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「おっと、調子に乗るな成歩堂。私は君を許したわけではないのだぞ?」
許してもらえるのかと思い、自然と上がった声色は御剣にぴしゃりと遮られた。
「う…」 「そもそも君の謝罪など、端から期待してなどいないのだよ」 「っ……なら、どうすればいいんだよ」
期待していないのなら、この30分はなんだったんだ!と叫びたくなるのを抑えて、僕はじとりと御剣を見上げる。 御剣はにやりと頬を釣り上げてこう言った。
「ならばこうしよう 君が私に証拠を見せたまえ」 「証拠?」 「うム、成歩堂が私のことを好きなのならば、伝えられるだろう?君の素直な気持ちを、」 「……」 「君は付き合い始めてからこれまで1回も好きだの、そのような類の言葉を言わなかったのでな… 今日、この際だから教えてもらおうか」 「…なっ!!なんでだよ!」
御剣は、僕に向けた手をゆらゆらさせながら愉快そうに喉を鳴らす。 確かに僕は今まで一度も御剣に自分の気持ちを伝えたことは無かったのだ。それは単に僕が照れくさかっただけで、特に深い意味はなかったのだけど。
「べ、別にわかるだろ!?」 「異議あり!私は察しが悪いのでな?しっかり教えてはくれないだろうか」 「ぐっ…」
察しが悪いだなんて誰にも通じない嘘を堂々とついてみせる御剣に何も言い返せないのは、明らかに僕に非があったからである。
「さあ、」 「ちょっ、待った!どうしても伝えなきゃ駄目なのか?」 「当たり前だろう、まさか無理だなんて言うまいな?」
御剣はさらに目を細めた。無理なものは無理だというのに、きっとこいつは僕ができないのをわかってて言っているのだからタチが悪い。 御剣を見上げたまま、僕は何も言えなくなってしまった。
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