「ハチっ!!」
「ハチ、しっかり…!」
「ハチ、ハチ、…!」
「大丈夫?!」
男は誰かが投げたクナイによって完全に息絶えた。
倒れたハチに四人が駆け寄りしゃがみこむ。
私は呆然と立ちすくんだ。
「私のせいだ…!私のせいでみんなが…!」
思い出される、三年生の時の出来事。事件。
「なっ…?!ご、五人とも、着いてきてたのか?!」
「どこ行くんだよ?」
「学園長先生のお使い?」
「あ、いや、…そう。でも別に着いてこなくても…」
「嫌だ、一緒に居る」
「それにしてもこんな夜中にお使いって、学園長先生も人使い荒いねえ」
「う、うん…ねえ、やっぱり着いて来なくても…――」
息が荒くなる。
視界がぐにゃりと歪む。
指先が冷たくなる。
「だ、か ら……」
ぐっ、手を握り締める。
前を見据える。
深く、呼吸する。
「四人は早くハチを連れて学園に帰って」
「っ、?名前は、」
「私は後片付けと報告がある。――早く行くんだ!」
眉をぎゅうっと寄せてそう言えば、三郎がハチを背負い、私を気にしながらみんなは小屋を出ていった。
「――――……」
静かになった小屋の中。
血の匂いが漂っている。
今さっきハチが倒れていた場所にも、血の痕がある。
私は口布を直して、足元に倒れている頭領の胸から刀を抜いた。
そして、また刺す。
傍に倒れている部下二人にも、同様に。
そして、山賊全員に、同じことをした。
――生きていたら、駄目なんだ。
必ず全員確実に、殺さなきゃいけない。
万が一誰か一人でも生き延びてしまったら、駄目なんだ。
全員を何回か刺して、全員の脈を確認して、私は報告をしにその場を去った。
報告を終えて、学園に戻って、私は保健室へと向かった。
歯を食いしばったまま、中へと入る。
「名前!」
ベッドに座り上半身だけ起こしているハチと、その周りを囲んでいる四人。
ハチの左肩の辺りには包帯が巻かれてあって、血の滲んでいる箇所は、心の臓に近いところだった。
ぎゅう、と眉を寄せる。
「――名前、俺、後悔はしてねぇからな」
ハチの言葉に、わたしは目を見開いた。
「勝手に着いてったくせにヘマして悪ぃって、謝ろうかとも思った。けど、ヘマじゃねえ。だってよ、あのままだったら絶対、名前にあたってたからな」
「…っ、……っ」
「確かに、痛くねぇわけはねえけど…、――名前が傷つくより、ずっとマシだぜ」
頬を、涙が流れ落ちた。
110914.