「あの戦から生き残った奴だとは聞いていたが…まさかお前か」
五人が去って、私が人物の首を斬って少ししてからやって来た人は、私と同じく忍者の格好をしているけれど、見たことのない人だった。
「ああ、まあ、覚えてねえのも無理はねえか。お前、ほとんど意識なかったし」
「…もしかして、鎌足さん…ですか?」
「おっ、そうそう。なに、土井先生から聞いた?」
はい、と頷いた私は、鎌足さんに向かって頭を下げる。
「あの時は助けていただき、ありがとうございました」
「ふふ、いやいや、気にするな、可愛い後輩を助けたまでだ」
「…じゃあ、鎌足さんは」
「そ、俺もお前と同じ、忍術学園の生徒、だったんだぜ」
にやっと笑ってひらひらと手を振る鎌足さんの指がひとつ、無くて。
私の視線に鎌足さんは、ああ、と自分でも手を見ると
「ま、指ひとつ無くしたところで、また新しい城に雇ってもらえるならイイもんさ」
「…鎌足さんの、つかえていた城は」
「あの戦では勝った、が、損害は大きくてな…くだされた任務を全うするだけの俺ら忍者にはあまり、忠誠心なんてものはねえからな…辞めた」
鎌足さんは笑みを浮かべたまま私を見ると、
「お前ンとこの城主は、あの戦で生き残った俺を高く評価してくれてな」
私は少し、ひきつったように息を吸う。
「だから俺と同じくお前にも褒美をやると…城主はそう、言っていたぜ」
そして、重く動く心臓の苦しさに気づかないふりをしながら、私は口を開くんだ。
「ありがたき、幸せです」
「――それで、今回の任務の…お願いいたします」
地面に置いたままの布にくるんだものを見て言うと、鎌足さんは渋い顔をして、それを、背負っていた箱に入れる。
「そういえばお前、名前、だったか…学年は」
「五年になります」
「そうか…キツい仕事回されて、大変だな」
「…キツいとは、その…」
鎌足さんが背負い直した箱を見ると、鎌足さんは頷いて
「首斬るのなんか、絶対にイイ気持ちじゃねえだろ」
心臓が鳴って、何かがせり上がってきそうで、歯を食いしばる。
「私は」
首を斬るときの光景が蘇ってこないように、私は、鎌足さんの目を真っ直ぐに見た。
「私は…忍者ですから」
失礼します――そうまた礼をして、私はその場を去っていった。
111210