(1頁/少し長いです)
「まじかよ」
それは、俺が買い出しから帰ってきたときのことだ。
俺は成歩堂さんに頼まれて、(この素晴らしくきつい日差しの中)葡萄ジュースを買いに行ってきた。
成歩堂さんのことだから、特にお駄賃の類いはないだろうとは思いながら、それでもお疲れさまの一言くらいは、と思っていた俺が間違いだった。
帰ってきて見てみると買い物を頼んだ張本人は、お腹を出して気持ち良さそうにすやすや眠っていた。
「しかもクーラーもガンガンに効かせてやがる……………」
イラッとした俺は、起こしてやろうかとわざと音が出る形で荷物を床にどかっと置く。
「これでどうだ!」 「うー………むにゃむにゃ、もうたべられな、…………ぐう」 「食べ物の夢とか、子供か!」
この音で起きるかと思ったのだが、全く起きる気配がない。俺はアンタに頼まれて買い出しに行ってきたというのに!
「まったく、」
まるで、子供のように幸せそうに眠る成歩堂さんの寝顔を見ているうちに、もう怒っているのも馬鹿らしくなってくる。奇しくも、成歩堂さんが効かせていたクーラーのおかげで汗も引いたので、俺は余っているスペースに腰かけた。
「(それにしても、幸せそうに寝てんなこの人は…)」
帰ってきてから30分が経った。未だ成歩堂さんは起きる気配がない。
すうすうと規則正しい寝息を立てている成歩堂さんの顔を覗き込む。いつも被っているニット帽はずれて、殆ど頭に乗っているだけになっていたのでそれを退かしてやった。
「ふああ、なんだか俺も眠くなっちゃったなあ………」 「………なら寝たらどうだい?」 「はい、そうしま、……えっ?」
欠伸をした瞬間、それまで寝ていた成歩堂さんはゆっくりと起き上がった。
「僕はもうたくさん寝たから、今度はオドロキくんが寝たらいいよ」
頭をガシガシと掻きながら、まだ眠たげな声で成歩堂さんは言う。
「ね? 今更だけど買出しありがとう、お疲れさま、オドロキくん」
そして更に眠たげな目を擦りながら、ふわりと成歩堂さんは笑った。
「成歩堂さん……」 「僕の膝使っていいから」 「エッ」 「いいからいいから、遠慮しないで」
そう言うと成歩堂さんは無理矢理俺を膝に寝かせる。成歩堂さんの膝はごつごつしていて少し痛いけれど、なんだか俺は嬉しかった。
「………じゃあ、お言葉に甘えて」 「どうぞ、おやすみ」
目を閉じると、成歩堂さんは寝かしつけるように俺の頭を撫で始める。その手の感触を感じながら、俺は眠りについた。
(いつまでたっても子供ですね、)
------ お粗末様でした! きせさんハッピーバースデー!
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