――木の葉を抜けてから、およそ二年が経った。
そして今、俺のまえ、崖の下には、その二年ぶりに会う、かつての班のやつがいた。
「サスケ、くん…」
「サスケ…」
サクラと、ナルト、――少し蘇る、かつての木の葉での、ぬるい日々。
けど、違う点がある。
それは、俺の穴埋めかは知らないが、嘘くさい笑顔でベラベラと喋る、男がいること。
それに――、
「なら――、…カカシもいるのか?」
カカシが居ない。
そして……アイツも――、
「カカシさんでなくて残念だけど、僕が代理だ。 これからカカシ班は、君を木の葉に連れ帰る!」
「――カカシ班か…」
俺は微かに眉を寄せた。
そうして、心臓の奥の部分が少し強く動いたのを無視して、アジトから、その周辺にかけての気配を探る。
――ここら周辺にいるのは、俺の前にいる、こいつら四人だけだ…。
カカシの代理だとこの男が言わなければ――まだ、カカシと共に、アイツがいないわけが理解できた。
カカシ班じゃないのなら、居なくても別に、不思議なことじゃない。
けれど確かにこいつは今、カカシ班だと言った。
…そして、アイツの代理だ、とは誰も言わないし、何よりさっき探ったとおり、ここら周辺に他の気配は無い。
…けど、俺にはもう、関係、ない。
俺は、里を抜ける。
アイツが誰かを庇って怪我することも、もう、俺は――。
里を抜けた、あの日。
思った、こいつは今のままいけば、死んじまうんじゃないかと。
自分のことは全くと言っていいほどに考えないくせに、誰かのこととなったら、それこそ命をかけて護る。
「他人のことをお前が考えてんなら、…誰かがお前のこと考える必要あるだろ」
それでも俺は、里を抜けた。
つながりを、断ち切って。
「――話は終わりだ。ナルトとサクラ、君たちの手前、彼に手荒な真似はしたくなかったが……悪いが、もう本気でやるよ」
ナルト達と交戦して、俺は再び、崖の上へと戻る。
眉を寄せながら俺を見あげてくるナルト、サクラ、そしてサイやヤマトと呼ばれてる奴らを見下ろして、俺は刀を鞘に戻した。
「――ナルト、サクラ」
家族、一族という縦の大事なつながりを失って…――けれどまた、班や同期なんていうつながりが出来て。
けど俺は、それらのつながりを断ち切って里を抜けた。
今更それをどうこうする気なんて、毛ほども無い。
覚悟なんて甘いものじゃないが、揺らぐ気もまるで無い。
「――名前はどうした」
けれど、俺の言葉に目を見開くとうつむいて、顔を歪めるこいつらの反応に――確かに心臓をわしづかみにされるような感覚が、俺を襲った。
「名前ちゃんなら暁よ」
すると、後ろから大蛇丸がそう言って。
俺は目を見開き、大蛇丸を振り返った。
111010