「名前、」
「ああ、三郎。それにみんなも」
「ねえ名前、今夜みんなで酒盛りしない?」
「…今夜?」
「ああ。私達、夜に集まったこと無いだろう?」
「そういえばそうだね」
お馴染み、三郎たち。
至って普通に会話をしながら、内心では頭をフルスピードで回転させている。
今夜も任務が入ってる…マズイな、どうやって断ろうか。
『お使い』だと言い断ったとしても、着いてくると言うかもしれないし…。
「…でも私、今日は少し眠いかもしれない。酒盛りをしても直ぐに寝てしまうよ」
「構わねえよ。俺らが介抱するぜ?」
「頼もしいね、ハチ。…でもやっぱり」
「大丈夫だって!じゃあ今夜三郎と雷蔵の部屋でね」
「…あ、」
にっこりと笑った勘ちゃんの言葉で、五人は背を向け行ってしまった。
伸ばしかけた手を額にあてて、はあとため息。
――どうしようか…。
「……伊作先輩」
「君か、どうしたの?」
「作ってほしい薬があるんですよ…」
苦笑しながら頭を掻く。
棚の整理をしていた伊作先輩は先を促す。
「即効性で、長時間で、水溶性の…睡眠薬を五人分」
「……五人分ってことは、鉢屋たちにかな」
表情をそのままに頷き、伊作先輩に理由を話す。
「…成る程ね。分かった、作ろう」
「ありがとうございます」
「…ねえ、名前くん」
「はい?」
薬を調合し始めた伊作先輩が此方を振り向かずに口を開く。
「なんで君は…君のことを鉢屋たちに隠すんだい?」
「………」
「心配かけたくないから、だけでも無さそうだからね」
「はは…まあ、」
――ホント、この人は人をよく見てると思う。
観察力がずば抜けてる。
「私のせいだ…!私のせいでみんなが…!」
「―…昔ちょっと、あったんですよ」
片眉を下げ口角を片方少しだけ上げて微笑む。
伊作先輩はそんな私を少しだけ振り返り、そしてまた前を向いた。
110127.