――再び目を開いたとき…俺はまた、白く、何もない世界にいた…。
「――我愛羅…」
けれど、今度は直ぐに、俺の名を呼ぶ声が聞こえた…。
「我愛羅」
また、俺の名を呼んでいる…この声が誰なのかを、俺は知っている…。
これは、この声は――
「――解――」
すると、先程の声とはまた違う声が聞こえた。
今の、声は――。
そして次の瞬間、白い世界に俺の身体は包みこまれて――
「――我愛羅…」
「――…ナル、ト…」
眩しさに目を閉じてから、そうして再び目を開けた世界には――色があった…。
ナルトの金の髪の毛や、空に広がる青い色…。
そうして色々な眩しさと共に、たくさんの、喜びに満ち溢れた声が耳に入ってくる…。
「よかった…!本当によかった、風影さま…!」
「バッカお前、なに泣いてんだよ!」
「そうだよ!俺らの憧れ!風影さまがそう簡単にやられる筈ねぇだろ?」
――俺は思わず、自分の目を疑った。
視界にうつる光景が信じられなくて……呆然としているだろう俺に、ナルトが笑う。
「なにボーッとしてんだよ、我愛羅!みんな、お前を心配して集まったんだってばよ」
「…俺、を……」
――手を叩いて、喜んでいる者がいる…。
涙を流し、喜んでいる者がいる…。
「生きてて、よかった…!」
俺が、生きていることを…――喜んで、いる…。
「――化け物!」
…一尾を身体の中に封印されたため、里の人間から化け物だと言われ、忌み嫌われ…。
そして実の父にでさえ、殺されようとしていた…そんな、俺の生を喜んでいる者が、こんなにも、いる…。
心臓の辺り――心が、とても暖かくなったような気がして、目を細めると、また、ナルトが嬉しそうに笑った。
「――我愛羅…」
「…チヨバア様」
すると俺のまえに、チヨバア様が眉を寄せながら立った。
「お主は、尾獣を抜かれた筈なのに、生きておる」
「――――……」
「!チヨバア様!今から、ここに集まった医療忍者全員で治療をしながら砂まで戻れば、毒もまだ間に合うかもしれません!直ぐに…!」
「いいんじゃ、サクラよ」
ナルトの班員の、春野サクラが眉を寄せる。
「やらなければならないことの、為ですか?それなら治療をしてからでも…!」
「そういう意味の、いい、じゃあないんじゃよ」
「、?」
「やらなければならないことは、先送りにされてしまったからのぉ…」
「――新しい世代に何かを残す、伝えることは、まだ先でも大丈夫ですよ」
チヨバア様は少し笑うと、自分の手のひらを見つめる。
「わしの中の毒は、もう消えた…じゃから、大丈夫じゃ」
「え…?!まさか、そんなこと…!いったい、どうして」
チヨバア様が、ゆっくりと目を閉じる。
――そうして再び目を開いた時、真っ直ぐに、俺を見た。
「我愛羅、わしはその理由が、お前が尾獣を抜かれても死んでおらんわけと、どこか関連することがあると、踏んでおる」
「――――……」
「…?い、言ってる意味が、よく分からねぇってばよ?」
首を傾げたナルトに、チヨバア様が楽しそうに笑う。
「まぁまだ、何も分かっておらんからの。真実かどうかも分からないことを余計に話すのは危険じゃ、やめておく。じゃが、」
「――真実を、わけを調べる為に……里に戻ってから色々と調べよう、…チヨバア様」
少し、目を丸くしたチヨバア様が、うむ、と嬉しそうに笑いながら、頷いた。
「じゃ、そろそろ砂の里に帰るじゃん」
「ああ、そうだな。里の奴らも待ちわびてるだろう」
カンクロウとテマリの言葉に、各々が立ち上がり、歩き出す。
俺はナルトに支えられて立ち上がり、そうして――
「――ナルト…」
「ん?なんだってばよ」
「お前は…――」
――…いつか…いつか俺は、信じられるようになるのだろうか…。
そしてそうなった時、そんな強さを持てた時…名前はまだ、俺の傍に居ようと、思ってくれているだろうか…。
「お前は名前のことを、まだ追いかけ続けるか…?」
ナルトはにっこりと笑った。
「――おう!」
「…そうか…」
「ごめんね、我愛羅…」
「――解――」
そんなナルトに支えられながら歩き出し、俺も、笑った。
「俺もだ…――」
111009