12月25日、それは兵団の幹部であるリヴァイ兵長のお誕生日である。数少ない幹部の方々のお誕生日には生き残れたご褒美と言うか、頑張った労いと言うか無礼講で宴会が催される。あまり口に入らないお肉にお菓子、それにお酒。エルヴィン団長の時にも豪勢だったけど兵長の誕生日会もなかなかのもの。
私もお腹いっぱい食べて飲んでホクホクし、いい気分のまま床に付けると思っていたのに突然襲来した兵長のせいで未だベッドに入れないでいる。
「今日は俺の誕生日だ。」
『そうですよね、皆さんお祝いしてましたし、おめでとうございます。』
「プレゼントが欲しいんだが。」
『班員みんなでお金を出し合って買ったものを贈りましたけど。』
「あれは悪くなかった。」
『それはみんなも喜びます。(さすが王都御用達ブランド品のクラバット)』
「だが俺はお前個人から欲しい」
『なんと図々しい。』
「図々しいと思われようが本音だから仕方ない」
『もう持ち合わせがありませんのでご勘弁を』
「心配いらない、欲しいのはお前の体だ。」
『肉体労働をご希望で、掃除ですか?訓練ですか?』
「とぼけるお前も可愛い、そんなお前のウォールナマエを俺のピーで突破したい、いますぐに。」
『私の壁はまだ突破される訳にはいきませんので、他の方とどうぞ。』
「開いた穴に興味はない。」
『私も開いてますよ。』
「な、に、?」
『......』
兵長がこの世の終わりのような顔つきになった。冗談だけどもその反応はない、世の非処女に土下座すべきだと思う。
もうこのままでもいいかもしれない。なんか両手両膝付いているし、そのまま落胆して私を諦めてくだされば良し。そして早く部屋から出て行って下さい。眠い。
「初めては痛くて快楽どころじゃない、まだお前は本当の快感を知らないだろう。」
『は?』
「そうだ、お前は悪い男に無理矢理されてセックスの良さを知らないはずだ。その心と体の傷を癒し丸ごと包み込むのはこの俺だ。安心しろ俺は無理強いしたりしない。お前が俺に全てを委ねてくれるまで待つつもりだ。そうしてゆっくりと愛を育みいつかはお前が俺に心を開き共に生きていこうと考えてくくれる、そうだろうナマエよ。しかしいつ死ぬかわからない残酷な世界だ、俺は悔いを残したくないから今すぐ足を開くがいい。」
『帰って下さい、今すぐに。』
「何故だ、俺はお前を幸せにする。」
『今のお話でそんな未来が微塵も見えません。』
「何がいけない?教えてくれ。すぐに改める」
『即物的です。あと変態は嫌です。』
「体の相性は大事だ。」
『私は同じ価値観を持ってる方を希望します。』
「分かった善処しよう」
『ならこんな夜更けに女性の部屋に来るのは非常識だとお分かりですね。退室願います。』
「もう少しいいだろう、この胸いっぱいお前の匂いを溜め込みたい」
『...さようなら、口も利きたくありません』
「そろそろ寝るとしよう。遅くまですまなかったな。」
やっとこさ部屋を出て行った兵長。名残惜しそうだったがドアを閉めた瞬間鍵も閉めた。全くどうしてこんなことになったのやら。あの兵長に慣れてしまっている自分に呆れてしまう。
しかも、あんまり嫌じゃないなんて。
そんなこと、言えないけど。
『兵長、お誕生日おめでとうございます』
少しだけ優しく口ずさんでみれば、なんだか甘ったるく聞こえて、誰もいなくてよかったと熱くなった頬をドアにくっつけた。
2016.12.25初出 吾妻
兵長おめでとうございます\(^o^)/