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なまえさんの全ての感情を引き出したい。わたしによってあなたの暴力性も優しさも全て引き出してしまいたい!
未来の、わずかな余白でさえ欲しい。なまえさんがわたしに優しくないひとだったらよかったのに。そしたらわたしはなまえさんのことを好きにならずにすんだ。でも、だからこそ、わたしは、わたしのことが好きなら憎しみに変わる瞬間が見れる。それこそが愛のように思う。わたしのことが好きなら、愛して、それから嫌いになってください。あなたから愛を向けられても憎しみを向けられても息ができて、息ができなくなる。
憎悪のくちびるを向けられたらきっとわたしは絶頂するんです。なんて倒錯したおんなのこになってしまったんでしょう。なまえさんのせいでわたしは知らない自分についてを知りました。
わたしの幼稚な愛はなまえさんにとって愛じゃないかも知れません。愛と言っても、愛とはその人が満たされるものでないと愛と呼べないことは知っています。……愛をものとは呼びたくありませんでした。
わたしが恋に堕ちた瞬間は、わたしの下睫毛が震えた瞬間です。なまえさんを見て、痙攣したのです。ふたくみのまなざし。生々しい感情であなたを見つめていた。なまえさんの物憂いヒョウのような目元がいつまでも焼き付いています。なまえさんは濡れそぼった家畜の惨めさなんて知らないでしょう。すぐそばで海はいつもやさしい振りをしています。
その目で愛を抱いた爆弾みたいだねと言った言葉が忘れられません。決して責める口調ではなく、少し微笑んでいるようにも感じられました。不思議な時間でした。
わたしはそれに裏切ることも、応えることもできます。わたしの指は、この世の何よりもあなたを傷付けることができる。でも反対に、なまえさんの指はわたしをやさしくなぞることができて、わたしはそれに頭を殴られたように痺れて耐えられなくなる。
砂糖水、砂糖菓子、わたし達であること。それで溢れている。今、わたしはなまえさんにひどいことをする。それからわたしは海に沈みますから、許さないで生きてください。いいえ、忘れてもいいです。一度だけでいいから、わたしを憎んでください。長続きしなくてもいいから。お願いですから、一度だけ。

わたしはどこに行けるの。どこに行けないんでしょう………


好き好き大好き殺してやる 210207

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