


片手だけで俵担ぎのようにされている状態のままハッ…!と息をのんで、私は慌てて手足を動かした。


「…おい」
「あ、あの、大丈夫です」
「…名前」
「本当に、だ、大丈夫です」


せっかく角都さんが飛段さんにデレたのに、それを私が受け取るわけにはいかな…!


「あまり暴れると、賞金首のように担ぐぞ」


――いつもと変わらない調子で淡々と言った角都さんの言葉に、後ろ手に、首の服だけを掴まれている、いつかの賞金首のことを思い出す。

飛段さんが大声で笑った。


「言うこと聞いといたほうがいいぜ、名前。角都はきっと、本当にやるからなぁ」
「…ひ、飛段さんが、言うなら…」
「けどよぉ角都、それじゃあ名前が咳したとき、苦しいんじゃねえかぁ?おんぶしてやれよ、おんぶ」
「あ、あの、本当に大丈夫です…!」





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