あの先輩こぇえええー。
はは…とか苦笑いして逃げてきたけどきっと顔ひきつってたな、私。
がらり
「あ、やっと名前来たよー」
「俺より遅かったな、名前!」
「ハチには三郎も雷蔵もついてたからなー。私はは組だからなあ、誰もつく奴が居ないよ。三郎の委員会の…なんだっけあの子」
「庄ちゃん」
「ああ、庄ちゃん?みたいなは組随一みたいなのも居ないしね」
「お疲れ名前、はいお茶」
「ありがとう雷蔵」
「名前、菓子もある」
「兵助もありがとう」
寝転がったり座ったりしている五人。
私は寝転がっているハチの隣に座ってお茶を飲む。
美味い。
じゃなくて、寝よう。
お茶をことりと畳に置いてハチに寄りかかって寝転がる。
「んー?なんだよ名前!甘えてきて」
「ハチ、私も眠いから一緒に寝よう」
「ああ!」
「名前、私も」
「んー…兵助も眠いの?」
「俺も眠いー」
「僕も」
「私も」
「ちょ、苦しい苦しい」
ぎゅうぎゅうだよこれ。
なんで五人共そんなに笑顔なんだよ、苦しくないのか?
寝る為にも抜け出そうとずりずりと床を這う。
するとぱしりと雷蔵に腕を掴まれた。
「名前っ何これ?!」
「え?…あ、」
「うわ!どーしたんだよ名前、怪我したのか?」
「ああまあ少し、って剥がすな剥がすな」
ちょっと勘ちゃん、これは保健委員長直々に手当てしてもらった…ってあーあ、見る影無し。
ていうか怪我なんてもう五年生だから皆してるだろ?
それには組の私より皆の方が実習は多いと思う。
…まあ私のこれ実習じゃないけど。
「名前、痛い?」
「痛くないよ。擦り傷」
毒が厄介だったけど、見た目は切り傷が一線入ってるだけだからそれは良かった。
変色なんてしてたら…って、
「馬鹿、何してんだよ!」
兵助、今舐めようとしてたよな?!
うわあ、危なかった!
治療してもらったから大丈夫だとは思うけど、もし万が一でも毒が残ってたりなんかしたら…はぁあ、危なかったぁあ。
シーン――――
「って何この沈黙」
私の傷を舐めようとした兵助の頭をぐいっと押し返して、そしたら皆無言で固まってる。
すると真っ正面で目をぱちくりと開いている兵助の瞳にじわあっと涙が浮かぶと、溢れ出してしまった。
「?!へ、兵助?」
「………」
「えええええー」
こ、これじゃあ私が泣かせたみたいだ!
……え、もしかして私が泣かせた?
はらはらと何も言わずにただ涙を流し続ける兵助。
う…私は泣かれるのは苦手なんだ…。
ああどうしよう。
「名前」
「さ、三郎。兵助どうし」
「その傷、毒が仕込まれてたんだろ」
「え」
「毒?!」
「なんだよそれ、大丈夫なのか?!」
「ああ、成る程。だから名前は兵助を拒んだ訳か」
「……?」
勘ちゃんの言葉に漸く兵助は反応を示した。
不思議そうに勘ちゃんの言葉の続きを促す。
「兵助が舐めて、万が一残ってた毒が兵助にいくのを心配して名前は拒んだんだよ」
「………私が、嫌な訳じゃ、ないのか…?」
「は?嫌?何言ってんだ?」
「………」
「うわ、だから泣くなって」
再びはらはらと涙を流し出した兵助を引き寄せて、肩に顔をあてるようにする。
必殺、泣き顔が苦手(というかうわぁああってなる)な私の、見えないようにする術。
ぎゅうっと抱き着いてきた兵助の頭をぽんぽんとあやす。
すると他の四人が来て
「兵助良かったね、僕も焦ったよ」
「え、雷蔵も?」
「うん、毒とかの理由があって良かった。いや駄目なんだけどね?」
「名前って俺達の事泣かせるよねー。この前だってさぶろ」
「勘ちゃん!…でも名前は確かに心配かける」
「皆だって怪我してくるだろ」
「まあまあ!もう皆寝よーぜ!」
「あ、そうだった。兵助……あれ、寝ちゃってる」
「ふふ、可愛い」
「さてと、じゃあ寝るか」
そして結局ぎゅうぎゅうで眠りについた私達。
うん…まあいっか。
(香は要らない)
100914.