チュンチュンと雀の声がする。チュン太郎が遊んでいるのかな、それとも朝ごはんをねだりに来たか。でももう少し待っててくれよ、まだこの人の寝顔を見ていたいんだ。
善逸の腕の中ですぅすぅと寝息をたてる人。いつもとっくに起きて朝の支度を始めているのだが如何せん昨夜の情事が祟ったか起きる気配がない。

やりすぎちゃったよねぇ、これ。

普段なら名前が疲れたり、もう無理と言われたら強いて無体は働かない善逸なのだが、昨日はまぁ、その、お嫁さんのいつもみない可愛さに当てられて、ちょっとばかり自制が効かなかったと言い訳をする。その言い訳が彼女に通じるかどうかはさておき。

彼女が気を失うように眠りに落ちたのはまだ二時間ぐらい前。いや、ほんとごめんなさいね!節操無くしてさぁ!俺だって止めようと思ったさ、ああ、思ったとも!これ以上したら嫌われちゃうかな、壊れちゃうかなって。なのに名前さんはいつも俺の気持ちに先回りする。「いいよ」「おいで」「もっと欲しい」我慢しようとするけどそんなのは到底無理だったわけですよ。無理に決まってんじゃない!愛しい人からおねだりとかされてみろ!キュンって胸も締まるがあっちもギュンって滾るわ滾ったわ!今思い出しただけでも下に熱が集まりかけて「平常心平常心」と心頭滅却を唱えているぐらいだもんね!

大きく空気を吸ってふーーっと息を吐いて邪念をやり過ごす。
名前さんの頭に頬擦りして腕枕している手で髪をすく。汗で少し強ばってる、昨夜、髪洗ってたのに俺のせいだよね。体もだよ、だっていい匂いしてた。そう思いつつ、綺麗な名前が自分に汚されるのを腹の奥で喜ぶ雄がいるのを知っている。いつだって俺だけに染めていたい。他の誰が見ても「そう」と分かるようにしたい。これは嫉妬なんてかわいいもんじゃない、独占欲を拗らせた支配欲。

こんな俺を知られたら呆れるかな、怒るかな、悲しむかな。
もしかして俺から離れちゃうかもしれない。だからこんな暗く澱んだ感情は箱の奥の奥へ仕舞っておくんだ。砂糖菓子みたいなふわふわな幸せで覆い隠して、誰にも見つからないように。

「……ん、」

ああ、名前さんの目が覚める。ねぇ、もう少しだけこうしていたい。もう少し熱を感じていたい。だから、ねぇ、

「ん、…ぜん、い、ぁ、や、」

「ねぇ、名前さん、」

もっとあなたをちょうだい







休日、二日目朝