舞台上の観客 | ナノ
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「#年下攻め」のBL小説を読む
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「 二尾の封印のためにわざわざ呼び戻したのかよ!」


――外道魔像の下、二尾の人柱力、二位ユギトが倒れている前に、立っている。
 飛段さんの愚痴のようなものが洞窟内に響く中、後ろに誰かが下り立つ音がして、首で少し振り返る。


「――イタチさん…」
「 大丈夫か」
「あ…さっきの木の葉との戦いでは、時空眼は少ししか使ってませんから…」
「…そうか、ならば何故――震えている」


 イタチさんの言葉にハッと息をのんで、左手で自分の右手首を思わず握る。
 そうすると、震えていることが自分でも分かった。


「それに、今にも泣きそうな顔をしている」


頬に優しく触れられて――私とイタチさんは今、シルエットどうしの筈なのに、イタチさんの指を、私の涙が濡らした。


「 これから三日はかかる、覚悟しておけ」
「三日かよ!ったくよぉなげぇな、こっちは雨だぜ?」


 イタチさんは、他の暁の人達が話している様子を伺うと、少し声をひそめて、


「どうしたんだ」
「…、……前、に」
「 ああ」
「この眼が、視たいものを視れるわけじゃあないことを、言ったことがありますよね……視たい時間や、視たい場所は、私が選べるわけじゃない、って…」


イタチさんがうなずく。


「だから、場面の断片だけを視ても、その出来事がいつ、どこで起こるのか、分からないんです…!」
「名前…」
「…三尾捕獲への援護に行く前に、視たんです。…そこで場面と場面が繋がったから、いつ起こることだったのかが分かって、阻止出来ました」


震える手を、イタチさんが一緒に、握ってくれる。


「木の葉の奴らをもう少しで皆殺しに出来たんだぜぇ?無神論者どもに、ジャシン教の存在を知らしめてやるところだったのによぉ」


それでも、やっぱりまだ不安で、恐くて――私はギュウッと目を瞑った。


「あの時右眼で視ていなかったら、きっと――」



「さ、食え」
「…あの、アスマ先生、私に何か…用事ですか?」
「ん?ああ、まあな。…その、何だ、……お前さっき夕日紅と一緒に居たろ」

「なあ、名前」
「はい」
「アイツお前と話した後、すっきりした顔してたからよ…ま、よく分かんねえけど力になってくれや」



「アスマ先生は、死んでました」
















――――木の葉隠れ、病院。
手術中、とランプがついている部屋の中に、綱手、イズモ、コテツ、紅、そして傷だらけになったアスマが入ってから、三十分程が経ったころだった。


「!綱手さま!」


手術中、という赤いランプが消えて、部屋の中から眉を寄せている綱手が出てきた。

部屋の前の椅子に座って震えていたり、せわしなくグルグルと歩いていたシカマル、いの、チョウジが駆け寄る。


「アスマは…!先生は…!」


悲痛な表情で言うシカマルを、そしてチョウジといのをジッと見つめて綱手は――そうしてうつむくと、静かに首を横に振った。





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