舞台上の観客 | ナノ
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「ゲホッ、ゲホッ…!」


――林の中で、ひとり。
時空眼を解くと、途端に身体を襲ってきた負担。
 立っていることは目眩によって無理で、木に背を預け、ほとんど寝ころがるようにしたまま咳をする。


「ハっ…っ、は…」


ドク、ドク、!
速く鳴る心臓が。
そうして頭を中心に、身体を包む疲労感が、辛い。

けれど、どこか遠くから聞こえてきた歓声に笑った。


「ぁ、はは…すごい、や。こんなに、離れてるのに」


――それから数分経って治まってきた体調の悪さに、私はゆっくりと深く息をつく。
そうして立ち上がって、林の向こうへと歩いていった。

――比較的高い丘の上のようなこの場所からは、遠くに見える開けた場所から、砂忍の格好をした人やらが大勢で砂の里の方へと帰っていくのが見える。



「ぼくが、理由は分かんないけど、みんなにきらわれてるから…」
「…かなしいね、みんなの本当の思いは伝わってない…。だからツンデレってややこしいな!」



――時間が経てば、人も、土地も変わる。


 砂隠れの人達の属性とも言えるツンデレが変わったみたいで、よかったよ。
…いや、それとも今は、デレている状態なのかな…。
まあどちらにしても、私が砂の里にお邪魔させてもらっていた小さいとき、少なくともデレは見られなかったから…――やっぱりよかった。



「私はもう、何も守ることが出来ないで、守られるだけだった弱い存在じゃない…。――守りたいものは、この手で守るわ!」
「名前が言ってくれたとおり――強くなったもの!」



――時間が経てば、人も、土地も変わる。
…けれど、変わらないものも…確かにある。



「里とかは、関係ねぇってばよ。名前、お前は俺の、――やっと出来た、大切なつながりだから…!」



 私は、いつから……ナルトはいつから、私を…――。




「名前、大丈夫か」




すっかり意識の奥深くに入りこんでしまっていた私は、後ろから聞こえた声に、ハッと顔を上げて振り返った。


「時空眼の影響で身体にかなりキたか?ここまで近くの気配に気づかないのは、危ないぞ。砂の奴らも、それに木の葉の数人も、遠くはあるがまだ同じ一帯にいる」
「…はい、すいません」
「フフ、俺は謝ってほしいわけじゃない。お前が心配なのと、それからお前が無事なら、それでいい」


私はにこっと笑う。


「もう大丈夫ですよ、ありがとうございます」


そうして再び、前を向いた。

 我愛羅やナルト達はもう、見えなくなっていて。


「――久しぶりに会って、どうだった。木の葉に『帰り』たくなったか?」


私は思わず眉を下げて笑う。


「帰るなんて…私が木の葉の忍じゃないのは、アナタが一番よく知っているじゃないですか」
「フフ、それもそうだな…なに、言ってみただけだ」
「…それに…」


――時間が経てば、人も、土地も変わる。
…けれど、変わらないものも…確かにある。


「私は暁を抜けることはしませんよ。尾獣を共に集めて、そうして狩ります」


私の決意はずっと、時が経っても――変わることはない。


「 ああ、分かってる。それに信頼も信用もしているさ、名前。――さあ、俺はこれからデイダラと組む。お前は多分…飛段と角都だな」
「はい、分かりました」
「まあ、俺ならばいつ、どこででも会えるからな。フフ、寂しがることはない」


冗談めかして言った言葉に、笑う。


「じゃあ、私は行きます」
「――またな、名前」


 そうして時空間忍術で消え去った――マダラさんを見送ってから、私は歩き出した。





111009