舞台上の観客 | ナノ
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テーマ「推しとの恋」
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カカシ先生とは違うルートで、爆音のした方へと向かう。
その時に耳を澄ませてデイダラさんの位置を確認し、茂みに隠れているデイダラさんの元へと行った。


「――デイダラさん」
「名前か…わりぃな、せっかく、はたけカカシを足止めしといてくれたってのに、少し失敗しちまったぜ」


静かに言葉を交わす私達の視線の先は、ナルト。
洞窟のときと同じように、赤色の、妖狐の衣が出てきてしまっている。


「デイダラさん、九尾の捕獲は諦めて、ここは一旦引きましょう。木の葉のほかの忍が向かってきている音も聞こえます。――デイダラさんは、風影との戦いで片腕を失っていますから、ここは私が足止めを」


デイダラさんが舌を打つ。


「さっきから色々わりぃな名前、うん。――それで、どこで落ち合う」
「…そのこと、なんですけれど……私はここから暫くは、違う二人の所へ行きます」


不思議そうに首を傾げるデイダラさんに、言うのが辛い。

けれど私よりもきっとずっと、デイダラさんの方が辛い。

――眉をキツく寄せながら目を伏せて、手を握りしめた。




「――サソリさんが、死にました」



ナルトがいる方で、木が鳴る音がして、カカシ先生も到着したことが分かった。


「…デイダラさんのノルマは今回で終了……たとえもし新たな誰かがデイダラさんと組むことになっても、きっと他の二人組の方が早く、尾獣を狩ることになると思います」


デイダラさんの目は見ないまま、見れないままに、小さい声で話を進めていく。


「私の役目は、尾獣狩りのサポート……なので、デイダラさんとはここで一旦お別れです。…また新らしい誰かと一緒に尾獣を狩るときに、会うことになります」
「――分かった。じゃあ、今は行くけどよ、うん」


歯切れの悪いデイダラさんに、さらに私の顔が歪む。


ど、どうしよう、デイダラさん、もしかして…な、泣いているのかな。
そりゃあ、ツラいよね…。
二年間かそれ以上、芸術コンビとして行動を共にしてきた相方が…――。


「名前、お前は二年経ってもまだ、暁には馴染めてねぇなあ、うん」


すると唐突に話題が変わったので、疑問符を浮かべながら、デイダラさんを見あげる。

デイダラさんは少しだけ、眉を寄せていた。


「暁に入った以上、クールに振る舞えっつったろ、うん。旦那が死んだくらいでそんな悲しそうな顔すんじゃねえ」
「…!デイダラ、さん…」
「大体、笑えんだろ。小娘とババァに、サソリの旦那が殺られたんだぜ。なにが後々まで残っていく永久の美だ、とっとと死にやがって」


ハッ、と嘲笑うデイダラさんに、私はこころの奥が、ぶるぶると震えるのが分かった。


――デ、デイダラさんが哀しいのを我慢して、無理矢理にでも笑っているのに…!
私が哀しい顔をするわけには、いかない!


デイダラさんの男気に感動しながら、けれどそれすらも悲しくて、きっと無理矢理な顔で、私も笑った。


「つ、次にデイダラさんに会う時は、暁に相応しいようクールになっておきます…!」
「…ったく、無理矢理に笑いやがって、うん。――やっぱりおいらは、お前が暁に入った理由が全然分かんねぇな」


まぁ、次会うときを楽しみにしてるぜ、うん。
――と、そう言ってデイダラさんは、姿を眩ませた。












――わざと音を消すこともしないで、地面を踏みしめて、四本目の尾を出しているナルトへと近づき歩いていく。

理性、思考はもう無いのか、ナルトはまるで獣が威嚇するように喉を鳴らしながら、私を振り返る。
瞳は赤く、頬の三本線は存在を増して、歯は少し尖っている。


「名前!駄目だ!今のナルトに近づくな…!」


洞窟のときと同じように、封印の札をナルトにつける機会をうかがっていたカカシ先生が声を上げる。

ナルトが声に反応してカカシ先生を見あげたのを見て、私は右の瞼を下ろした。


「ぅ、あ゛…」


左眼の、巻き戻しの作用によって、九尾がナルトの身体の中へと戻る。
ぐらりと傾いたナルトの身体を、カカシ先生が支えた。





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