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うぁあー…眠い。
けどさっきから聞こえる「ジュンコー!」って声で深く眠りに入る事が出来ない。
大変だよなぁ委員会って。


がさり
「ジュン…っ」
「…?」
「名前先輩…!」
「…孫兵」


するといきなり寝転がっていた場所を隠す木が揺れて、孫兵が顔を出した。


「……」
「……」
「あー…ごめん、ジュンコなら見てないよ」
「……」


なんだこの沈黙。
まあもう慣れたけど。
ていうかジュンコは居ないって言ったんだけど…探しに行かなくていいのか?
じっと見られてるけど…一緒に探しませんかって事か?


「私も手伝おうか?」
「え…」
「ジュンコを探すの」
「………」
すとん。
「…?孫兵?」


私の隣に腰を降ろした孫兵はじっとつり目の瞳で私を見て、ぽつりと口を開いた。


「名前先輩は…」
「うん?」
「名前先輩は…蛇とか虫とか、嫌じゃないんですか」
「…?」
「本心を答えて下さい」


えっと…本心って言われても…別に苦手だとかは思わないよなあ、うん。
噛まれたりとかしたら流石に、あーこれやばい?ってなると思うけど。


「ていうか本心って。孫兵に嘘ついて何か得があるのか?」
「…!…それはその、僕の気を引く為に言う奴等が居て…」
「気…」


ああ、理解。
孫兵の事を狙ってる奴等が孫兵に気に入られたいが為に嘘をつくって事ね。
…って事はアレか、私は孫兵を狙ってると思われてるのか。
や、やばいな、誤解を解かなきゃ駄目だこれは。


「なぁ孫兵」
「………」
「私は孫兵を可愛い後輩だと思っているよ」
「…っ」
「だから、孫兵の気を引こうとか思ってない。孫兵に嘘をついても私に得はないから、大丈夫だ。だからほら、ジュンコを捜しに行こう」


すっと手を差し出す。
孫兵はぐっと悲しそうに眉を寄せると、きゅうっと指を絡めてきた。


え、なんでそこで手を握、


「…なんで…」
「…孫兵?」
「なんで…気持ち悪い奴等はどうでもいいのに、なんで…名前先輩は…」
「は?気持ち悪い?」
「先輩…」


なんだよ孫兵どうしたんだ。
なにこの状況。
ジュンコはいいのか。


「――はい、そこまで」
しゅるり
「ジュンコ…!……竹谷、先輩…」
「あ、ハチ」
「木の陰で寝てた。ったく、これからは気を付けろよ」
「…」


しゅるりと孫兵の首に巻き付いたジュンコ。
その先にはハチが居た。
すりすりと孫兵に擦り寄るジュンコに、孫兵は嬉しそう。


「良かったな、孫兵」
「…はい」
「ほら孫兵、もう夕飯の時間だから戻れ」
「……はい」


名残惜しそうに指を離して駆けていった孫兵にひらひらと手を振る。
ハチを見上げると、ため息をついて腰を降ろした。


「いい先輩だな、八チは」
「……名前さ、」
「うん?」
「隙有りすぎ」
「…は?」
「あーもう」


なんだなんだ何の話だ。
さっぱり分からないぞ。
ていうか最近ハチのこういう顔しか見てないなぁ…。


「ハチ、最近怒ってばかりだけど何かあったのか?」
「………いーや」
「そうか…ハチは笑っていた方がいいと私は思うよ」
「は」
「ハチの笑顔が私は好きだから、私の為にも笑ってくれ」


なーんて、勿体無いな、私の為になんて。


「ああもうホント、」
ぐいっ
「わ、」


引き寄せられてぎゅーっと抱き締められる。

――顔は見えないけど、私の好きな笑顔の気がした。






(感情コントロールは君)
101123.