(3頁あります、ちょっとだけファンタジーなので注意!)
中学生の時、俺は妙な体験をした。
「う…ん、」 「お、おはよう」 「おは、? ……ア、アンタ、誰!?」
夏の寝苦しい夜中のこと。 蒸されるような暑さに目を覚ますと、見知らぬ男の人が枕元に立っていた。
「ああ、僕のことは気にしないで」 「いっやいやいやいやいや!!!!!普通に気にする むぐっ」 「シッ!あまり大きな声出すと、他の人が起きちゃうでしょ?」
びっくりして声を荒げると、その人に思いきり口を押さえつけられた。
ていうか、普通に考えてほかの人が起きちゃうとか、いやむしろこの状況で叫ばない方がおかしいと思う。不審者が枕元にいて、ハイそうですかなんて言える精神を俺は持ち合わせていないのだから。
「そう、静かにね」
俺の口許を押さえ付けたその男の人は、よく見ると全体的にだらっとした格好をして無精髭まで生やしている。 しかし月を背にしているため、その顔はあまりよく見えないかった。
「…で、アンタ誰なんですか?」 「んー、そうだねぇ… ただのしがないニートってとこ、」
ようやく塞がれていた口を解放されたので、俺は改めてその人に質問をしたが、返ってきた言葉は、見た目に相応しいものだった。
「ニート?………アッ!」 「どうしたの?」 「わかった!働いてなくてお金がないから、俺のうちからなんか盗もうとしてるんだろ!!」 「……僕だってまさかそこまで堕ちちゃいないさ、」
俺の言葉にその人は笑った。なら、何のためにわざわざ俺の部屋に入ってきたというんだろうか、お金になるものなんて何もないのに。 その人は呆れたように俺を見ていたが、また、どこか俺を慈しむような目をしていた。
⇒つぎ
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