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心の臓が、重く跳ねる。
その苦しさに、五人から目を逸らしたい、のにどうしてだか、逸らせない。

五人は私を見て、郁を見て、そうして繋がれた手に視線をやるとギュウッと眉を寄せて睨みつけるようにする。


「私達に、なにか用?」
「名前にだ、夜の、任務のことで。学園長先生からの言伝てでもある」
「学園長先生、から…?」


三郎が頷く。

私は固い表情のまま、少し郁を振り返って


「じゃあ郁、私はこれでね」
「あ、うん、ありがとうね、名前さん」


ううん、と笑顔をみせた私は郁にお土産の袋を手渡して――その背中を見送ってから、うかがうように五人を見た。


「それで、言伝てって…」
「うん、あのね…名前の任務に、僕たちも着いていけ、って…」
「名前はまだ怪我が完治していないし…その右目の怪我で任務をするのは、難しいだろう」
「それに…」


口ごもるハチに、少しだけ首を傾げる。

ハチは歯を食いしばるようにすると、真っ直ぐに私を見て


「それに名前が、任務で学園の外に出てそのまま、戻って来ねえかも、しれねえし…」
「…怪我が治るまでは、ちゃんと、居るよ…」


治る、まで。
と乾いた声で勘ちゃんが言った。


それに今の状況じゃあまだ、郁から離れるわけにもいかない。
世話役という役目で、そして尚且つ同じ境遇の郁を、まだこの短期間で離れることは出来ない。


「前にも言ったように夜は私は任務があるから、学園に帰ったら色々と用意をしなくちゃいけないんだよね」


「――任務は、しばらく無いんだ」


私は五人の目を見ないままに


「怪我があるから、しばらく任務は、下されない。――任務が入ったら、言うよ…」


私はそのまま五人の横を、通りすぎた。
――心臓がまた、重く跳ねて…苦しくて、泣きそうになった。









――キュ、と小気味いい音を立てて左腕の包帯を縛り終えた私は、上衣をはおり、右の袖にクナイを仕込む。
うるさく鳴る心臓の音には気づかないフリをして、自室の襖を静かに横に引いた。


――また、命を殺す。
確実にしとめなければいかないのは一人…だけど、その標的をしとめる為に、いったいどれほどの命を、今夜私は殺すんだろう。


門の前まで来た私は、思考を振り払うように、軽く首を横に振った。
そして学園の塀を乗り越えて、地面に降り立つ。


「――どう、して…」
「…私達は学園長先生からの言伝てを確かに伝えた筈だ、名前」


「うん、あのね…名前の任務に、僕たちも着いていけ、って…」


――すると後ろの木の影から現れ出てきた五人に、私は、手を握りしめた。





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