舞台上の観客 | ナノ
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「しかしよ、名前。お前、芸術にはとことんなくせに、言葉は結構グサグサあいつらの心抉ってくな、うん」
「そうでしょうか?」
「ああ、今だって、お前はサソリの旦那を気づかった。アイツらの様子からしたらそれは、結構な衝撃だろうよ」


デイダラさんは愉しそうに笑って、下を見る。
洞窟から出て私たちを追ってきたのは、瞳を赤くさせたナルトと、そんなナルトを追ってきたカカシ先生のふたり。


――よし、大丈夫だ。
今日、ここで、このルートの展開ならば――。


「あんな小娘とババァだけで、サソリの旦那の相手がつとまるかな?うん」


デイダラさんがそう、挑発するように言う。


「先生は、サクラちゃんの方へ行ってくれ。 我愛羅は、俺が助ける!!」
「そうもいかないでしょ!お前、さっきの自分の状態をもう忘れたのか」


下で交わされている会話を眺めながら、私はちらりとデイダラさんを見やった。


「時間はそれほど稼げないと思いますが――私がカカシ先生を相手しましょうか」
「…まあ今の状態じゃ、九尾がどっちを追うのかは分からねぇ。ここはとりあえず、九尾を引き付けながら、はたけカカシと分断させる、うん」








「って、さっきは言ったけどよぉ、うん」
「はい、デイダラさん」
「写輪眼のはたけカカシ、名が知れてるだけあって流石に一筋縄じゃあいかねぇな、うん。しつこすぎるぜ」


――ナルトからカカシ先生を引き離す、という作戦を決めてから数分、鳥で飛んでいた私達は、もうかなり、洞窟からは離れていた。

酷く面倒くさそうに眉を寄せて顔を歪めるデイダラさんに、思わず笑う。


「…!これは…!」


けれど次の瞬間、デイダラさんの右腕辺りの空間が歪み始めたのを見て、私は咄嗟に、眼でカカシ先生をとらえた。
そうして右の瞼を下ろして、左の眼だけで、カカシ先生の瞳――万華鏡写輪眼を見つめる。

時空眼の巻き戻しの作用により、万華鏡から、オリジナル、もとの写輪眼へと、カカシ先生の眼が戻っていく。
そしてそれに伴って、空間の歪みが直った。


「――っ、デイダラさん、大丈夫ですか」
「あ、ああ…わりぃな。――今のは写輪眼の、瞳術か」


ぎりっ、と歯を食いしばるデイダラさん。
下には、少し驚きつつも、再び万華鏡写輪眼を出そうとしているカカシ先生。

 私は立ち上がり、音の波動で空間に膜をつくり、そうしてその上に足を乗せた。


「やっぱりカカシ先生は私が相手します、デイダラさん」
「…それじゃあ風影で、九尾を引き付けねぇとな」


笑うデイダラさんは、我愛羅を一旦、鳥の口から吐き出して宙に投げだした。


「!我愛羅!!」


スピードを上げ我愛羅の元へと向かうナルト。
その数メートル上空で私は、ナルトとは反対方向に向かって空の上を駆け出した。


「!名前…!」
「九尾!今は名前は放っておけよ、それより危ねぇのは風影のほうだぜ?うん、せめて死体は持って帰りたいだろ」
「テ、メェ…!!」


私を振り返ったナルトが、けれど再び我愛羅へと向かっていったのを見ながら、そうして私は、音の波動を解いた。

空に出来ていた膜がなくなって、足場を失い、重力にともなって落ちていく私は――


「――名前…」


カカシ先生の向かいへと、着地した。





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