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転生したら絶対に見つけて幸せにしてやろうと思ってたのに、とんでもない年の差な幼稚園児兵長と教育実習生な元恋人。しかしめげない幼稚園児。追いつけないけど足掻く幼稚園児兵長。
ちなみに
年長組、リヴァイ、ナナバ、ゲルガー、
年中組ペトラ、オルオ、グンタ、エルド
年少組、104期生
エルヴィン、ハンジ、ミケ、ネス、トーマ、リコ、イアンは幼稚園の先生
リヴァイは幼稚園児ながら強くて皆に厳しく優しいリーダー。なぜか年下たちから兵長と親しまれている。
前世の記憶があるのは教諭陣とリヴァイのみ。
「おい、これはどういうじょうきょうだ?」
「どういうって、実習生?」
「そんなことは、わかっている。なんであいつなんだ!」
朝のおはようの挨拶のあと園長のピクシスが園児みなの前で紹介してくれた人物。毎年この時期になると2〜3人の教諭の卵たちが実習にやってくるが、今年は2人。うち1人を視界に入れたリヴァイは驚いて目を見張り冒頭のセリフ。
『はじめまして、この幼稚園で2週間、お世話になります!ナマエと言います。ナマエ先生って呼んでね。みんなと一緒にたくさん遊んで仲良くなりたいです!よろしくね!』
みんなが元気よく「はーい!」と返事をして、じゃあ早速園庭で遊ぼうと園児がきゃあきゃあとネームの手を引いていくのをリヴァイは呆然と見送った。そして、とても6歳児と思えぬほど眉間に深い皺を寄せて、エルヴィン、ハンジたち教諭陣に詰め寄ったのだ。
「いや、私たちも会ったのは今朝が初めてなんだよ!」
「園長から名前だけは聞いていたが、本当にナマエかどうかは分からなくてね。…実際会って驚いたよ。」
顔合わせで名乗りあったが、自分たちを見ても彼女は緊張気味に挨拶をしただけ。どうやら"前世の記憶"がないようだったから。
「チッ、」
これまた6歳児に似合わぬ舌打ち。しかしそれを咎める大人はどこにもいない。だってリヴァイだから。たとえ6歳児でも中身はあの不遜で不敵な兵士長。そして、前世からたった1人を探し続けている愛情深い男。
リヴァイはずっと待っていた。この世に生まれまだ6年だが、探していたし待っていたのだ、彼女、ナマエを。
前世は残酷な世界だった。人間は食物連鎖の頂点ではなく捕食される側だった。巨人という圧倒的な力の前に人類はとてつもなく小さかった。人の命が無惨に呆気なさすぎるほど簡単に失われていく世界。
そんな中で、見つけた小さな日だまり。そばにいるだけで胸の中が温かく抱き締める手が震えるほど愛していた恋人。ずっと一緒に生きていたい。二人してそう願って止まなかった。だけどそれは叶わなかった。
何度目かの壁外調査、リヴァイの目の前で巨人に潰され事切れようとしている恋人。
リヴァイさん…リヴァイさん
ああ、ここだここにいる。
なにも、みえない…こわい、リヴァイさん、
大丈夫だナマエ、ちゃんと、抱きしめてるだろう?
わたし、まだ、しにたく、ない、リ…ヴァイさん、といた、い
ナマエ、次は絶対に離さない。きっとお前を幸せにして一生そばにいると誓おう。だから、先にいって待ってろ。
うん…うん、リヴァ…イさ、ん、だ…い…す…
死に逝く恋人に誓った。亡骸に慟哭をぶつけた。こんなクソみたいな世界じゃなく、優しい彼女が似合う世界で、彼女を見つけ二人必ず幸せになろう。幸せにしてみせる、と。
その強い想いはリヴァイが転生しても体の心の奥底に根付いていた。自分がこの世に生を受けたなら恋人も必ずいるはずだ。そう信じて疑わないリヴァイは幼稚園に入園し馴染みが同じく転生をしていることにいよいよ確信した。きっと彼女も、と。
そして、やっと会えた。
会えたのはいい。この上ない喜びだ。だが、まさか13歳も年上だとは!せめて近い年齢ならば記憶がないとしても異性ととらえてもらい仲を深めていけようもの。こんなあからさまな「大人と子供」「教師と園児」じゃ対等にすらなれない。
このまま自分が結婚を許される年になる頃には彼女は三十路。それまでにもしかしたら恋人が出来、結婚をしているかも。そんなことリヴァイには許せない。絶対に自分が幸せにすると言った。必ず見つけて最後まで添い遂げると彼女の魂に誓った。記憶があろうとなかろうと、年が一回り以上離れていてもリヴァイの伴侶はナマエだ。
