優しい世界で生きなさい | ナノ
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「それじゃあ、手伝ってくれて本当にありがとう」


学園に着いて私は五人にそう言うと、早々と自室に戻ってきた。
いつもの、白梅の香を焚く。
任務の黒の忍服を脱いで押し入れに半ば突っ込んで、髪をしばる紐をほどくと寝着に着替える。


血の匂いが、消えない。


香を置いてある机の前に座ると膝を抱えて、腕に顔をうずめた。

まとわりつく血の匂いの向こう側に少し、白梅の香りが漂っている。


血の匂いが、消えない。
服も着替えて、忍具も、刀も、任務で使ったものは全部、押し入れに突っ込んだ。
返り血は川で落とし終えたし、石鹸も使った。
なのに、なのに…どうして、血の匂いが、消えないんだ。


香で血の匂いをつかまえて、閉じ込めてほしくて、もっと近くに置こうと顔を上げて手を伸ばす。


「…!」


けれどその伸ばした手を、再び赤い液体が濡らしていて。
びくりと揺れた拍子になのか、また一瞬の間で、その赤色は消えた。


血は、ついていない。
ついていないのに…なんなんだよ、これ…。


私はまた、膝を抱えて、そして腕に顔をうずめた。
自分の寝着を、強く、握りしめて。


血の匂いが、消えない。





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