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おじさま、わたしを引き裂いて。貫いて。壊して。おじさまの全てでわたしの全てを貪ってほしいの。……おじさまへの手紙にわたしのこの気持ちを書くことができたらどれほど幸せなことでしょう。おじさまに言えないことばかりです。ありきたりな内容の手紙はわたしを貞淑な乙女にしてくれます。だけど本当のわたしはいやらしく醜悪で、おじさまに罰してもらうことばかり想像してしまうのです。
おじさま、支配されたいだなんておかしいでしょうか。わたし、意思も肉体もおじさまに委ねたいのです。わたしに主体性がないことを肯定していただけませんか。おじさまに全てを決めて欲しいのです。でもきっと、わたしはやくに死んでしまった方がおじさまのことを全否定できるの。わたしに世界を与えたのはおじさま。そしてわたしにこの世界の意味を教えてくれたのも、おじさま、あなたただ一人なのです。破滅しか叶わないのなら、死んでもいいのです。その代わりにわたしが死んだら、初めてくちづけて欲しいのです。ただそれだけなのです。おじさま、もっとわたしの身体を見てくださいませんか。
そして結局、手紙にはありきたりな内容と、最後に「会いに行きます」とそれだけを書いてポストに投函いたしました。空を見上げ、息を吐きます。今はとても寒いですから白く色付きました。
おじさま、孤児院で一人ぼっちだったわたしを助けてくださった神父さま。おじさまの優しさに憧れてわたしも修道女になり、まだまだ未熟者ですが精一杯孤児院のみんなのために務めています。わたし、おじさまに褒められると涙が溢れそうなほど嬉しいんです。貞淑に生きると決めたのはわたしなのですから、おじさまの期待を裏切るようなことはしたくありません。
おじさま、はやく会いたいです。



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おじさまは、再会の言葉と共にわたしの頭を撫で、それから服を脱がせました。下着も外され、わたしは生まれたままの姿になります。男性の方に裸を見られるだなんてとんでもないことですが、おじさまは別です。未だわたしが神にお仕えするに相応しいか見定めるためです。
椅子に座り、おじさまに向かって足を開いて、大事なところを晒します。おじさまの美しい手が伸びて、触れられた瞬間に微かに震えました。穴を指先で広げられ、おじさまが持っていたクスコが入っていきます。金属の冷たさがいやに響いて、痛くて、苦しくて、満ちた恥は深く、深く、だけど背徳的な充足感に満たされます。浅く息を吐いて、少し涙が出ました。おじさまの無機質な瞳にわたしの身体は欲情の汗を掻いてしまいます。

「膜はあるな」

そう言うとおじさまはクスコを抜きました。クスコは白く濁り、てらてらと光っています。鳥肌が立つほど恥ずかしいのに、それはとてもいやらしくて、生唾を飲み込んでしまいました。
おじさまは忙しい方で一年に一度しか会えません。毎年、おじさまはわたしに処女膜があるか確認します。……もし、処女でなくなってしまったらおじさまは激昂するでしょうか。静かに失望するでしょうか。処女を失うだなんてあり得ないことですが、もしも……そんな顔をされたらわたしはどうなってしまうのでしょう。

「お前は神に仕えるに相応しい人間だ」
「ありがとうございます、おじさま」

椅子から立ち上がり、服に手を伸ばして……やめました。おじさまに身体を向けます。

「……どうした?服を着ないのか」

おじさま。わたしのことをもっとよく見てください。わたしの身体は、細い罅が入るように、女性に近づいてきました。胸が少し大きくなったのです。遅かったけれど月のものもようやく来たんです。わたしの肉体は、わたしの性格なのです。ねえ、おじさま。もっとちゃんと見て。

「……ごめんなさい。ずっと裸になるようなものでもありませんよね」

下着を身につけ、修道服のジッパーを上げます。わたしは微笑んで、お茶の準備をしました。
お借りしたティーポットでカップに紅茶を注ぐとおじさまはわたしを膝に乗せ、クッキーを口元に運びます。唇で受け取りますが、恥ずかしくて、だけど抗えません。おじさまとわたしは甘いものが好きで、いつもお菓子を用意してくださいます。だからわたしはお菓子に合うような茶葉をお土産に持っていくのです。
話題が欲しくて、手紙でほとんど書いてしまっているのに近況を話してしまいます。だけどおじさまは微笑んでくれるから、つい話し込んでしまいました。おじさまはわたしの話をよく聞いてくれます。甘やかしてくれます。微笑みは秘めておくものだとおじさまから教わりました。おじさまに特別扱いされるのなら、殺されたいと願うのはおかしなことなのでしょうか?咎人のあの方たちのように。

「おじさま、愛しています」
「ああ。知っているとも」

神はわたしの愛を赦してくださいます。わたしが生きていることを赦してくださいます。
わたしの愛が罰せられるようなものでないのなら、きっと。
わたしはおじさま自身を神として信仰しています。神はその大きすぎる愛ゆえに咎人を断罪し、彼らをお救いになられます。おじさまは、神さまなのです。聖なる美しき神なのです。
おじさま、わたしは神であるあなたの悪意を求めてしまっています。どうか甘えさせないで。愛娘のように扱わないで。踏みつけて。唾を吐いて。殺したっていいの。教わったことは全て忘れてしまいたい。からっぽになりたいの。わたし、断罪されたあの方たちが羨ましくてしょうがないのです。おじさまの手によって殺されるだなんて、なんてずるいの。
おじさまが、もっと残酷な人だったらよかったのに。



