その子はいつも泣いていた。蹲って体をこれでもかと縮こませ泣いていた。しかし可愛らしい泣き方ではなかった。びーびーおいおいと、今どきそんな泣き方する子なんて居ないだろうと思うほど。それをただただ見ていた。

ある夜は天を仰ぎながら、ある夜は叫びながらその子は泣いていた。やっぱり私はただ見ているだけ。

昼食後のデスクワークは眠りを誘う。目がしょぼしょぼしてきたのは疲れたせいであって決して温かい陽気に当てられたからじゃない。パソコン画面の時間を見てもまだ一時間も経ってない。これは辛い。

このままでは仕事が捗らないだろうとコーヒーで目を覚ますかと席を立つ。自販機は廊下を出てつきあたりの小さなスペースにある。目当てのブラックコーヒーは生憎売り切れて、仕方なく微糖を選んでボタンを押す。ガシャン。出てきたのはなぜか甘ったるそうなミルクティー、何でよ。私確かに微糖のボタン押したよね?
しかし自販機から出てきたのは何度見てもボディも色も違う代物で、業者の人が間違えて入れたのだろうと勝手に納得する。というかするしかない。
別の自販機まで行くのも面倒くさく、仕方なくミルクティーのキャップを開けて喉に流し込む。甘い。
たまに飲むのならいいが目を覚ます役割はどうやら担ってくれなさそう。捨てるのも勿体なくてまた一口、やっぱり甘い。

ふと思った。
夢の中のあの子は甘いものが好きだろうか。
なんだかミルクティーの柔らかい色があの子に似合うと思った。
考えてもどうしようもない。あの子はずっと泣いてて私はきっとただ見ているだけだろうから。

もう一口、口にした甘いミルクティーはいつまでも喉にざらつきを残したままだった。










夢の中のあの子