秘密警察 序章




20xx年。
かつて世界では、第三次世界大戦が勃発した。

大戦は終戦を迎えながらも、世界各国に深い傷跡を残し、世を混乱の渦に陥れていた。
それは、日本も例外ではない。
終戦後、日本では政府の方針により、富裕層と貧困層【無法地帯】の二分化が行われた。
日本政府の方針に反発した貧困層がレジスタンス運動を起こし、政府反抗組織《レジスタンス》を結成。
それに対し、国は日本政府直属の秘密組織として活動していた《秘密警察》をレジスタンス弾圧部隊として抜擢した。
《レジスタンス》と《秘密警察》は大戦終戦後の国内二分化以降、幾度となく刃を交えあっている。

大戦から数年たった今日も。



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ザリッと枯れた地面を踏み鳴らす音が辺りに響いた。

「瑞希、今の戦況は?」

ゆっくりと歩を進めながら、男は、高台から戦音の聞こえる遠くを眺める茶髪の男に静かに声をかける。

「順調好調、文句なしだよ。今日は吉谷兄弟が揃ってるから早い早い。蹴散らしまくってるねぇ。」

瑞希と呼ばれたその男は、飄々とした態度で男を振り返りながらそう言った。
それに男は少し眉をひそめながら問う。

「確か、今日は数が多いって話だったが、流石にあいつらでも二人だけだと厳しいんじゃないか?」

「そこら辺は、りっくんと伊吹が補助に入ってるから大丈夫だよ」

笑顔でそう話す瑞希の返答に、「そうか」とだけ返して、男は少し考える素振りを取った。
レジスタンスとの幾度目かの戦いに、暫し、頭のなかで次の戦局を練る。

「さて、次はどうする?――悠斗くん」

高台より遠くから戦況を見つめつつ、瑞希は男――悠斗に尋ねた。
少しだけ間を開けて、悠斗は考える素振りを解いた。

「今回の本元に乗り込む。」

視線を瑞希に向けながら、悠斗はそう宣言する。

「どうせ、また、トカゲの尻尾でしょ?」

しかし、瑞希は乗り気ではなく、おどけた調子で肩を竦めながらそう言った。

「潰しておくのとおかないのじゃ、後の面倒が変わってくるだろう。取り敢えず、春樹に連絡してくれ。本元の場所を探る」

「はーい」

間延びした返事と共に、腰にかけた通信機で 何処かに連絡を取る瑞希の姿を認めながら、悠斗はその向こうに見える戦火の煙に目を細めた。

「……行くぞ。瑞希」

「了解。ボス」

国家直属の紋章を刻む腕章が、二人の歩調に合わせて揺れる。



秘密警察。
それは、7人の青年達で構成された、政府の暗部を担う秘密組織である。



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