誰か俺を埋めてくれませんか、いや、ほんと自分で墓穴を掘るんで、ほんと地の底までってくらい掘るんで上から土を投げ込んでくれませんかね。
誰だよ邪念を深い息でやり過ごしたとか言った奴!俺だったわ!全くナンにもやり過ごせてねぇじゃないよ!ごめんなさいね!こんな俺でさぁ!

「ご飯、用意出来なくてごめんね」

「いやっ、名前さんは悪くないでしょ俺がさ、その、………ほんとなんかすみませんんんんん!!!」

我妻善逸、只今絶賛反省中であります。

現在名前さんは腰のひどい疲労と痛みでお布団の中です。お察しの通り俺が昨日と言わず朝から盛ったのが原因ですほんとに申し訳ありません。布団の傍で正座している俺の手ををよしよししてくれる名前さんにはもう罪悪感しかないわけで。なんでこんな優しいんだよ泣ける!もう泣いてるけどな!
怒ってなんかない、嫌っても拒んでもないそんな負の音をこの人が俺に出したことは無い、こんな無体を働いても。
それを思うにつけ善逸はいつも泣きたくなる、いや、もう実際泣いてるけどね!二回目!優しい優しい彼女をどんな形でも辛い目に会わせたくないっていうのに俺がやっちゃってるのはどういうことよ!?俺の自制心よっほんとどういうこと!?

ごめんなさい、ごめんなさいと謝る俺にそんなに謝られたら私がいじめてるみたいじゃないの、と名前さんが困った様に言う。俺ぇええええ!なんで困らせてんの馬鹿なの!?馬鹿だったわ!畳に頭を打ち付けていたらクスクスと笑い声がして、名前が体を起こそうとするから慌てて背中を支えてあげる。襟元から首筋にかけて善逸が強く吸い付いた跡がそこかしこに見えてムラっとしかけた刹那「俺ぇっ!!」と善逸の中の良心が邪心を殴り飛ばした。危っねぇ!今度こそマジで処刑もんだよ、よくやった俺の良心!善逸は己の良心を褒め称えた。

「あのねぇ、善逸は私が善逸のこと、どう思ってるか知ってるでしょ?」

強い挑むような視線を浴び言われた言葉に善逸は一瞬キョトンとしたが次いで名前の言葉を嚥下しボボボと顔を赤くした。知ってるよ、いつだって善逸が一番で善逸の為にここに居ると言い切ってくれる人で善逸が大好きだと微笑ってくれる人。その様子を見た名前が満足気に目を細めて善逸の涙を拭う。

「善逸は我慢しなくていい、欲しがって。そりゃ出来ない日もあるけど私は善逸に求められると嬉しくて仕方ない。」

この疲労も善逸がくれたものだからいとおしいよ。

ぐっと熱いものが込み上げた。俺はさ、きっと世間様から見ると不幸な人生歩んでる様に見えたと思うんだよ。両親がいなくて、家無し子で、女の子にいいように騙されて借金して。
でも今はどう?こんなに幸福な男なんて他にいないだろ。友人始め周囲の人間に恵まれて、確かに心が引き裂かれるような悲しみや別れもあったけど、今、俺はすごく満たされてるんだ。

「ふふ、泣くか笑うかどっちかにしなさいよ、変な顔。」

「〜〜〜っ、だってさ、嬉しいんだから仕方ないだろ!って不細工とかひどいよっ!」

「不細工なんて言ってないよ。変な顔とは言ったけど。」

「おんなじじゃない!」

名前の体を力いっぱい抱き締めると、抱き返す腕。お互いのこの手がその腕がいつでもそれぞれを受け入れてくれる安心感は依存なのかもしれない。しかしそれでいいと善逸は思う、そうして二人がこの世界を生きていけるなら他人がどう言おうと構わない。

「善逸さん、」

「ハイハイ、何でしょうか」

「そろそろお腹が空きました。」

「甘い空気はどこ行ったの。もうちょっと堪能したかった!」

「今日は名前はお休みなのです。」

「軽く流されたよ、そんなしょっぱい名前さんも好きですよ!そうだよね、ゆっくりしてて!俺なんでもするから!」

「じゃあ、ご飯の準備とお買い物、それからお風呂掃除をお願いします。」

旦那様を尻に敷く悪徳女房はお腹が空きました、お昼を所望する。ささ、早う用意するがよいぞ。

芝居がかった台詞にふはっと笑いが溢れる。こんな可愛い悪徳女房ならいつでも尻に敷かれてやりますとも。

その後、買い物に出た善逸が宇髄と遭遇。嫁はどうしたから始まって嘘が吐けない善逸は根掘り葉掘り聞かれしばらく冷やかされる事となったのである。






休日、二日目昼