「…おれはあいつをよめにする。」
「無茶を言うなリヴァイ。あの子は19だぞ?」
「それがなんだエルヴィン?なんのしょうがいにもならねえ。」
「だがリヴァイ兵長、君が結婚出来る年齢までに何年あると思ってるの?それまで1人とか有り得ないのでは?」
前世の記憶の所為か、はたまた子供のくせに半端ない威圧感の所為か、未だ「兵長」が抜けないリコがためらいながら聞くが、リヴァイは腕を組んで怯まない。どころか目の前の大人たちに幼気な子供に悪魔が乗り移ったような恐ろしい笑顔で見上げた。その笑顔に違う兵団だったイアンやリコのみならず同じ調査兵団の面々すら嫌な予感に苛まれた。
「おれは、じんるいのために ずいぶんはたらいたとおもわねえか?なぁエルヴィン?」
「あ、ああ、そうだな、リヴァイ。君のおかげもあり人類は巨人の脅威から解放された。」
「なら、それそうおうのごほうびがあって とうぜんだよな?」
確かに褒美はいらない、静かに暮らしたいと言って1人で海が見える家で隠遁生活してたけど、まさかそれを転生して言うのか?それに言わせてもらえるなら今のエルヴィンは団長でもない、ただの私立進撃幼稚園の主任教諭だけで褒美を与える云々の権力もないのだが?
その疑問がエルヴィンを筆頭に教諭陣の顔に出たのだろう。リヴァイは鼻を鳴らして途方もない言葉を紡ぎ出した。
「あいつを このようちえんにしゅうしょくさせろ。」
「「「「はぁ!?」」」」
「そして、おまえたちであいつをかんししろ。おれがここのがっこうをそつぎょうするまでな。」
「無理に決まってる!リヴァイ!」
いつも言葉数の少ないミケすら声を荒げたが、リヴァイである。(元)兵士長である。(元)人類最強である。
「むりじゃねぇ、やれるだろ、やるんだよ。」
ギロリと顰める三白眼は全く園児に見えない。幼児の姿をしてるだけアンバランスすぎて恐ろしすぎる。
それでもやはり後輩の人権を守ろうとイアンが発言。
「しかし兵長、我々には彼女のプライベートに口を挟む権利は…」
「うるせえな。あいつのプライベート?そんなもの、おれのまえではクソだ。おれはあいつのからだのホクロをすべてしっている。」
イアンは真っ赤になり元調査兵団の面々は呆れ顔。ああ、やっぱりリヴァイだな、と思い知り、自分たちの今後に溜め息。これから大変だな、と。そして、なんとなく不憫に思ってしまう彼女のことを。
さらに思う、出来れば覚えてて欲しかった!と。
『あのー、リヴァイくんいますか?』
「「「「「?」」」」
教室の扉が遠慮がちにスライドされ顔を覗かせたのは今話題になっていたナマエ。皆が動揺するなかハンジがしどろもどろになりながらも「どうしたかな?」と問う。
『いえ、あの、みんなが遊んでるのにリヴァイくんだけお部屋の中だから…』
どこか体調が悪いのか?と心配して様子を見にきたらしいが腕を組んで不遜に教諭陣を睨みあげるリヴァイにナマエは目を点にしていた。
『あ、あの?』
「ああ…ナマエ先生、気にしないでくれたまえ。リヴァイはいつもこんな感じだ。」
『はあ…。えと、リヴァイくんお話終わったら、遊ぼう?』
リヴァイの目線に合わせてしゃがむナマエ。にっこりと微笑む。その頬にあの頃よりずっと小さく柔らかい手の平を当てればあの頃と変わらない柔らかさと質感に目頭が熱くなりそうだった。
『リヴァイくん?』
「…リヴァイだ。」
『え、でも、』
「リヴァイ。「くん」づけなんざくつじょくいがいなんでもねぇ。」
『ええええ!?』
「じゃないとあそんでやらん。」
『ええええ―…、』
妥協して彼女が『リヴァイさん』と呼ぶことになり、それは一回り以上下の子供に少しばかり優越感を持たせかなり満足そうだったと、私立進撃幼稚園の教諭陣談。
そして彼女が卒業後、幼稚園に正規の教諭として仕事に就いた時から一回り以上年下の元教え子と籍を入れるまで、実はかなりの作為や裏画策、裏工作があり、進撃幼稚園教諭陣の涙ながらの苦労があったことを彼女が知るのは、随分先の話である。
お伽話も真っ青な物語
初出2016.1.10 吾妻