カカシ先生は眉を寄せていて、哀しそうに、見える。
私は、心臓が一度強く、動いた気がしたけれど、特に気にすることはしないで、再び、右の瞼を下ろした。
そうして左眼でカカシ先生の瞳を見つめて数秒――、万華鏡写輪眼は再びもとの写輪眼へと戻った。
「まさか…さっきも今も、お前がやったのか、名前」
「――その眼は使っちゃ駄目ですよ、カカシ先生」
「俺の質問に答えろ!お前のその眼は、なんなんだ…!」
「…さっきも言ったように、カカシ先生が知る必要は、」
「まさか、暁の奴らに無理矢理させられたものじゃないだろうな…!」
お互いに話が進まない。
私は数秒黙ってから、口を開いた。
「別に、そんなものじゃありません。――それに第一、私は暁の一員です。たとえばもし、暁にそう要求されたとしても私は、その命を受けていました」
「――名前、何でだ……どうして里を抜けたんだ…!」
「…………」
「どうして、暁なんかに身を染めた…!」
私は少し眉を寄せる。
「さっきから何度も言っています、カカシ先生に知る必要はありません。それに私も、答える気はない」
「……そう、ならいいよ。木の葉に帰ってから、たっぷり聞かせてもらうから」
「――木の葉へ行くつもりはありません」
木の葉へはもう、戻らない。
帰るつもりはない。
なにより、帰る、という言葉は少し、私は違う。
私は、木の葉の忍じゃないから。
――カカシ先生は少し雰囲気を緩いものにしたかと思えば、頭をかいてにっこりと笑った。
「じゃあ名前、木の葉に帰ってきたら、俺のこの口布の下を見せてやろう」
「――――!」
なん…だと……?
カ、カカシ先生の口布の下が、見られる……?
そ、そんな魅力的というか、惹かれる文句…!
い、いやけれど、その為に木の葉へ戻ったのなら、その時は確かに幸せだろうけれど――その後の、大きな苦しさが、回避できなくなってしまう…。
カカシ先生の口布の下が見られるなんて、本当に、魅力的だけれど…――。
ギュウッと眉を寄せると、カカシ先生は哀しそうに目を細めてため息をついた。
「冗談も通じないようになっちゃったか…」
――って、じょ、冗談か!
思わず眉を下げると、何故だかカカシ先生は、自分から言ったことなのに目を見開く。
「名前――」
そして私の名前を呼び――かけたところで、デイダラさんとナルトが向かっていった方から、爆音が響いた。
111007