complex | ナノ
恒温というのは私達にとって愛ではなかった。いつも片道切符の恋をしていた。互いを傷つけあうことを得意としていた。お前と出会った時、この感情は前人未到だと思った。誰も、お前に対して私のようにはならないから。それがずっと続いている。これが愛だった。好きだ、フェローチェ。私だけのものになってくれ。他には何も要らない。
鼻血が出ると小学生の時を思い出す。熱中症で倒れた時だ。ああよかった。きみがいても寂しいと思わなくて。思った瞬間に絶対悲しくなっちゃうから。私って私のままだ。愛でても虐待って思われちゃう。フェローチェが私の指をしゃぶると唾液が爪の隙間に染みる。
私の人生もめちゃくちゃにしていいからフェローチェの中に私を住まわせてちょうだい。私を承認して。追い出さないでよ。夏のことなんて覚えなくていいからさ。私と出会った時のことなんて覚えないで、今をずっと焼き付けて。フェローチェの中の私を追い出さないで。
フェローチェがポケモンでよかった。番にならずに好きでいてもらえるなんて夢みたいだ。元々性愛なしの恋愛を好んでいたわけでも、信じていたわけでもないけど、けど、プラトニック・ラブは私を調子に乗らせる。
小さな頃はたとえば花弁を唇に挟んだらその花弁が色づいてしまうようなおんなのこになりたかった。かわいいでしょう。でも私は好きなひとの癌になりたかったのだ。最初から私は本当は嘘吐きだったのでした。
フェローチェの蹄が好き。いつも私の髪が絡まっている。私も最初にあなたの美しさを好きになった。睫毛の長さは人間離れしている。
ああ、そろそろ手も色々疲れてきたな。……うん。そうだね。フェローチェ。
寝て、起きて、そしたらコーンスープの粉末を溶かして食パンを焼こう。私はそれで事足りるけど、ソーセージも目玉焼きも焼くね。食べてね。だいすき。眠る前の約束だよ。