――淡い光が、私の身体を包んでいく。
こんな体験、初めてなのに、何故だか私には、そしてどうやら女にも、分かった。
この光に包まれれば、元の世界に帰れるんだ、って。
女が焦ったように立ち上がって、小さな悲鳴を上げながら、私の方へと走り出す。
その場景が、世界が、スローモーションのようになる。
そんな世界の中で、この世界に来て、人を殺した、赤い記憶が脳を掠める。
そして、
「名前!!!」
三郎、雷蔵、兵助、ハチ、勘ちゃんの顔が脳裏に浮かんだ、その時。
後ろからその、五人の声が聞こえて。
ゆっくりと動いていた世界は、後ろから聞こえた五の声音と、後ろから腕を引かれたことによって――色と音を、取り戻した。
――身体が傾いていくにつれて、淡い光が、柔らかく剥がれていく。
「痛っ…」
そうした私の身体は、後ろから伸びてきた腕に、強く、抱きしめられて。
思わず痛みで歪んだ視界に、私から剥がれた淡い光に辿り着いて、手を触れる女がうつった。
「――きゃ、!」
――けれど何故だか、女が触れた途端、その光の粒らは真っ黒になって。
目を見開いた瞬間には、その闇の粒らが集まり繋がり闇になって――女を、悲鳴ごと飲み込んだ。
「――――……っ」
声も出ないままに、その空間は。
世界は、もうさっきまでの風景を、再現していた。
「――――……痛い」
私は、後ろからキツく抱きしめてくる五人に、そんなことを言った。
「…離せよ、みんな」
「嫌だ…!!名前、行くな…!」
「…いつから、居たの?…私がこの世界の人間じゃ、ないってことの時は…」
「僕たちは名前が、どの世界の人間なんて関係ないよ…!!行かないで…!」
雷蔵の言葉に、泣きそうに顔が歪む。
「でも、離してよ…世界云々じゃなくて、私はもう、学園を抜ける…」
「嫌だ、嫌だ…!名前と一緒に居られなくなるなんて…!」
「…私に、学園に居る意味はもう無いんだよ…お願いだから、離…」
学園を出る、――五人と離れるっていう決意が鈍ってしまいそうで、言いかけたとき。
――前の方の空間に、また、淡い光が現れた。
「!やだ!やめろ…!!」
そのことに気がついた五人が、腕の力を強くする。
「――――あ、れ…?」
――けど、その光は私を包むことはなくて。
代わりに、一人の女を、現せさせた。
111103