痛い、
痛い、痛い

なんでこんなに体が痛いの、ズキズキなんてもんじゃない。そんなのまだ可愛いと思えるほどの激痛。特に背中、背中が痛い。はっ、はっ、と息をするごとに熱い何かが自分の体から流れ出ていく感覚は形容し難い恐怖だ。だってそれは赤い液体であり、温もりで命だから。

「おい、この子まだ生きてる!」
「早く手当てを!」

誰かに抱き抱えられる感覚に疑問が沸く。どうして?私は確か車にはねられて、アスファルトに叩きつけられた。その衝撃は凄まじく強烈な痛みに「ああ、死ぬ」と脳が悟った。どこか意識の遠くで、救急車を、しっかりして、と声が聞こえていたけどそれもすぐに遠くに消えていった。死ぬ、死んでしまう、私の鼓動が止まる、息が止まる。
唯一の心残りはあの子、善逸。どうか強く、長く、一分、一秒でも長く生きて欲しい。そして、輪廻転生が叶うなら善逸、あなたに会いたい。


痛い、
痛い、痛い


「大丈夫、怪我は深いけど、生きてる」

どうして?なぜ?私の心臓は止まったはずなのに

「鬼はもういないか?」
「見て回ったが、どうやらさっき斬った一匹だけみたいだな」
「ごめんな、もう少し俺たちが早く来てれば、」

なに?鬼?鬼がどうしたの?あの子が、善逸が言っていた、鬼がいるの?どうして?それは、お伽噺じゃなかった?

わからないことだらけの中で、それでも、誰かが手当てをしていることを感じる。そして温かい手がそっと頭を撫でた。

「助かったのはこの子だけか?」
「みたいね、よく、生きてたね。頑張ったね」

そうだ、鬼はお伽噺なんかじゃない、
善逸の世界には、いる。
目を開けなければ、私はきっと奇跡の中にいる

「あ、目を覚ましたぞ!」
「よかった!しっかりね!もう大丈夫だから」

そこにいたのは、同じような黒い服を纏った男女数人。皆が名前の目が開いたことに一様に安堵の息を漏らしていた。
名前を介抱していたのは女性、と言うよりまだあどけない年頃のその人の袖を掴んだ。

「どうしたの?痛い?もう少し我慢できる?すぐ村のお医者に、」
「………て、」
「?」

私をあなたと同じ場所に連れていって



きっとそこで、あの子に会えるから




そこは鬼のいる世界