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お願い。もっともっともっと、欲しくてたまらない。おじさま、もっとこわして。もっと抓って。もっと犯して。
心が狂い乱れ、身体が熱くなり、泣きそうになりました。嫌な夢でした。本当に嫌な夢。おじさまに犯され、処女を散らす夢だなんて。なのに、わたしの言葉が頭から離れてくれません。犯して、と。
逃げるように部屋を出ました。冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して半分近くまで一気に飲みます。少し落ち着きましたが、それでも頭の中が真っ白でした。

「おじさま……」

おじさまの部屋に向かいます。おじさま、どうか起きていて。今すぐに抱きしめて。安心したいのです。
ノックをするとおじさまの声が返ってきました。扉を開けるとおじさまは椅子に座って、こちらを振り返っています。読書をしていたようで、姿を見ただけでひどく安心しました。

「遅くにすみません、おじさま」
「気にするな。どうかしたか?」
「……あの、おじさま。申し訳ないのですが、わたしの話を聞いてくださいませんか」

おじさまは本を閉じると膝を軽く叩きました。わたしは膝に座り、首に手を回しましたが、何も言われませんでした。

「おじさま、わたし、変なことばかり考えてしまうのです」

おじさまは真摯な目でわたしに向き合ってくれています。途端に恥ずかしくなりました。なんてわたしは醜悪なのでしょう。

「…………殺されたいだとか。壊してほしいだとか。……修道女なのに、その、してほしいだとか……おじさま、わたしはどうしたらいいのでしょうか」
「そうか……」

おじさまはわたしの頬をゆるりと撫でました。わたしは瞼を下ろします。下ろしてから、まるでくちづけをせがんでいるようだと思いました。されることなんて、一生ないのに。

「お前の中には悪魔が棲みついている」

目を見開きました。ぞっとするほど低い声で、初めておじさまのことを恐ろしいと思いました。だけどその言葉は、わたしが一番言われたかった言葉でした。

「おじさま……」

おじさまは手を伸ばし、テーブルの上にある木箱から何かを取り出します。木箱はアンティーク調で全体に模様が入っていて、一目で高価なものだと分かりました。何を取り出したのか見てみるとそれは銀の杭で、蛇にも似ていました。

「これでお前の処女を貫くんだ」

思わず顔を上げてしまいます。ああ、おじさま、なんてことなの。わたし、本当にそんなことをしてしまってもいいの?

「そうすればお前の中の悪魔は浄化される」
「わかりました。おじさま」

銀の杭を受け取り、膝から降ります。ネグリジェの裾を上げて下着を脱ぎました。おじさまでなく、自ら脱ぐだなんてとても恥ずかしいことでしたが、今は高揚感が勝っていました。
裾を咥え、両手で銀の杭を脚の間に潜り込ませ、あんな夢を見てしまったせいか、中はすでに濡れていました。
わたしきっと、微笑んでしまっています。望んでいたことでした。ずっとずっと、欲しかったことでした。おじさまからの断罪を心の底から求めていました。
杭を進めていくと柔らかいものが先に当たり、少し痛みを覚えました。処女膜だと思うといまさらながら恐怖心が芽生えます。……深呼吸をして、それから一気に貫きました。

「ぁっ……!」

膝から崩れ落ちそうになります。信じられないほどの痛みが突き抜けました。ぶつりと破った感触が確かにあり、太ももが熱くなって、見ると血が伝っていました。今、わたしは処女を失ったのです。

「ぁ、あ、あ……!」

膀胱が緩むのを感じます。嘘だと思った瞬間には失禁してしまいました。あまりの痛みに、わたしの身体は耐えられなかったのです。

「ご、ごめんなさいごめんなさい、おじさま…!」

止めることもできず、絨毯の上に大きな染みが広がっていきます。怖くておじさまの顔を見れません。俯くと血と尿が脚を伝い、恥ずかしくて恥ずかしくて、消えてしまいたいと思うと涙が溢れました。
尿の勢いが弱まり、やがて止まりました。地獄のようでした。背筋に冷たいものが流れます。おじさまは一体、どんな顔をしているのでしょう。

「本当にごめんなさい、おじさま……どうか許してください……」

おじさまからの言葉はありません。しばらく泣いてしまいましたが、それでもおじさまは何も言いませんでした。恐る恐る顔を上げ、おじさまの顔を見た瞬間、全てを理解しました。おじさまは、唇の端が裂けてしまうのではないかと思うほど、笑っていたのです。優雅に足を組みながら、鑑賞するように。
おじさまは、わたしの処女膜を破ることを望んでいたのです。自身では貫けないから、銀の杭を用意したのです。嘘なのです。わたしの中に悪魔が棲みついているだなんて。だって、おじさまが、わたしを、そう育てたのですから。あの木箱は、おじさまがわたしを支配するために用意したものなのです。ああ、おじさま、わたし、全てを捨てられます。どうか今すぐに命令してください。
おじさまは唇を開きました。


薔薇は薔薇のままで 230323

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