――火の国にある、とある換金所前にて。
木の葉隠れの忍、アスマ、シカマル、イズモ、コテツの四人と、暁の飛段、角都が交戦していた。
「さぁてと、角都の方も終わりそうだ、こっちもボチボチ始めるか」
そして、交戦――とはいっても、シカマルはチャクラが少なくなり地面に膝をつき、イズモとコテツは、角都に首を掴まれ宙に浮いた状態…。
「じゃねぇとまた、儀式がタラタラ長いとか、言われそうだしなぁ」
口角を上げて舌なめずりをする飛段の前には、シカマル同様地面に膝をつき、そうして戦闘によって出来た傷によって、荒い呼吸を繰り返すアスマの姿。
「やっと…!やっとあの痛みを味わえる…!!テメェを殺す、痛み…!!」
準備を全て整え陣の上で、鋭い槍状に伸びた黒色の武器を自身の左胸に向ける飛段。
シカマルが、走り出す。
「アスマ…!!」
手を伸ばして、叫んだ。
「やめろぉおおお!!!」
――――シカマルの伸ばした手は、アスマには届かなかった。
自身の心臓に向けて武器を突き刺す飛段の手も、止められなかった。
「っ、…っ」
けれど、違う手――荒く息をしながら目を伏せる、名前の手が、肌に触れるまであと数ミリというところで、飛段の武器を掴んでいた。
――ドクン、ドクン…!…と、身体中に響く心臓の動き。
飛段さんの武器を左手の中に感じながら、私は飛段さんを見上げてにっこり笑った。
「これから二尾の封印だそうです。最優先で飛べ、と」
「…おい、おいおいおいマジかよぉ!あり得ねぇ!」
「そういうことなんで――」
と、私は一度目を瞑って、
(――時空眼!)
時空眼を使い、左目だけを開き飛段さんを捉える。
巻き戻しの作用によって、完成されていた飛段さんの儀式は消え去った。
「あ゛あ!もったいねぇ!――つうか名前!お前もお前だ、心臓貫通させるまで待ってくれても良いじゃねえか」
「すいません、尾獣の封印ですから…」
それに――と見上げると、飛段さんは首を傾げる。
「痛みが欲しいなら、後でたっぷりと貰えますよ」
にっこりと笑うと、飛段さんは何故か身震いした。
そして舌なめずりをすると、上半身を軽く曲げて私に顔を寄せる。
「へえ…名前ちゃんが、…どうしてくれんの?」
「それは……角都さんに聞かないと…」
「ハァ?!なんで角都!お前じゃねぇのか!」
「な、なんで私ですか…!」
「何をしてるんだお前らは」
すると、飛段さんの向こうから角都さんが歩いてきて――少し目をやると、首をおさえながら咳き込んでいる木の葉の忍二人と、呆然と立ちすくみながら私を見るシカマルがいた。
「尾獣の封印をするんだろう、はやく行くぞ」
「チッ、あのクソリーダー、今度呪ってやろうか、ったくよお」
「 それより、名前」
「はい、角都さん」
そうして角都さんを見上げると、見定めるように目を細めた角都さんと目が合って、心臓が一度、強く鳴る。
「まさかとは思うが…元居た里だからといって、情があるわけじゃあ、ないだろうな」
――裏切り者には、死を。
「――まさか」
角都さんの目を、真っ直ぐに見上げながら言う。
そして振り返ると膝を折って、アスマ先生と視線を合わせた。
「そんなこと、あるわけありませんよ」
ジッとアスマ先生の目を見つめて。
アスマ先生も、同じように私を見つめ返して。
アスマ先生を地面に倒して上に乗ると、私は、クナイを振り上げた。
「名前…!!」
そうして聞こえたシカマルの声に歯を食いしばりながら――アスマ先生の心の臓に、クナイを突き刺した。
111026