「ハッ!やるじゃねえか名字!」
私は今、この前知り合った潮江先輩、食満先輩、七松先輩と組み手をしている真っ最中だ。
ちなみに飛び道具含め武器は一切禁止のガチンコ肉体勝負。
先輩達もヒデーよ。
こんな腕で、とか言っておきながら肉体勝負とか。
あと何が怖いって七松先輩!
バレーしよう!の時とはうって変わって、舌なめずりで眼光ギラリだ。
「お?」
そうこうしていると潮江先輩にガッと肩を掴まれた。
その隙を逃さず食満先輩、七松先輩が仕掛けてくる。
私は勢い良く宙を蹴ってバク転するように潮江先輩の顔を顎から上に蹴り上げた。
「ぐっ…!」
そしてその反動を使い地に勢い良く着地。
肩を掴まれる手は緩んでいたから問題無い。
私を狙っていた食満先輩、七松先輩の攻撃は潮江先輩に追い打ちとして直撃した。
「がっ…!何をしているんだバカタレぇ!」
「避けねえお前が悪い」
「いやー悪い悪い!」
「んだと留三郎!」
「なんだよ!」
「楽しそうだな!」
あーまた始まったよ。
まあいいや。
私はもう止めないんだー。
特に今は疲れてるし、私に意識が向かないのは良いことだ。
勝手に体力消費してもらおうっと。
「いやー疲れたな!」
「そうですねー」
「名字、お前は後半見ていただけだろう」
「いやいや久しぶりに汗かきましたよー」
「今なら風呂貸し切りだろうな」
風呂場に着けば思った通り脱衣場は服一つ無い。
早速忍服を脱ぎにかかる先輩達と同じく、私も手をかける。
「それにしても名字、お前本当に鉢屋達に好かれてるよな」
「え?」
「今日予算の話で鉢屋と尾浜と話したが相変わらずの無愛想で、人の話聞いてんのか聞いてねえのか知らねえが妙に焦ってやがってな。その後走ってった先にはお前が居たぞ」
「ああ…そういえばは組の人達と話してた時に二人が来ましたね」
「でもさー確かに名字は綺麗な顔してるが、仙ちゃんだって綺麗だぞ」
「まあな…けど俺達は別に特別な感情は抱いてねえよな」
「はは、私達だってそんなん無いですよー。何言ってんですか食満先輩」
「………」
上を脱ぎ終わって私は髪紐をしゅるりと引っ張る。
冷えた髪が火照った頬や体に下りてきて気持ち良い。
「…………いけるかも」
すると七松先輩の声がして、籠に入れた忍服の上に髪紐を置いていた私は振り返る。
すると思ったよりも近くに居た七松先輩はまた目をギラリとさせ舌なめずりしていた。
「いけるかも、ていうかいけるな!」
「お、おい、小平太…?」
「バカタレ、お、落ち着け」
「二人は思わないのか?」
「そういう問題じゃねえ!」
「名字!逃げろ!」
え?なんだ?
まさかまた戦闘モードに入ったとか言わないよな?
でもまた眼光ギラリだし舌なめずりだし…え?
訳が分からず居ると、ガッと七松先輩に肩を掴まれた。
それを遮る潮江先輩、食満先輩の手も伸びてきて、なんていうかもうぐちゃぐちゃだ。
つるっ
「「「「あ」」」」
すると誰が発端か知らないが急に体が傾いて、私達は揃って床に倒れ込んだ。
「いてて…何するんですか先輩達…」
「悪い名字!」
「なんだ。やっぱり二人もそうなんじゃないか」
「違ェだろ!」
私の上に三人居るのは、アレだ、非常に暑苦しい。
すると足音が近付いてきて
がらっ
脱衣場の扉が開かれた。
「「「「「…」」」」」
潮江先輩と食満先輩の顔が青ざめた。
「なっに…やってんだ、アンタらはァあああああ!!」
「名前から退いて下さい!」
「名前!大丈夫?!」
「先輩だからってやっていい事と悪い事があるでしょうが!」
「うわあああ!名前ー!」
居たのは三郎達だった。
ぐわっと此方に来る三郎達にガバッと退いた潮江先輩と食満先輩。
結局三郎達は七松先輩一人を引き剥がす事になった。
「ありがとー。ていうかどうしたの皆、任務?」
「ああ。って違う!なに呑気に話してる!名前!」
「えぇー」
「襲われたんでしょ?!」
「えぇー」
襲われた、って…。
潮江先輩と食満先輩をちらりと見ると目で必死に訴えてくる。
ちなみに七松先輩は五人に取り押さえられながら頬を膨らませ拗ねている。
私はニヤリと笑った。
「だ、だいじょ…うっ…」
「名前…!」
「やっぱり襲われたんだな!」
「「名字!」」
「あはは。冗談ですよー」
「冗談じゃない!」
「俺達にとったら死活問題だ!」
けらけら笑っていると五人から視線を感じて、見るとぽかんとしている。
「ごめんごめん。襲われてなんかいないよ。だから七松先輩離してあげて」
「ぶー。鉢屋達が来たから名字を襲うのはまた今度だな」
「やっぱり離せないよ、名前」
「あはは。七松先輩の冗談だよ勘ちゃーん」
(あたかも僕達は、)
101123.