――――金曜日、早朝。
――三郎たちが、協定式の場――今は、静まり返った戦地へと着いた。
「っ、ぅ、えっ…!」
自然と、何かが胸の下らへんからむせ上がってくる。
薄れた火薬の匂い、漂う血の匂い、…何かが焦げたような嫌な匂いも、微かにする。
「名前…!!!」
「名前、どこ…?!」
「名前、名前…!」
「くそ…!名前!」
「名前…!やだ、嫌だ…!」
気絶しているのか、はたまた既に命はもう消えたのか。
地面に倒れる忍者やら侍を見ながら、奥へ奥へと走っていく。
「ああ、ぁああああ…!!」
――すると、悲鳴のような、なんとも言えない、今にも割れてしまいそうなくらいの叫び声が、さらに奥の方から聞こえてきた。
驚く五人、だけれど直ぐに気がついた。
「名前…!!!」
――名前の声、だと。
心臓が揺れて、急いて、五人は走り出す。
名前が、叫んでいる。
こんなに、酷く。
はやく、はやく。
こんなに、叫んでいる。
走って走って、林の奥に、見えたもの。
――名前が、叫んでいる。
ボロボロな名前は地面に膝をついて、頭を抱えて、涙を流して、血を流して、顔をぐちゃぐちゃに歪めながら、声の限りに、叫んでいる。
「名前!!!」
――、五人の中には、抑えきれない程の歓喜が、溢れた。
――――名前が、生きていたから。
「離れろ五人とも!!」
すると土井先生が間に飛び込んできて――、先生が右手に構えたクナイに、
「ハアッ…ハアッ……!」
――名前が投げたクナイが、あたった。
――私へと向かってくる走る足音を耳がとらえた瞬間、私は迷わずクナイを投げた。
「……名前…、…?」
けど、私の名前を呼ばれて――、ぼやけた視界がクリアになった時…そこには三郎、雷蔵、兵助、ハチ、勘ちゃんの五人が居て――わたしは自嘲気味に吐き捨てるように笑った。
「天女様に、言われたのかよ…?そろそろ協定式に、向かった方がいい、って…」
111018