「どうして名前は、私達が名前の任務に参加することを…その、良しとしてはくれないんだ?」
学園への帰り道――やっぱり待ってていてくれた五人と歩いている中、三郎の言葉に思わず肩を揺らす。
「今だから、じゃなくて前から…私達が初めて名前の任務に着いていった時も名前は拒否、しただろう?」
「それは…結局ハチにも、怪我をさせて…」
「あの時にも言っただろ、名前!俺は名前を護って怪我したんだから、護れて嬉しかったぜ」
少しまだ、私との会話にぎこちなさを含めながらも笑うハチに、眉を下げる。
「なっ…?!ご、五人とも、着いてきてたのか?!」
「どこ行くんだよ?」
「学園長先生のお使い?」
「あ、いや、…そう。でも別に着いてこなくても…」
「嫌だ、一緒に居る」
「それにしてもこんな夜中にお使いって、学園長先生も人使い荒いねえ」
「う、うん…ねえ、やっぱり着いて来なくても…――」
「――あの任務が初めてじゃ、ないんだ…みんなが、私の任務に着いてきてくれて…そして、怪我をしたのは…」
目を丸くしたりして驚いている五人から、少しの気まずさで目を逸らす。
「三年生のとき、夜に任務に行こうとしたら、気づいていない間に、みんなに、つけられていて…」
「もしかして、学園長先生のおつかいだと言っていた、アレ、なのか?」
「うん、多分…」
頷いた私に、そして三郎の言葉に、ほかの四人も心当たりがあったのか、
「じゃああの時のことも、任務だったんだ」
「確かに私達は怪我をした、が、じゃあもしかして、あの時の山賊は…」
兵助の問いに、また頷く。
「あの頃はまだ、今みたいに一人で、山賊の討伐とかの任務はさすがに下されなかったよ。だから忍者隊の人たちが主で、私はほんの、手伝いや、後始末の役だった」
林の中を抜ければ道は開けて、まだ遠くにだけれど、学園が小さく見える。
「あの時私達が鉢合わせた山賊は、その襲撃から逃れてきた数人で…私はすぐに、そのことが分かった…でも今考えれば、私はとても、馬鹿で…あの時は任務のことを考えて、とっさに戦闘体勢に入ったんだよ、みんなが、居たのに…急に鉢合わせた子供に、山賊から何か仕掛けてくる可能性は、低かったのに…」
「もしかして名前、それがトラウマみてえになってるのかよ…?」
ハチの言葉に、少し傷を受けた私と同じように血を流すみんなの姿が思い出される。
確かあの時私は、みんなを巻き込んでしまったことに泣いて、そして逆にみんなに、慌てながら宥められていた。
「トラウマ、かどうかは、自分でもよく分からないんだ…だけどもう二度と、あんな光景を見たくないって思ったことは、確かかな…」
「そんなの、俺達だって同じだよ、名前…!」
すると勘ちゃんが声を荒げたから、思わずビクリと肩を揺らす。
足をとめて、振り向くと勘ちゃんは泣きそうに顔を歪めていた。
「俺達だって、あの時…!俺達が幻術なんかにかけられて、名前を一人で戦場に行かせて…!そして血塗れになった名前を見たとき…!もう絶対に、二度と、名前をこんなふうにはさせないって、自分に誓った!」
私は思わず、嫌だ、と震える声で漏らしながら後ずさっていて。
「嫌だ、やめて、くれよ…私は学園を、抜けるんだ」
涙が出てきそうで、瞬きをする。
歯を食いしばって、けれど五人から目を逸らすことはしない…逸らせない、にも似ている。
「学園を抜けさせなんて、させたくない!」
「やめて、くれよ…!」
離れたくなくなる…!
「好きなんだ、名前が!」
すると腕をつかまれ、引かれて、言われた言葉に、私は目を見開いて勘ちゃんを見上げた。
111226